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キュルノ
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#学園
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蒼月
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オカルト研究サークルの長、九條視点_
「おいおい、噂の新入生ってのは君のことかい? 皐月渚ちゃん」新歓の喧騒が嘘のように静まり返ったキャンパスの片隅。講義棟の陰になっている古いベンチで、俺はパイプの煙をくゆらせながら、目の前に立つ少女に笑いかけた。
『オカルト探求研究会』——通称オカ研。
部員は男10名、女5名の計15名。怪奇現象の現地調査から古典怪談の文献解読、都市伝説のフィールドワークまで幅広く扱う、うちの大学でも一目を置かれている(というか少々気味悪がられている)サークルだ。その長を務めているのが、この私、経済学部四年の九条(くじょう)である。
「……何の用ですか。私、サークルに入る気はありません」
皐月渚。
入学式初日に起きたあの惨劇——女子学生の飛び降り事件で、警察に犯人の特徴をズバリ言い当て、現場で事件を解決に導いたという『奇跡の新入生』。
まわりの浅薄な学生どもは「パパ活女子」だの「不思議ちゃん」だのと好き勝手な噂を流しているようだが、俺たちの目は誤魔化せない。
あの一件の直後、サークルの目ざとい部員(特に情報収集が得意な男子連中)が現場の状況や警察の動き、彼女の挙動を徹底的にプロファイリングした。
結論は一つ。彼女が持っているのは、おままごとの霊感などではない。死者の残香や記憶を直接読み取る、極めて**「リアルで危険なサイコメトリー能力」**だ。
「つれないなぁ。勧誘に来たんだよ。うちのサークル、君みたいな『本物』を喉から手が出るほど欲しててね」
俺がそう言って身を乗り出すと、渚ちゃんの隣に立っていた大きな影が動いた。
「おい、手前(てめぇ)。渚に変な吹き込みしてっとタダじゃおかねぇぞ」
不機嫌そのものの低い声。
くたびれたスーツを着崩し、火のついていない煙草を噛み千切らんばかりにくわえている男——捜査一課の峯岸警部補だ。鋭い目つきで俺を睨みつけている。その背後では、若い佐藤刑事が「ちょっと先輩、大学の敷地内なんですから穏便に……!」と冷や汗をかいている。
「おや、ご高名な峯岸刑事ではありませんか。警視庁の敏腕がこんなところで女子大生のボディガードとは、実に手厚い」
俺はパイプをポケットに収め、優雅に肩をすくめてみせた。
「ですが刑事さん、勘違いしないでいただきたい。我々は彼女を見世物にするつもりも、怪しげな儀式の生贄にするつもりもありませんよ」
俺は視線を戻し、渚ちゃんの澄んだ、けれどどこか疲れを孕んだ瞳をまっすぐに見つめた。
「皐月さん。君のその『力』……一度は消えたんだろう? そして、あの事件の血の匂いに引きずり出されるようにして、再び目覚めてしまった」
渚ちゃんの眉が、ぴくりと跳ねた。
「……なんで、それを」
「うちのサークルにはね、オカルトをロマンとして楽しむ連中だけじゃなく、民俗学や脳科学、超心理学を真剣に修める15人のバカどもが揃っているんだ。男10人、女5人……みんなどこか世間の『普通』から弾き出された偏屈ばかりさ」
俺はポケットから一枚の黒い招待状(サークルのビラだ)を取り出し、彼女の胸元へそっと差し出した。
「君を取り巻く世間の目は、これからもっと酷くなる。『不思議ちゃん』『パパ活』『気味の悪い女』……無知な人間は、理解できないものを排除し、嘲笑うことで自分を守るからね。……だが、うちの部室(ルビ:サークル棟3階302号室)だけは別だ。あそこには、君の力を恐怖とも好奇の目とも捉えず、客観的な『事実』として受け入れられる環境がある」
「……」
「警察の捜査現場は、あまりにも過酷だ。君の身も心もすり減ってしまう。息が詰まった時、いつでも来るといい。温かい紅茶と、君の力を分析して負担を和らげるための文献なら、いくらでも用意して待っているよ」
「おい、戯言はそれくらいに——」
峯岸刑事が割り込もうとしたが、渚ちゃんがそっと手でそれを制した。
彼女は俺が出した黒いビラをじっと見つめ、それから静かに俺の顔を見上げた。その瞳には、かつての「普通の女子高生」の顔ではなく、再び過酷な運命と向き合う覚悟を決めた「霊感探偵」の冷たい光が宿っていた。
「……助言だけなら、もらいに行ってあげてもいいですよ。九条先輩」
「ふっ……それは光栄だな。歓迎するよ、オカ研へ」
俺が不敵に微笑むと、隣の峯岸刑事が「チッ……クソガキが、変なオカルト野郎に引っかかりやがって」と盛大なため息をつきながら、渚ちゃんの頭を乱暴に撫で回した。
覚醒してしまった本物の能力者・皐月渚。
彼女を取り巻くキャンパスの闇は、これからさらに深くなっていくだろう。だが……フフ、今年のオカ研は、例年以上に退屈しそうにないな。
コメント
1件
九條先輩かっこよすぎる…!!クールな勧誘だけど、渚ちゃんの力と孤独をちゃんと理解して「息が詰まったらおいで」って言えるのが最高にエモい😭💕 峯岸刑事とのバチバチした掛け合いも面白くて、オカ研の面々がどんな偏屈ちゃんたちなのか気になりすぎる!! 渚ちゃんの「覚悟を決めた瞳」の変化、すごく好きです。次話も楽しみにしてます🌸✨