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明治の食堂で🌸は働いていて,そこで杉元とよく似た男性と親しげに話している.かと思えば景色は早送りされ,砲弾降り注ぐ戦場を銃を持って走っている.その隣には先程の男性が雄叫びをあげていて….

「おはよう🌸さん.」

目を覚ますと病室のベッドの上で杉元がおにぎりを食べているのが目に映った.

「杉元さんっ…,良かった手術が無事に成功して….」

寝顔を見られたかもと思うと恥ずかしくなって,あわてて口元を拭って寝癖を手櫛でとかす.

「そんなことより🌸さん,あいつらに何か酷いことされてない??大丈夫??」

「大丈夫.何もされてないですよ,むしろよくしてもらってます….??」

「どうかした??」

「さっき夢に杉元さんにそっくりな人が出てきたんです.食堂で親しげに話したあと景色が戦場に変わって….」

「戦場って203高地??」

「分かんないです,気づいたら戦場を走ってて.」

杉元の顔をじっと見る🌸.

「顔の傷がない杉元さんって感じ….」

「それ日露戦争行く前の俺じゃん.」

「でも髪型は今みたいな感じじゃなくて,前髪かきあげてなかったし.」

「なんかひと昔前の俺みたいな奴だな.」

「その写真があれば分かるのに….」

首が90度になりそうなくらい傾げているところに家永が往診にやってきた.

「頭の手術をしたとは思えないくらい元気ですね.」

「とにかくいてもたってもいられなくて,一刻も早くアシリパさんを見つけないと…!!」

往診後,気分転換に外の空気を吸う2人.空を仰ぐ杉元の顔は酷く怒りに満ちている. そんな杉元を見てうまく言葉が返せない🌸.

「ちょっと冷えてきたね,戻ろっか.」

「はい.」

「火鉢が欲しくなっくるな….ねぇ,2024年にも火鉢あるの??」

「ないですよ.」

「ほんとに!?どうやって暖とってるの!?」

「エアコンとか,電気ヒーターとか.火鉢よりずっと安全で暖かいですよ??」

「それほんとに暖かいの??」

「もちろんです.あ,こたつとか湯たんぽも欠かせませんね.」

「やっと聞き慣れた言葉聞けた.」

「こたつって明治からあったんですね.」

「うん,囲炉裏に布団とか被せて皆で暖まってた.」

「へぇー!!囲炉裏だったんですねこたつの起源って.」

「2024年にも囲炉裏あるでしょ??」

「ありませんよ??現代のこたつは机にお布団敷いてスイッチ1つで楽々あったかなんですよ.」

「嘘でしょ!?」

時代のギャップに翻弄される杉元.

「(ちょっと元気出たかな.最近どこか表情暗かったし….)」

と少し安堵する🌸.ほどなくして樺太出発の日時が決まった.

「まだ頭ぐわんぐわんする….」

「大丈夫??」

「大丈夫です,吐き気はおさまったので.」

樺太到着後,聞き込みの成果をもとにアイヌの村を探していると.

「うわー,めっちゃぶっ飛んだ!!」

「感心してる場合かよ!!ほら早く!!」

クズリから逃げる際,雪に足を取られそうになった🌸の手を引いて橇へ急ぐ杉元.

「(デジャブかな….)」

🌸は誰かの背を見て走る光景を知っている気がした.

「アシリパさんみたいにはなれないけど….」

と言わせてしまったスチェンカ後のこと.

「アシリパさんみたいにならなくていい!!俺は今のままの🌸さんでいて欲しい!!」

“あどけなく不器用に笑う🌸さんが好きだから”と言えないで,猛吹雪のなか遭難して意識朦朧としている🌸の名前を必死に呼んだ.

「🌸さん!!大丈夫!?」

目を覚ましたと同時にむせる🌸の背中をさする杉元.月島から渡された飲み物を🌸に渡す.

「あったかい,生き返ります….ここは??」

「灯台のふもとに住むロシア人夫婦の家だよ.」

「そうなんですね.」

「ごめん🌸さん,俺が不甲斐ないばっかりに危険な目に合わせてしまって.」

「気にしないで下さい.天気の急変は予測不能ですから.」

「本当にごめん.でも無事で良かった…!!」

と抱きしめられる.

「ずっと声かけてくれてたの,うっすら覚えてます.お陰で三途の川渡らなくて済みました.ありがとうございます.」

抱きしめられたことに驚きつつもそう言って🌸は抱きしめ返した.そして次の日.

「もう少し休まなくて良いの??俺少尉に頼んでくるよ??」

「大丈夫.私もアシリパさんに早く会いたいから.」

と🌸は笑顔を見せて犬橇に乗った.

亜港監獄まであと少し.

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