でも、自分の生きてきた話を書くのって、けっこう重たくって、何回もやめようと思って。
何度も何度も投げ出しながら書いたから、出すのがすごい遅くなっちゃった。
販売する側にとっては、まったくの誤算だったかもね。
だって、もっと早く出したかったろうし。まだ、七瀬リオ引退の話題が、冷めないうちにって感じで。
だけど、結局出せたのは、引退から1年半が過ぎてからだった。
1年半を過ぎても、あたしのことを覚えててくれた人たちなんて、もうあんまりいないのかもしれないよね。
七瀬リオの引退劇は、マスコミを騒がせて、一時期はブームのような盛り上がりを見せたけれど。
でも、たくさんのニュースが取り沙汰されていく中で、いつまでもアイドルひとりになんて、みんなかまってられなかったろうし。
引退から人気が高まって、ラストシングルだけじゃなくて、前に出したアルバムとかも、急激に売れたりもしたけど。
その頃の熱は、もう完全に冷めちゃったと思うんだよね。
ファンは覚えてるって、思うかもだけど。
逆に、あんなやめ方したあたしを覚えててもらうのも、ちょっとしのびなくもあるからさ。
忘れちゃっていいよ。
あたしのことなんか、誰も覚えてなくたって、それでもいいから。
ただ、こんな風に生きたあたしがいたってことだけ、知っていてくれたら。
それでいいの。
ずっと忘れないでいてほしいなんて、別に思わないから。
ただ、なんとなくくらいに知っててくれたらいいなって。
それだけ。
それだけでも、あたしの生きてきた価値があったようにも感じるから。