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死にたがりの私は、あの夜、星に願われてプロローグ
夜が好きだ。
夜だけは、呼吸が出来ると感じられるから。人からの視線、期待、印象。全てが溶けて、眠ってしまうから。
昼の世界では、私は上手く呼吸が出来ない。
昔からそうだった。人の顔色も、自分の言いたいことも、何もかも分からない。
言葉は喉で止まり、笑顔は作り方を忘れてしまった。
学校も、教室も、私の居場所は無くなっていた。
どれだけ願っても、時間は進んでいってしまう。
それでも唯一、深夜、独りだけの散歩は、自由だ。どこへ行っても、何をしても、何も気にせずにいられる。月明かりの下で歩きながら、ただ、考えごとをする。考えたくないことだって、浮かんできてしまうけれど、家にいるよりもずっとずっと楽だ。
その夜も、いつもと何も変わらないと思っていた。何もしなければそのまま、闇に溶けてしまうような夜。
ーーなのに。
「……抗月?」
聞き覚えのある声が、聞こえた。
すぐに振り向かなければ、と後悔した。が、もう遅い。
そこには、クラスメイトの影染 星が立っていた。
どうして、こんな時間に。
どうして、ここに。
夜は、私だけのものだったはずなのに。
息が荒くなる。
苦しい。苦しい。
今すぐにでも、その場から立ち去りたかった。それでも、君の綺麗で、ただ純粋な瞳からは逃れられなかった。
あの夜、私はまだ知らなかった。
ここでの、この出逢いが、私の閉ざされ、凍てついていた心を溶かしてしまうなんて。
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