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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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その夜は、悶々としながらベッドに入った。

泣き疲れても眠っても、すぐに目が覚めて、これからのことを悩んで、いつしか寝て、また目が覚めて…そんなことを繰り返していたら、いつの間にか窓の外が白み始めていた。

いつもどおり準備して、家事をして、お弁当を作って朝ごはんを食べて、そしていつもよりずっと早く学校に向かった。

朝練に向かう蒼と鉢合わせしないか不安だったけど、幸いそれはなく、おそらく帰宅部では一番乗りじゃないかって時間に教室に入った。

あとはひたすら明姫奈が来るのを待って。

待って

待って

待って…

「おはよ、蓮」

「明姫奈ぁああ!!」

時間ぎりぎりに明姫奈がやってくると、あいさつもそこそこに、小さな身体にすがりついた。

「どーしたの、蓮。朝からガラにもなくテンション高いね…」

と抱き止めてくれる明姫奈だったけど、よろりとして元気がない。

表情も疲れたみたいに暗くて、いつもの美少女ぶりに陰りがさしている。

なにかあったのかな?

と訝しく思ったけど、明姫奈の心配をしてあげる余裕は、悪いけど今の私にはなかった…。

「明姫奈…私、もうどうしたらいいのか判らなくて…。『そうだ明姫奈に相談しよう』って思いついた時は、深夜だったし…。

会いたかった…」

「なにかあったの?」

「実は…」

と、昨晩のことを包み隠さず話した。

『ひどいよね!』

って、明姫奈も同意してくれるとばかり思ってたんだけど。

「えー!なにそれやったぁ!!いいじゃない、どうして嫌がるの!?」

予想外の返事…。

あれ、明姫奈ちゃん、むしろテンションが上がった…?

「ついにやりましたか蒼氏…っ。いやぁ、遅いくらいだったよねぇ。ぶっちゃけ、『いい加減ヘタレだなぁ』って思ってたんだけど…うんうん…よくそこまでやった。見直したゾ」

「なんで!なんでそうなるの!?」

明姫奈だけは私の味方だと思ってたのに!

と泣きそうになる私をチラリと見て、明姫奈は外見に似合わないような大人びた口調で言った。

「私はね、蒼くんって蓮のこと好きなんじゃないかなって思ってたよ。だって、告られてもたいてい振るし。珍しく付き合ったな、と思えばすぐ別れちゃうし。でも蓮だけにはやたらちょっかいかけてくるし、幼なじみだけど、なんか違うぞーって」

さすが明姫奈…。

そこまで蒼を見てたなんて…。

私はただチャラ男なんだとばかり思ってた…。

「なにを戸惑う必要あるのよ。付き合えばいいじゃない、もったいない。蒼くんのなにがいけないの?」

「全部だよ!」

「『クールビューティー』なのに?」

「そういう問題じゃないよ…っ」

「じゃあ逆に、欠点でもあるわけ?」

欠点…。

蒼に欠点らしい欠点はない気がするけど…がんばって探そう。

「…チャラい」

「チャラいってのは岳緒くんみたいなヤツのこと言うんだよ。蒼くんはあいつみたいに女の子とっかえひっかえしないでしょ?

蓮に一途だったんだから」

「…じゃあ、ガキ」

「蓮と比べたらずっと大人」

「……」

「あとは?」

「……待って、今考えてる」

「はぁ。欠点もないんでしょ?それなのにダメなの?幼なじみって理由じゃ受け入れないって言われたんでしょ?」

「だって…」

『幼なじみ』って理由以外、思い浮かばないよ…。

蒼のこと、ずっと弟みたいに思ってたんだよ…?

「意地張ってないで、ためしに付き合ってみればいいじゃない。いつの間にか好きになってるかもよ?」

「そんなぁ」

「じゃあどうしても無理だって言うなら、蒼くんの言う通り、ちゃんとした理由を見つけることだよね」

「えーーー…」

「頑張ってー」

冷たい。

冷たすぎるよ、明姫奈…っ。

少しは私の気持ちを考えて言ってくれてもいいのに…!

なんか今日の明姫奈は、いつも以上にサバサバ感が増して…むしろ意地悪だ…。

それでも頼れるのは明姫奈しかいない。

私はパンと手を合わせて頭を下げた。

「お願い…!今夜は明姫奈の家に泊めて…!私、このままじゃ家にひとりで居れないよ」

「いや」

ぷい、と明姫奈はそっぽを向いた。

「…ひどいよ…っ!親友の貞操が奪われてもいいの!?」

「ちょ…大きい声で言わないのっ!…落ち着きなよ。蓮らしくない」

「だって…こんなのないよ…。気づかないのが悪いって言われたって困るよ…」

私は込み上がりそうになった涙をこらえた。

「だってずっとずっと姉弟みたいに一緒にいたんだよ?それがある日突然…好きだなんて。明姫奈だって想像してみてよ??

弟から告白されたらどう思う??」

「蓮…。蒼くんは弟じゃないよ。血のつながってない、普通の男の子だよ」

「……」

「『幼なじみだから』ってだけで、蒼くんの想いに向き合おうとしないのは失礼だよ。蒼くんは、ずっと純粋に蓮だけを想ってくれてたんだよ?あんなにたくさんの女の子からモテて、新しい恋をするチャンスはいくらでもあるのに。そういう彼の誠実な気持ちに、蓮はちゃんと答えてあげなきゃだめなんじゃないの?もっと真剣に、自分の心と向き合うべきなんじゃないの?」

『…俺は、おまえに認められるために努力してきたんだ。その俺に、ちゃんと報いることしろよ…!』

明姫奈の言葉と、昨日の蒼のとが重なる気がした。

みんな、重いこと言うよな…。

恋に疎い私には、受け止めきれなくてダメージだよ…。

それだけ私が『ガキ』だった、ってこと…?凹むな…。

明姫奈は私と目を合わすのを嫌がるように、うつむきがちに言った。

「悪いけど…私、今回は蓮の味方になれそうにない。だって、なにが嫌なの?幼なじみ同士、付き合ったら家も隣でいつも一緒。一緒の思い出を持ってて、これからも一緒に作って…。私には羨ましくしか思えない」

明姫奈…?

どうして、泣きそうな顔してるの…?

なにかあったの…?

けどチャイムが鳴って、私は問い返すチャンスを逸した。

明姫奈は踵を返して席に戻ろうとするけど、くるりと振り返って言った。

「私思うけど。きっと蓮も蒼くんのこと好きだよ。今は気持ちの整理がついてないだけだよ」

幸せを逃がしちゃだめだよ。

明姫奈の言葉は、鈍く深く心に残る悲しさがあった。

呼び止めてもきっと明姫奈は、『ガキ』の私にはなにも答えてくれないんだろう。

そう予感して、恋に対する自分の拙さを改めて自覚した。

キケンなお留守番~オオカミおさななじみにご用心!~

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