テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第10話 目
Eさんは、実話系の怖い話が大好きだ。
そういった内容の文庫本も買うし、テレビでそんな話をしていたら家族と一緒に騒ぎながら見るらしい。
だけど。
ネットでは『怖い話』を検索しない。
「いっぱい投稿されてますよ、実話系の怖い話」
不思議に思って私がそう言うと、「知ってる」と顔を顰めて答えられた。
Eさんも昔、仕事の昼食休憩によく見ていたのだそうだ。
昼食をとるとき。
会社にはランチルームというものはなく、事務は基本的にEさんひとりなので、電話番や留守番も兼ねて自席で食べるのだという。
その時、仕事で使うパソコンをネットに接続し、実話系の怖い話を検索して読んでいたのだそうだ。
ある日。
いつものように、よく読むサイトにアクセスして投稿された作品をEさんは読んでいた。
マウスを使ってスクロールしている時、画面の右上部からするり、と目玉の画像が現れたのだそうだ。
ブログなんかで時折、画面の外から季節に応じたキャラクターが移動してくる演出がある。クリスマスの時期には、サンタのソリが斜めに画面を横断したり、ハロウィンには、かぼちゃのランタンが揺れながら動いたり……。
Eさんは、そんな演出の一つだと思った。
目玉はパソコン画面の上部辺りをウロウロするので、文字を読むには邪魔で仕方がない。なんだこれ。そう思った時だ。
目玉と、目が合ったのだという。
当然、何かの演出だと思った。
目があったのも、偶々たまたまだ。あった気がしただけだ、と。
良く出来てるなぁ、とさえ思ったそうだ。
だけど、目玉はまばたきをしたらしい。
ここに及んで、Eさんは異変を感じた。
その黒瞳からは、意志を感じたからだ。
向こうも、Eさんの変化に気づいたらしい。目玉は画面中央に移動してきた。
その後、目玉は、目玉ではなくなりつつあったのだという。
まず、瞼が現れ、目の周りの皮膚が現れ、眉間のあたりの皺が画面に広がり始めて、慌ててEさんはサイトを閉じた。
パソコン画面は、トップの壁紙に戻り、ほっとしてEさんは肩の力を抜く。
気味は悪かったが、これはおもしろい体験をした、とEさんは思ったそうだ。
誰か営業が帰ってきたら、教えてやろう。
そう思って、コーヒーでも飲もうと、回転いすをわずかに後ろに下げた。
その時。
事務机の下に、半分だけの顔があったのだそうだ。
ちょうど足を置いているあたりに、半分だけの顔があり。
パソコン画面から覗いている目玉と同じ目が、Eさんを見上げていたそうだ。
以降、Eさんは絶対ネットでは怪談を読まないと心に決めている。