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音楽番組の収録の日。
6人でやる音楽は毎回楽しくて、
緊張とワクワクが入り混じって、
良い緊張感の中で
パフォーマンスができることが多いけど、
今日は少し、いつもと違って。
憧れのアーティストと一緒に、
ラップで、SixTONESからは、俺一人で。
ドキュメンタリーのカメラも入ってる
タイミングで、 裏のカメラの前でも、
少しおちゃらけて話す。
あー、もうすぐ俺もあそこに並ぶ。
どうしようもない緊張、
今日は一緒に分け合う5人が
ここにいない。
「、、ゅりさん、樹さん」
『ん?、あ、はい、』
「昨日、いっぱい練習されてましたね、
楽屋でも」
『あぁ、そうすね、、』
「良くないステージ、想像するほうが、
無理です。」
『え?』
「片っぽの口角上げて、体揺らして、
ちょっと邪魔そうな前髪が目にかかって
も、気にしない樹さんしか、
想像できません」
そう言いながら、その人もまた、
片っぽの口角を上げる。
「楽しんできてくださいね。」
ぽんっと背中を叩かれて
優しく、勢いよくステージに出される。
その人の言う通り、
はじめこそ緊張で顔が引きつってたけど、
一緒に歌う憧れの人の笑顔を見て伝わる、
俺も、みんな、上手くて、楽しい。
無事にステージを終えて袖に戻ると
いろんなスタッフが声をかけてくれて
またひとつ夢が叶った幸せを噛みしめながら
ひとりひとり丁寧に挨拶をする。
始まる直前に声をかけてきた
あの人の姿を探しても、
もうここにはいなくて。
聞いてくれたかな、見てくれたかな、とか
ガキみたいに考えちゃってて。
普段一緒に仕事をするその人は、
所属しているレーベルのアーティスト担当。
分かりやすく言うと、
マネージャーみたいな人。
やっと見つけたその人に近づくと、
俺に気づいて声をかけてくれる。
「あ、樹さん、お疲れさまでした」
『ありがとうございます、どうでした?』
「とっても、楽しかったでしょ?」
『あ、俺が?』
「そう、樹さんが」
『すげー楽しかった』
「私もです。素敵に夢叶えましたね」
そう言った後、
忙しそうに誰かに電話したり、
手帳と睨めっこしたり。
俺もこの人も人見知りだから
正直、会話が弾むってことは
あんまりなくて。
でも、この人がいるとなんか、
気持ちは、弾んでて。
忙しそうに動き回ってるから、
ろくにお礼も言えず、
次の仕事の準備をしながら、
ステージに押された背中の感触を
思い出してた。