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「とにかく、佐藤君とは話したくないから」
ハッキリ言ったことで、佐藤君の目がだんだん険しくなった。
「柚葉、もう出よう」
真奈がそう言ってくれ、私達は荷物を持って店を出ようとした。
レジの辺りで、佐藤君が、
「近々、柚葉の部屋に行くよ」
そう言い残して、サッサと先に出ていってしまった。
一瞬、血の気が引いた。心臓がバクバクする。
「あれ、2人とももう帰るの?」
店の奥から、良介君が出てきた。
「良介遅いよ! 今のお客、変だったのに」
「え? 大丈夫?」
「もう、本当に役に立たないんだから」
「真奈、言い過ぎだよ。良介君、ごめんなさい。大丈夫だから」
そう言いながらも、まだ動悸が治まらない。
とにかく私達は、良介君にお礼を言ってその店を出た。
「真奈、ごめん。心配かけちゃって」
私は、佐藤君とのことを簡単に真奈に話した。
「有り得ないよ。浮気しといてあの態度。まさか柚葉にお金借りようとしてる? 借金で怖いヤツらに追われてるとか。そんな感じの顔してた」
「でも、佐藤君、私がどこに住んでるか知らないはずだから」
「あいつ、柚葉の部屋に行くって言ってた。柚葉がマンションに住んでるって知ってるんだよ。誰かに聞いたとか。ストーカーかも知れないし、早く社長に話した方がいいよ」
確かにそうだけど……
「柊君に話したら、心配かけてしまうから」
「何言ってるの! 結婚相手でしょ? ちゃんと話さないとダメだよ。社長なら絶対に守ってくれるから」
柊君には話したくなかった。
浮気された過去なんて――
「話にくいなら、私が社長に言ってあげるよ」
「ありがとう。でも、大丈夫。何とかするから」
「何とかするって、1人じゃ何もできないでしょ? ちゃんと社長に言わなきゃダメだよ」
「……うん。心配してくれてありがとう。真奈、次の予定があるんでしょ? 早く行かなきゃ」
「あっ、うん。とにかく連絡するんだよ。じゃあ、ごめんね、行くね」
真奈は歩きながら後ろを何度も振り返り、見えなくなるまで私のことを気にしてくれた。
「……帰ろう」
私も、マンションに向かい、ため息交わりに歩き出した。