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――病院内
「えー、次に赤月様です!こちらへどうぞ。」
「! はい。(ちょっと緊張してきちゃった….)」
私達は、医者に呼ばれた部屋に入った。
とても緊張したけど、それが猫に伝わらないように気をつけた。
――そして、最初にする検査に移った。
「では検査をしていきます。」
「この検査は、手術をする前にとても重要な物ですので。時間を頂ければ…」
「…(検査、か…)」
――この前ネットで、手術の前の検査をしなかった場合、どんな危険性があるのか調べてみた。
そこには、「亡くなる可能性」と出ていた…
だから、絶対にこの検査は必要なんだ。 私は、固唾を飲んで見守っていた__
――数十分後
「はい、検査が終わりました。異常なしですので、ただ今から手術を始めさせて頂きます。」
「分かりました….」
その医者の言葉に、お母さんは 心配そうな様子で返事をした。
――そして数秒が経過し、決心した とばかりに、医者は猫たちを部屋に連れて行った。
お母さんは、まだ無口のまま… 妹も同様。
私は話しかけることさえも出来ずに、ずっと椅子に座って待機していた。
「….(亜梨沙、目つぶってる…!)」
妹こと亜梨沙は、膝に手を当てて目をつぶっていた。
冷や汗までたらし、肩に力が入ってしまっている様だった。
私は居ても立っても居られずに、妹にそっと話しかけた。
「亜梨沙、大丈夫? ……安心して!絶対大丈夫だから…!」
「!」
その私の言葉に、妹は 閉じていた目を見開いた。
そして私の方を向き、いかにも不安そうな顔を作った。
「うん、怖いけど信じる…っ!!」
「ありがと、風鈴!」
「うんっ、!」
妹は、ふっと優しい笑顔を作った。
その顔は、猫たちへの思いやりに溢れているようだった。
私はその顔を確認してから、椅子にもう一度座り直した。
――そして
「__はい、赤月様の方の手術が終了いたしました。こちらへどうぞ。」
「あ、はい。」
お母さんは ずっと不安を抱えていたせいか、医者の声にすら気づけていなかった。
呼ばれた数秒後に返事をし、急いで部屋に向かった。
「この度は、当病院に来て頂き誠にありがとうございます。」
「いえ!」
「手術の件なのですが___」
その言葉に、私達は思わずビクビクしてしまう。
だけど、その必要は無かった。
「今回、無事に終えることが出来ました!長い間、ありがとうございました!」
「よ、良かったぁ…..」
お母さんは、一気に肩と腰の力が抜けたようで。
そのまま床にへたり込んでしまった。 今回は“良い意味で” だ。
同じく妹も、息を吐きながら胸をなでおろしていた。
こんなにも、人間以外の動物に緊張したのは初めてだった。
――そんな雰囲気を感じ取ったのか、医者は更に言葉を続けた。
「この猫は、とても健康ですね!どちらで買われたんです?」
「あ、えっと….」
どう説明すれば良いのかと、お母さんは悩んでいる様子だった。
だから、私が代わりに説明することにした。
「あの… 実は拾ってきた猫なんです。」
「え!?つ、つまり、捨て猫という事ですか!?」
「え?あ、はい。」
医者は、有り得ないと驚いた様子だ。
「こんなにも健康な猫ですから、てっきりどこかで買われたのだと思いましたよ。」
「素晴らしい育て方です!これからもそれを続行して下さい!」
「………分かりました!(まあ良いや。)」
拾ってきた一日後だということを説明すると長くなりそうだから、あえて言わないことにした。
亜梨沙もそれは感じたらしく、ずっと黙っていた。
――そして、これからの猫についての話も終わり、帰る時間になった。
私達は、お世話になった医者に深く礼をしてから病院を去った。
「にしても、無事に終われて良かったね!!安心したよ〜」
「そうだね!不安だったけど、何とか!猫も頑張ったね!お疲れーー!」
私は、そう言いながら猫を抱きしめた。
猫は、くすぐったいとばかりにお腹を上に向けてバンザイのポーズをしていた。
「わぁ、可愛すぎる〜〜!!!」
「ねーー!」
妹と私は盛り上がっていたけど、お母さんは何か考え込んでいる様子だ。
どうしたんだろう….?
「お母さん、どうしたの?」
「あなた達、忘れてないでしょうね?」
「….? 何のこと?」
お母さんは、急に睨みつけるように目を細め、私達をジっと見つめた。
「猫たちの赤ちゃんのこと。」
「あ……」
「あちゃ〜〜」
そうだ、この猫たちは子供を産んでしまったんだった….
その子猫たちも、家で飼わなきゃいけないことになる。
それをお母さんが許してくれるのか…___?
はたまた、誰かに預けなさいと言うのか….
私たちのこの緊張感は、ずっと収まることが無かった…
「(今日は猫に振り回されてばっかだなぁ。。)」
「(それに大体、お母さんの言うことは予想付いてるけど…)」
「あのね___」
お母さんは、その場で静かに話し出した。