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「……うん? なんか言ったか? ほら、早く教えてほしいとこ出せよ?」
どうして、いつの間にか向こうのペースになってるんだか、まったくわからない。
まるで気にもしていない風の目の前の人に、自分ひとりで頭にきていても仕方ないと、もう早く終わらせて帰ろうと思った。
「ここです。この箇所がよくわからなくて……」
今日の授業で習ったところを指差す。
すると、「ああ…これね」と、流星が白衣の胸ポケットからペンを引き抜いた。
「少し説明が足りなかったか……ここを、こう解釈すればいいんだよ」
ノートに注釈が書き足されると、その解説はわかりやすく、私の疑問もすぐに晴れていった。
「……と、いうことだ。どうだ、わかったか?」
流星がノートから顔を上げ、こちらを流し見る。
「あ…はい、わかりました。ありがとうございました」
お礼を言い、ノートを閉じて、立ち上がろうとする。
──と、
「なんだ、もう帰るのかよ?」
どうしてだか、そんなことを訊かれた。
「帰ります……もう、用事は済んだので」
その問いかけの意味もわからずにそう答えを返して、ドアに向かおうとする私の腕が、不意に捕まれた。
「ちょっと、やめてください……」
「いいから、こっち向けって」
両腕が捕らえられ、体が真正面に向き合わされた──。