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K-Takasaka
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#K-Takasaka
K-Takasaka
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K-Takasaka
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#K-T
地下訓練施設に、金属が擦れる音が響いた。
レイの大剣が、メバルたちの目の前で止まっている。
刃先はメバルの鼻先から、わずか数センチしか離れていなかった。
「……今の、当たってないよね?」
メバルは剣を構えたまま、恐る恐る尋ねた。
「当てていない」
「当たってたら?」
「倒れている」
「訓練って、そういうものだっけ!?」
レイは大剣を折りたたみ、短い形へ戻した。
「全員、構えを解くな。攻撃するなら、私を倒すつもりで来い」
メバル、マサカゲ、ミステー、カキ、アオノは互いに顔を見合わせた。
壁際では、K-Tが腕を組んでいる。
「Kさん、本当に見てるだけ?」
「お前たちの訓練だからな」
「レイちゃんが怖いんだけど!」
「慣れる」
「慣れたくない!」
レイの目が細くなった。
「話している間も、敵は待ってくれない」
レイが踏み込んだ。
最初に狙われたのはメバルだった。
大剣が短剣の形のまま振り抜かれる。メバルは慌てて剣を立てたが、受け止めた瞬間、手首が弾かれた。
レイの足が、メバルの足元を払う。
メバルは背中から床へ落ちた。
「痛い!」
「剣を握る手に力を入れすぎている」
レイは倒れたメバルへ視線を落とした。
「手首が固い。相手の力を受けたとき、刃が逃げない」
「剣が逃げたら負けない?」
「逃がす方向を自分で決めろ」
レイはメバルの腕を取って立たせた。
「相手の攻撃を止めようとするな。受け流せ」
「そんな急に言われても……」
「急に襲われるからだ」
レイは再び大剣を構えた。
「もう一度」
「休憩は?」
「ない」
メバルが悲鳴を上げた。
レイは、訓練相手の動きを見るとき、肩をほとんど見なかった。
常に相手の腰、足の向き、重心の位置を見ている。
メバルが剣を振りかぶると、レイは刃ではなく、腰の動きを見ていた。攻撃が始まる前に半歩移動し、メバルの剣を空振りさせる。
「相手の肩を見るな」
レイが言った。
「肩は嘘をつく」
メバルが剣を振り抜く。
レイは身体をひねり、刃の外側へ回った。
「見るべきは腰だ。腰の向きが、攻撃の方向を決める」
「腰を見る余裕なんてないよ!」
「余裕を作るのが訓練だ」
レイの柄が、メバルの脇腹へ軽く入った。
軽く、といっても、メバルの身体は二メートルほど吹き飛んだ。
「軽くない!」
メバルは床を転がりながら叫んだ。
次はマサカゲだった。
レイは大剣を使わず、素手で構えた。
「投げてみろ」
「分かった」
マサカゲは正面から組みついた。
しかし、レイは力で抵抗しなかった。身体を半歩ずらし、マサカゲの腕を取る。そのまま腰を落とし、相手の重心を浮かせた。
マサカゲの身体が宙を回り、背中から床へ落ちる。
マサカゲは受け身を取っていたため、大きな怪我はなかった。
「今のは、柔道の投げか?」
「基本に近い」
レイはマサカゲへ手を差し出した。
「だが、お前は投げた後に止まる」
「止まる?」
「投げた相手を見ている。その間に、別の敵が仲間を襲う」
レイはマサカゲの背後を指した。
「投げた後は、仲間を守る位置へ移動しろ」
「相手を倒したか確認する必要がある」
「確認は目だけでできる」
レイはマサカゲの肩を押した。
「敵の正面に立つな。投げた相手を自分と仲間の間に置け」
マサカゲは頷いた。
再びレイへ組みつく。
今度は投げた直後、倒れたレイを確認せず、メバルたちの前へ移動した。
レイはすぐに立ち上がり、マサカゲの背後へ回ろうとする。
マサカゲは振り返らず、腕だけを伸ばした。
レイの手首をつかみ、引き寄せる。
そして、肩越しに投げた。
「今度は悪くない」
レイが床に着地しながら言った。
マサカゲは驚いた表情を浮かべた。
「褒めた?」
「評価しただけだ」
「でも、今のは褒めたように聞こえたよ!」
メバルが横から口を挟む。
「黙って剣を持て」
「はい!」
次はミステーの番だった。
ミステーは弓を構えたが、ピラミッド型の被り物が大きく傾いた。
レイが無言でそれを見ている。
「……何か問題が?」
「被り物が邪魔だ」
「精神集中に必要」
「矢を放つ前に、視界が半分消えている」
「それも精神修行」
「外せ」
「断る」
レイはミステーに近づき、弓を持つ腕の角度を直した。
「弦を引くとき、肩を上げるな。肩が上がれば呼吸が乱れる」
ミステーが弦を引く。
しかし、弦を逆方向へ引いていた。
レイは一瞬だけ動きを止めた。
「その構えでは自分を射る」
「自分の中の敵を射る」
「普通に構えて」
ミステーは弓を持ち直した。
レイが壁際へ移動し、隠しカメラを一つ起動させる。
「標的を射ろ」
カメラが左右へ揺れながら移動する。
ミステーは目を閉じた。
「見ないの?」
カキが尋ねる。
「見る必要はない」
ミステーは弦を引いた。
「音が寂しい」
矢が放たれた。
矢は壁に当たる寸前で方向を変え、動いていたカメラの中心を正確に射抜いた。
メバルたちが黙り込む。
「当たった……」
カキが呟く。
「偶然?」
メバルが聞く。
ミステーは次の矢をつがえた。
「寂しさは、場所を教えてくれる」
「分かるような、分からないような……」
レイはミステーを見た。
「狙いは悪くない。ただし、戦場では一人で撃つな。仲間の位置を把握しろ」
「仲間も射る」
「射るな」
レイは即答した。
カキの訓練は、さらに問題が多かった。
カキは拳銃を渡されると、嬉しそうに銃を掲げた。
「よっしゃああああああああ!」
声が訓練施設中に響き渡る。
レイが眉をひそめた。
「何を喜んでいる」
「拳銃だよ! これで私も強くなれる!」
「銃は強さを与えない」
「じゃあ何を与えるの?」
「判断する時間を奪う」
カキの笑顔が少し消えた。
レイは床に三つの標的を立てた。
正面、右側、そしてカキの背後。
「正面の標的を撃て」
カキはすぐに拳銃を構えた。
「待て」
レイが手を上げる。
「撃つ前に何を確認する?」
「標的」
「違う」
「弾が入っているか」
「違う」
「銃の調子?」
「違う」
レイはカキの銃口を下げた。
「周囲だ。標的の後ろに何がある。左右に誰がいる。撃った弾が外れたら、どこへ飛ぶ」
「でも、敵を見つけたらすぐ撃たないと……」
「撃つべきときと、撃ってはいけないときがある」
K-Tが壁際から言った。
「銃を持つ者は、引き金を引かない判断を覚えろ」
カキは黙った。
「分かった。確認してから撃つ」
「もう一度」
カキは周囲を見渡した。
正面の標的。
その後ろには壁。
右側にはメバル。
左側にはマサカゲ。
背後にはミステー。
「正面は撃てない。外したら壁に当たるけど、左右に仲間がいる」
「正しい」
「じゃあ、どこを撃つの?」
「撃たない」
「訓練なのに!?」
「撃たない判断の訓練だ」
カキは拳銃を下ろした。
すると、施設内の照明が突然消えた。
暗闇の中で、複数の機械音が聞こえる。
カキが反射的に銃を上げた。
「待て!」
レイが叫ぶ。
「周囲を確認!」
カキは息を止めた。
暗闇の向こうから、何かが走ってくる。
メバルの声が聞こえた。
「右から来る!」
カキは銃口を向けた。
しかし、レイがカキの手首を押さえた。
「仲間かもしれない」
直後、光が戻った。
現れたのは、訓練用の小型ロボットだった。ロボットはメバルへ向かっていたが、その手には武器がなかった。
カキは引き金を引かなかった。
「今のは撃たなくて正解だ」
レイが言った。
「……撃つより、難しい」
「だから覚えろ」
最後はアオノだった。
アオノは端末を操作し、施設内の監視システムへ侵入していく。
レイは大剣を構え、アオノの前に立った。
「私は敵役だ」
「了解」
レイが踏み込む。
アオノは画面を見たまま、横へ移動した。
大剣の柄が、アオノの肩をかすめる。
「避けた」
「偶然だ」
「次は当てる」
レイが再び踏み込む。
アオノは端末を操作しながら後退したが、背後の柱にぶつかった。
レイの大剣が、アオノの顔の横で止まる。
「画面だけを見るな」
レイが言った。
「周囲も情報だ」
「視界の端で確認していた」
「なら、今の柱も見落とすな」
アオノは周囲を見回した。
敵の位置、床の段差、壁の角度、照明の死角。
すべてを一度に把握しようとする。
「情報量が多い」
「戦場はいつも多い」
「処理する」
アオノは端末を操作した。
突然、施設内の照明が点滅し、レイの足元にある床板が開いた。
レイは片足を引き、落下を避ける。
「今のは?」
「床の制御を奪った」
「悪くない」
「評価した?」
「評価しただけだ」
アオノは小さく頷いた。
そのころ、K-Tは訓練施設の奥にある画面を見つめていた。
画面には、前回と同じ文字が表示されている。
『管理者認証――K-T』
『戦闘記録、照合開始』
K-Tが画面へ近づく。
「Kさん?」
メバルが声をかけた。
「何を見ているの?」
「古い記録だ」
「何の記録?」
「俺の戦闘記録」
K-Tが端末へ手を伸ばす。
画面に、複数の映像が表示された。
そこには、若いころのK-Tと、今よりも荒々しいレイが映っていた。
二人は何度も刃を交えている。
レイが大剣を振り下ろし、K-Tが避ける。
K-Tが拳銃を抜き、レイがかわす。
最後に、K-Tが一本の杖を構えた。
「それ、杖?」
カキが画面を覗き込む。
杖の先端が開き、内部から散弾銃の銃口が現れた。
轟音。
画面の中で、レイの武器が吹き飛ぶ。
レイは地面に片膝をつき、K-Tを睨んでいた。
「これが、昔の一騎打ち?」
メバルが尋ねる。
K-Tは答えなかった。
映像の最後に、記録番号が表示される。
『戦闘個体:K-T』
『戦闘個体:レイ』
『記憶保存処理――未完了』
アオノが画面を見つめる。
「記憶保存処理とは何か」
「知らない」
K-Tが答えた。
「本当に?」
レイが背後から言った。
いつの間にか、訓練を終えたレイが立っていた。
K-Tは画面から目を離さない。
「昔の施設だ」
「なら、なぜお前の名前が管理者として登録されている」
「分からない」
レイは画面に近づいた。
保存処理の文字が、赤く点滅する。
『対象データ、再構成準備中』
その瞬間、施設の奥から低い機械音が響いた。
誰も触れていないはずの扉が、ゆっくりと開いていく。
暗い通路の向こうに、何かの影が見えた。
K-Tは刀の柄へ手を置く。
「全員、下がれ」
レイも折りたたみ式の大剣を展開した。
「訓練は終わりか?」
「まだだ」
K-Tが答える。
「ここからは、実戦になるかもしれない」
暗闇の中で、赤い光が一つ点灯した。
機械音声が、施設全体へ響き渡る。
『戦闘記録の照合を完了』
『次段階へ移行します』
画面に、見知らぬ一文字が表示された。
X。
K-Tは、その文字を見た瞬間、初めて表情を変えた。
「……X」
「知っているのか?」
マサカゲが尋ねる。
K-Tはしばらく黙っていた。
やがて、紫色の刀を抜く。
「まだ、知らない」
その言葉とは裏腹に、K-Tの目には明らかな警戒が浮かんでいた。
レイが彼の隣に立つ。
「なら、これから知ればいい」
「お前も来るのか」
「訓練を引き受けた」
レイは大剣を構えた。
「途中で逃げるつもりはない」
地下施設の奥で、何かが動いた。
六人の訓練は、まだ始まったばかりだった。
コメント
1件
第3話、読み終わりました。それぞれのキャラクターに合った訓練内容で、レイの指導が個別最適化されていて好印象です。「見るべきは腰」「撃たない判断を覚えろ」など、戦闘訓練でありながら生き残るための本質的な知恵が散りばめられているのがいいですね。ミステーの「仲間も射る」に即答で「射るな」と返すレイの会話が個人的にツボでした。そしてラストの「X」――施設とK-Tの過去、そして記憶保存処理。世界観の地層が見えてくる展開に、続きが気になって仕方ないです。