涙が恋に変わるまで

　ああくそ、参った。

　俺はべったりと肌に張り付いたシャツを見やり、その拍子に右目を掠めた、湿った前髪を掻き上げた。

　バケツの水をひっくり返した、という表現では随分と易し過ぎる。

　突然降り出したゲリラ豪雨のせいで、全身、靴の中まで、余すところなく、水浸しだ。

　俺をそのまま乾燥機に放り込んでほしいところだが、その前に、この雨が上がらなければ意味がないだろう。

　そう思いながら空を見上げるが、雨雲は暗色に覆われている。

　得意先への用事を済ませた後でよかった。

　ついでに、今日は直帰の申告をしてある。

　会社に戻る必要がないのは、少しだけ気を楽にさせた。

　しかし、駅に向かう中途半端な道すがら、駆け込んだ先は、これまた中途半端な軒下。

　雨風を凌いでいるようで、その実、屋根から溢れる滴を代わりに受け止めているだけのような。

　はあ、と嘆息を零した唇に、ぽつ、と露が落＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

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