学校のキッチンにて、別世界のバナナこと、フラーウムは現在、料理をしていた。
(あとは煮込むだけ・・・)
ふと、隣に目線を向けた。
「・・・なんでここにいるんだ?」
「僕も料理したいからだ。ダメか?」
と、隣のバナナにフラーウムは聞いた。
「別にいいが・・・」
と、フラーウムは目線を鍋に戻した。
バナナはじっとフラーウムを見る。金髪をひとつ結びにし、サングラス。目元には傷。見た目はほぼバナナに似ていた。だが、一つだけ違うのは。
“一房だけ赤い髪”
それを見ると思い出す。リンゴ帝国の姫、リンゴ姫を。
バナナは無意識に手を伸ばした。
「・・・よし、できた。すまないバナナ、今どく・・・」
フラーウムが顔を上げ、バナナに伝えようとした。
だが、バナナがフラーウムの赤い髪を掴んでいた。
(・・・僕殺されるか???)
何故そんな物騒な考えに至ったか不明だが、微動だにしないバナナに、フラーウムは軽く困惑していた。しばらくその謎の状態で固まっていると、
「・・・綺麗な赤だな」
と、バナナがこぼした。
「・・・え、あ、どうも」
「・・・僕の知り合いにも、一房だけ赤い髪を持つ人がいた・・・今は、どこにいるのかは分からないがな」
そうバナナはこぼした。少し、悲しげな声だとフラーウムは感じた。
「・・・僕は、その人を知らないが・・・会えたらいいな。その人に」
そうフラーウムは瞳を和らげに揺らす。そんなフラーウムに、バナナは答えた。
「・・・不思議だな、同じ僕なのに、なんというか・・・君はふわふわしているな」
「喧嘩売ってるのか?」
思わずフラーウムはロケランを取り出す。バナナはホールドアップする。
「違う違う・・・君がどんな人生を歩んでいるのか分からないが、一つ違えば、僕は君みたいに歩めていたのかなと思ったんだ」
そう正直に話した。それにフラーウムは答えた。
「・・・お前は、今の道を選んだことに後悔しているのか?」
「・・・いや、していない。これは僕が僕自身で選んだ道だ。後悔も何もない」
「・・・そうか」
たった一言、そうフラーウムは答えた。その場にはコトコトとスープを煮込む音だけが響いていた。
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