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「……よし、送信っと!」
画面に表示された送信完了のマークを見て、思わず口角が上がる。
友人とのグループチャットで、アニメ映画の話題が飛び交っていた。
だが――今しがた送ったメッセージは、俺の言葉じゃない。
AIが用意した返答を、ただコピペして送信しただけだ。
最近はメールアプリにまでAI返信機能が搭載されている。
しめしめ……せっかくだから試してやろうと思った。
もちろん、その映画は観てもいない。
原作の漫画だって触ったことがない。
それなのに友人は熱心に感想を語ってくる。
なら、AIでどこまで話を合わせられるのか――実験してみたくなったのだ。
「さぁて……どんな反応するかな」
送信から十数秒後。
ピコン、と通知音。
返ってきたメッセージには――
友人「そうだよな! やっぱりあのシーンのここがあれで……!」
思わずニヤリとする。
……どうやらバレてないな。
「ふっ……面白い。もう少し続けてみるか」
罪悪感? いや、大したことじゃない。
どうせ後でネタバラシすれば、笑い話で済む。
俺は再びAI返信機能を叩き込む。
そして、自分の口調に少しだけ書き換えて送信した。
「な! あと、原作と違って脚本が変わってるのとか、コンパクトにまとまってて良かったよな!」
……完璧だ。
もちろん、この機能は俺の喋り方を完全にコピーするわけじゃない。
コピペした後、ちょっとした“自分らしさ”を混ぜる。
その工程すら楽しくなってきていた。
そろそろネタバラシするか――そう思った矢先だった。
ピコン。
新着メッセージ。
?「おいw」
俺でも、友人でもない。
残るはただ一人……グループのもう一人の友人B。
友人 B「お前ら、何適当な会話してんだよw 観てないじゃないかw」
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
まさか……!
「……ははっ。そういうことか」
画面を見ながら理解する。
俺だけじゃない。
アイツも――AIを使っていたんだ。
俺と友人。
互いに本心ではなく、AIの言葉で会話をしていた。
……なんて時代だ。
メッセージアプリに表示される文字列が、
本当に“本人の声”だと言えるのか。
AIは便利だ。
だが、だからこそ――不便で、不気味なことも起こる。
この世界はもう、そんな時代に突入しているのかもしれない。