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アリィ「ポルポル。」
アリィはポルポルの頭にぽんぽんと軽く手を乗せる。その拍子で弾みながらポルポルは返事をする。
ポルポル「ギ?」
アリィ「また荷物持ってくれる?あっ、それと…はいこれ!」
ジーク「随分小さいシルクハットだな。いつ買ったんだ?」
アリィ「前の町で買ったんだ!色々あってすぐには渡せなかったんだけど…あれでもポルポルって…ツルツルしてるし滑っちゃうかな…。」
ジーク「ツルツル…?」
ポルポルは荷物を取り込むとアリィが持っていたシルクハットに近づく。
ポルポル「ギッ!」
アリィ「…手を離せばいいの?でも落ちちゃうよ?」
アリィは少し迷いながらも、言われた通り手を離す。するとポルポルは少しアリィから離れる。帽子がポルポルについて行きながら。
アリィ「わっすごい!浮いてる!これならずっと付けてられるね!」
ポルポル「ギー!」
ジーク「…深く考えないようにしよう…。準備出来たか?」
アリィ「ばっちり!」
ポルポル「ギー!」
ジーク「よし。それじゃ行こう。」
アリィ「はーい!でも大丈夫?」
ジーク「何が?」
アリィ「だってジーク、なんか目が赤いから…。毒性植物にでも触れちゃった。」
ジーク「…ああ。でもすぐ目は洗ったから大丈夫だ。」
アリィ「それならいいんだけど…。」
ポルポル「ギー。」
ジーク(記憶を読めるとか冗談じゃない。泣いてたとか絶対言うんじゃないぞ…。)
ジークはポルポルの方を睨んだが、ポルポルは頭を傾けるだけだった。
ベツレヘム「3人とももう行きますか?」
アリィ「うん。そういえばここに来たのはベツさんに会えたことがきっかけだったね。会えてよかった。」
ベツレヘム「私もです。名目上、私は村長になりますので、中々難しいですが困ったことがあれば助けますので言ってくださいね。」
アリィ「うん。覚えておくよ。」
ベツレヘム「しかし…本当に護衛は要らないんですか?」
ジーク「ああ。今まで2人でやってきたし。居てくれたら安心だけど、村の方が今は忙しいだろ?」
アリィ「私達はこうしてお見送りして貰えるだけで十分だよ。」
ベツレヘム「それなら…行ってらっしゃい。」
マリア「あら遅かったかしら?」
マリアがアカネを連れやってくる。
アリィ「まだ大丈夫。」
マリア「よかったわ。行ってらっしゃい。無理しすぎちゃダメよ。適度に休憩するのよ。」
アリィ「あははっなんだか私のお母さんみたい。」
ジーク「言うことがじいちゃんそっくりだ。」
マリア「それだけあなた達に好意があるのよ。ね、アカネ。」
アカネ「はい。アリィさん。栞、ありがとうございました。大切に使います。ジークさんも、お話聞いてくれてありがとうございました。お怪我しないよう気を付けてくださいね。少し寂しいですが…行ってらっしゃい…!」
アリィ「私達こそ大助かりだったよ。アカネ君、ありがとう。いつまでも元気でね。」
ジーク「俺からもありがとう。ただ自分が壊れるようなことはもうするなよ。かなり驚いたんだからな。」
アカネ「き、気をつけます…。」
カイオス「おう、総出で見送りか。まっ、当然の待遇っちゃ待遇か。」
ベツレヘム「カイオス、よく起きれたね。朝弱いのに。」
カイオス「言っとくが、フェニックスに入る前はかなりの早起きだったぞ。」
ベツレヘム「じゃっ、リーダーのせいだふふっ」
カイオス「ああ、リーダーのせいだ。…ってあぁ。雑談で引き止めちゃ悪いな。ほれ。」
カイオスはアリィにあるものを渡す。
アリィ「何これ香水…?」
カイオス「ご名答。悪魔を寄せ付けない匂いの香水だ。まぁまだ試作段階だから気休め程度と思ってくれ。もしまた会うことがあれば効果はどうだったか教えてくれ。」
ジーク「気休め程度だとしても、これはかなり助かる。ありがとう。」
アリィ「あまり悪魔で体力を消耗したくは無いもんね…。」
ベツレヘム「いつこんなの作ったの?」
カイオス「ずっと前から。俺達としても悪魔とヒトが接触するのは避けたいからな。それでもまだ望み薄だがな。まぁ、これが俺の仕事だし精々頑張ってみるかね。他のやつも手伝ってくれりゃいいのに…。」
ベツレヘム「無理かなぁ…。リーダーはともかく、他がねぇ…。」
カイオス「ああ言い忘れてた。行ってらっしゃい。」
アリィ「皆本当にありがとう。行ってきます!」
ジーク「行ってきます。」
姿が見えなくなるまで、手をお互いに振り続けた。やがてアリィ達はイニディア村から見えなくなった。
ジーク「運が良かったのか、香水が効いたのか…。」
アリィ「どっちかは分からないけど、とにかく町に着くまでに悪魔に会わなくて良かったよ。宿はどこだろ…。」
ジーク「…なんか周りの視線が痛い気がするんだけど…」
アリィ「でもここに私達の情報はないよ。」
ジーク「俺の考えすぎか…?」
アリィ「あっ、あっちだね。宿は。」
ジーク「じゃあ行くか。あっでも先に前に剥ぎ取った悪魔の素材を売っときたいな…。イニディア村じゃ売れなかったからな。」
アリィ「じゃあ私先に宿に行ってるね。」
ジーク「ああ任せた。」
(ついでになんかいいご飯屋でも探すか。)
そういうとジークとアリィは二手に分かれる。ポルポルは少し迷いながらもアリィの方について行く。
宿屋の主人「いらっしゃい。」
アリィ「2名1部屋でお願いします。」
宿屋の主人「銀貨3枚だよ。」
アリィ「はい。」
(高いな…。)
宿屋の主人「ひぃ、ふぅ、みぃ。確かに。はい、これが部屋の鍵だよ。鍵についてる番号が書いてある部屋だ。」
アリィ「はーい。ありがとう。」
???「〜で、だからそっちに行きたいんだけど…」
???「〜だ。正直あまり危険な場所には…」
アリィがカウンターから離れると男女の話し声と階段を降りる音が聞こえた。
アリィ(なんの話だろ…?)
???「〜でも…!」
アリィ「…夫婦喧嘩は犬も食わない…。さつさと行こ。」
???「前を見て降りて。危ないから。」
???「ちゃんと見てる…うわぁっ!?」
金髪のサイドテールの少女は、羽織を被ったよく見えない少年に指摘された直後に、階段からずり落ちそうになる。
???「だから言ったのに…。」
羽織を被った少年は、金髪の少女の腕を掴み落下を止める。
???「ごめんなさい、ありがとう…シリル。」
シリルと呼ばれた少年は返事を返す。
シリル「どういたしまして。…お騒がせいたしました。」
シリルはアリィの方を向いて礼をする。
アリィ「……あっ…いえ…」
(びっ…くりしたぁ…!)
アリィもつられて一礼する。
シリル「イリア、もうすぐあの店閉まるよ。明日にしよう?」
イリア「ダメよ!今日行かなきゃ!」
シリルとイリアと呼ばれた少女は先程の騒ぎなどまるでなかったかのように宿屋を後にした。
アリィ「なんだったんだろうね…」
ポルポル「?」
アリィ「わかんないか」
アリィはそういうとポルポルを撫でる。
イリア「…で、もう少しで閉まる店に行く予定はなかったはずだけれども…何かあるの?」
シリル「とりあえずまずは話を合わせてくれてありがとう。ダメ元だったけど…」
イリア「私頭の回転だけは早いから任せて。それで何を2人きりで話したかったの?」
シリル「…あの橙色の髪の子が抱えていたお化けみたいな子のことなんだけど…。」
イリア「…アヴィニア人?私もそんな気はしてたけど…。」
シリル「多分。…僕には保護する義務がある。」
イリア「…でも貴方はまず、家族と再会できないと…。」
シリル「それも分かってる…。」
イリア「…フェニックスの『黒馬』として、指名手配されて無ければもっと早く再会出来るんだけど…フェニックスの一員であることを隠してフェニックスを探すのは中々難しいわね…。」
シリル「…。」
イリアがそう吐露すると、シリルは申し訳なさそうな顔をする。
イリア「そんな顔しないで。これは私の責任だもの。」
シリル「1つわがままを言ってもいい…?」
イリア「ええ。できる限り叶えてあげる。」
シリル「…あの橙色の髪の子、僕と同じ指名手配者だ。だから少しアヴィニア人が無事か気になって…。」
イリア「…指名手配者。そうね、張り紙を他の町で見かけたわね。確か…悪魔と親殺し。…もう1人、親殺しの方が居ないわね。そこからでも調査はいいんじゃない?」
シリル「分かった。」
イリア「この町は本来情報の伝達の早い町だから、もう捕まっててもおかしくないんだけど…。そういえば…掲示板に指名手配書が1枚もなかったわね…。不自然だし、それから先に調べない?私達も万が一捕まったらまずいわけだし。」
シリル「僕だけだよ。イリアは指名手配者じゃないんだし…1人で…」
イリア「またその話?私の考えは変わらないから。」
シリル「分かった…。でも無茶は」
イリア「分かった分かった。」