あてんしょん 🦁
今回のお話は3話同じ話で、3話ごとに書く内容もカプも違ってくるので、毎回あてんしょんにカプ名を表記するので、よく見て苦手な人は逃げてください!!言いましたよ!!
と、言っても全部玲王受けなんで「玲王受けばっちこい!!!むしろ大好き!!」って方は楽しんでいってください!
○玲王総受け
○玲王愛され
○玲王受け以外のカプなし
○サッカーしてません
○ 口調迷子
○ネタバレ、捏造、キャラ崩壊注意
○配信者パロ
○玲王視点
○配信コメは─〇〇 という感じにやってます
それでもばっちこい!って方はどうぞ↓
+_______________________________________+
「皆さんこんにちは〜!BLUEROCKのカラスや。今回はお悩み相談ちゅうことで配信してくで。」
ついに始まったお悩み相談。俺たちメンバーは全員集合でいつでも対応できるようにと事務所に来ていた。配信を仕切るのはこの中で1番の常識人である烏。本当は一番の先輩である千切でも良かったのだが、千切が仕切ると『都合により配信を終了します』というエンディングで終わる可能性が出てくるため却下となった。
「皆のお嬢様であるお嬢の登場だ。喜べ」
カラスがいい感じで仕切ってくれていたにも関わらずぶち壊すのは千切ことお嬢。おかげでコメ欄は『好きッッッッ!!!』『下僕にして!!』『お嬢にだったら踏まれてもいい』という気色の悪いコメントばかりだ。でもこんなのいつもの事なので千切含め俺たちは全員スルーしていく。
「えー…次俺?…ナギ。」
自己紹介!と烏につつかれて自己紹介をするも簡素すぎてコメ欄が逆にうるさくなる。
『ナギくん?初めてみた〜』『先月の配信まさかの1回だけでビビりました笑』『どんな絡みが見れるんだろ〜!!wktk』と優しいBLUEROCKリスナーたちが声をかけてくれる。
「RINだ。」
更に簡素すぎる自己紹介のせいで烏は固まるし、離れてみていた潔は頭を抱えて蹲る。きっと2人の脳には『都合により配信を終了します』という文字が浮かび上がっているのだろう。
─RINくんめっちゃかっこいい!!
─ナギくんこっち見てー!
─カラス顔死んでて笑うwww
胃をキリキリと痛めつけられている潔とは対照的に、意外にもコメ欄ではRINの冷たい感じがウケているようだ。
「ほなら早速悩み相談受けっとるんで、コメントお願いします!」
コメントを見てある程度回復したのだろう、烏が進行を進める。
─最近彼氏とうまくいきません。どうしたらいいですか?
─お嬢ってどんな化粧品使ってますか?最近髪がパサついてるのでアドバイスください!
─バ先の店長が美形すぎて困ってます。12歳も歳離れてるのに惚れそうです
─お菓子食べすぎて太っちゃいました!美味しいお菓子教えてください!
「おぉ!ようさんきたな、ありがとさん。とりあえずこの中からひとつ選んでいくな!んー…RIN、なんかいいのあるか?」
「は?なんで俺がこんなぬりぃことを……チッ…彼氏問題のやつでいいだろ」
「えっ!!RINが恋愛相談!?ウケるww」
「お前そんなの受けるタチなの?意外」
せっかく選んでくれた内容に千切と凪がケチをつけたせいで、ブチッと凛の額には青筋が浮かぶ。それに気づいた烏がバッと会話に入って話を進める。
「カレカノ問題か…俺らには無縁やからな!!お嬢!なんかいいのないか?ジブン姉ちゃんいるやろ?」
「ゲッ…お前なぁ…俺が姉ちゃんいるからって俺は恋愛相談向いてるとは限らねぇんだけど」
千切はグチグチいいながらも烏が振ってきた話題に答えようと頭を働かせる。
「あー……?あっ!マンネリ化してんなら一緒に新しいことでもやってみたら?」
「ほぉ、新しいこと?」
「そうそう。例えば今までやってこなかったスポーツでもゲームでもなんでも!一緒にやればうまくいきそうな気がしねぇ?」
千切は得意げに頷きながら話す。
「それって経験談?」
「あー…まぁな?実は俺、ちょくちょくREOとクレープ食べたり、カフェに行ったり、メイク選びに行ったりでよく遊びに行ってるんだけどさ。俺もREOも毎回同じ流れだと飽きちゃうわけよ」
「ほうほう。それで?」
「だから俺もREOも飽きてきたタイミングでガマ混ぜてスキー場に行ってきた」
「はぁ!?思考回路どうなってんねん!!」
冷静な烏のツッコミにうんうんと頷く凪。
「いやーすっげぇ楽しかったわ!REOって何でもできちゃうからスキーもスイスイーってプロ並みの技術で滑るし、ガマの野郎もアイツ秋田出身だからか雪をものにしてやがんの。対して俺は鹿児島出身だから雪とはほぼ無縁なわけ。アイツら俺のスキー技術みて腹よじれるくらい雪の上に転がって笑うわけ!!腹たったわー!!」
その時のスキーを思い出してか千切はプリプリと怒りながら話す。
「でもさ、その後REOとガマが一緒に教えながら滑ってくれたおかげで結構上手く滑れるようになったんだよ。それから1月あたりになると毎回3人でスキー行ってるwww」
千切は嬉しそうに笑いながら「また行こうな〜!」と画面に向かって俺たちに手を振る。俺は國神と顔を見合わせてクスッと微笑んだ。
「そんじゃあお嬢がええ感じにしてくれたから次行こか!」
千切の相談解決のため次の話題に入ろうと烏が進行を進めていくと、どんどんコメントが湧いてくる。
─勉強が得意じゃないんですけど、いい勉強法ありますか?
─ゲーム上手くなりたいのでおすすめのゲーム教えて欲しいです!ついでにコツも!
─兄と話したいのに中々話せません。どうしたらいいですか?
─部活の後輩が全然部活に来てくれません。どうしたら来てくれるでしょうか
「ほうほう、ようけきてるな。ほならお嬢好きなやつ選んでくれへん?」
「えー……んじゃあお兄ちゃんのやつ?」
「あれ、確かRINって兄ちゃんいたよね?なんかないの?」
千切が選んだお兄ちゃん問題を当てられそうだと察知した凪は、素早く凛を売りつけて凛は驚いたように目を見開く。
「……いるけど俺達は仲は良くねぇ。」
「えっ、仲悪ぃの?前REOと兄ちゃんの話してなかった?」
「…してねぇ。」
「してたじゃん!」
凛の仲悪い問題に突っかかった千切が俺を巻き込んで話を広げていく。
「なんだっけかな、事務所で俺が朝飲んだ消費期限切れの牛乳にあたってトイレ行った帰りに、REOと相談してただろ?」
「してない」
「確か…『兄ちゃんに追いついていつか目に物見せてやりたい』って言っててそれにREOが『俺もお前のその夢の手伝いをさせてくれよ。困った時はいつでも頼れ』って慰めてもらってたろ?」
千切の告発によりカァーッと顔を真っ赤にさせた凛がガタッと椅子から立ち上がり、撮影部屋から出ていこうとするのを烏が必死に止める。
「お嬢!はよ謝れ!RINが出ていく!」
と烏の必死の訴えに
「えー、なんで謝んなきゃいけないの?ホントのこと言っただけなのに〜?」
と更に煽る千切。
「ねぇそんなことしてるんだったら俺帰っていい?ねぇISAGI達見てる?こんな感じなら帰ってもいいよね?」
カメラに向かって手を振りながら帰宅を要請する凪。と、もう完全に収集がつかなくなってきて國神と潔が頭を抱え出す。
─そういえばゲスト出演って誰なの?気になる〜
2人が頭を抱えていた時、1つのコメントが2人の目の前を通り過ぎる。
「玲王!!!ゲストとして行ってくれ!このままじゃ烏が死ぬ!!今凛を救えるのは当事者のお前だけだ!!!」
「はぁ!?今から?!仕方ねぇから行くけど今からじゃ俺も準備あるし先に誰か行って時間稼いどけ!」
俺が國神の緊急要請に従いカバンの中を漁ってREOとしての準備を始める。その間に凪に呼ばれていた潔が出ていってくれたのだろう、配信画面からISAGIの声が聞こえる。
「えっと皆さんどうも!!緊急ゲストのISAGIです!!あと1人ゲストくるんでお楽しみに!」
潔が凛をなんとかしずめて席につかせて、凪に帰宅は無理だと現実を突きつけ、千切に俺からの差し入れクレープの存在を告げてやる気を出させる。 潔と烏が溜め息をついて一命を取り留めた配信を進めようと話し出す。
「とりあえず!!お兄ちゃん問題は俺達には解決できない難攻不落な問題ってことでさっきの……部活の後輩のやつにしていくか!」
進行係でもない潔が場を収めて話を進めていく。これもう俺行く必要ないよな、と思い國神を見ると早く行ってやれと目で言われる。キリが悪いのでこの話が終わってからにしようと、撮影組を見つめて待機する。
「えっと…部活の後輩が中々部活に来てくれないんだよな!んー…そうだ 「お菓子で釣れば?」」
潔が回答しそうになってた時、凪が話に割り込んでくる。突然の割り込みに潔はポカンと固まるが凪は話し始める。
「この間俺が事務所で昼寝してた時、ガマがサボってるお嬢に苦戦してたら、丁度通りかかったREOが『これでやらせろ』ってかりんとう饅頭渡してお嬢釣ってたよ。…その後カラスもREOの真似して説教されてた時に、ひおりんに永谷園のお茶漬け渡してグーパンされてたけど…」
凪の有意義な情報におぉ!と烏と潔が思わず拍手を漏らす。対して千切は「それどの時だよ!」と釣られすぎて覚えていない記憶を必死に思い出そうとする。カラスはボソッと呟かれた後半の話に身震いしてカメラをそろ…と見つめる。ふと、隣にいる氷織に目を向けると何やら意味ありげな笑みでニコニコと微笑んでいるので、触らぬ神に祟りなしという言葉に従いスルーさせてもらった。
「はい、この問題は菓子で釣れってことで解決ね。早くコメント打って俺を帰らせて」
凪がボケーッとしながらリスナーたちに言うとリスナーは凪に応えるようにバシバシコメントを送ってくる。
─単位落としそうです、助けてください
─友達ができません、助けてください
─親が今朝交通事故で他界したそうです。私は今海外で日本に急遽帰ることになりました、助けてください
─友達に裏切られて彼氏寝盗られました。助けてください
「「「「「…………」」」」」
なぜか先程までのぽわ ーッとした空間が、暗いコメントにより、ドンヨリと湿っぽい雰囲気に包まれる。もちろん撮影組だけでなく、待機している俺達も無言でお互いに目をチラチラと合わせながら気まずくなっている。
「あー……じゃあ上から行くか…」
気まずい空間に耐えきれなかった千切が「助けて」と書いてあるから全ての問題にコメントするようにみんなを促す。それに気まずくなったみんながこくこくと頷いて賛成する。
「玲王…そ、そろそろ行った方がいいんじゃねぇか…?」
國神が明らかに目を逸らしながら気まずそうに俺を名指しする。この気まずい空間に俺を入れるなんて…とも思ったが、助けを求めるように氷織と馬狼を見るもスッ…と目をそらされる。唯一のフレンドリーなメンバーの蜂楽を見るとファイト!と肩を叩かれる。
そして無理やり撮影部屋に引きずられて撮影部屋の、静かな梅雨のようにジメッとした空間の扉を國神の見事な腕力でこじ開けて俺を押し込み満足したような顔をして去っていく。
「待っ…!!!俺を置いていくなって!!こんな空間に俺を置いてくなんて酷いぞ!!!バロー!!ハチ!!た、助けてくれよ!!」
俺が必死にふたりに向かって叫ぶも、蜂楽は「チャオー!」と言って去っていく、馬狼に視線を移すとふっと鼻で笑われて奥へと去っていく。
「ひ、ひお「REOくんあかんで。僕極Sやねん、頼っても意味あらへんで?」」
と、ニッコニコの笑顔を作られてルンルンで去っていかられる。皆俺を見捨てていきやがった…そして、ナメクジが大量発生しているようなジメッとした空間から逃げようとするも潔と千切に捕まえられて席に座らされる。
「…な、なぁやっぱ帰っていい…?俺どうせ役に立たねぇし…」
俺が恐る恐る言うと潔と千切、加えて烏がにっこりと不自然なほど清々しい笑顔で笑う。
「えぇ!!それじゃあ本当のゲスト!REOに来てもらいましたんで質問しちゃいましょう!」
潔はにっこにっこの笑顔で実に酷い現実を突きつけてくる。あまりの綺麗すぎる笑顔に俺は戸惑いが隠せず狼狽える。
「え、いや、ちょっ… 」
「そんじゃあ単位のやつお願いな〜」
「あと友人関係な〜」
「あー、REO。俺眠くなってきちゃったからついでに他界のやつもよろしく」
俺の登場により、少しは変わるかと思ったら皆なぜか俺にだけ集中攻撃して質問を押し付けてくる。しかもめんどくせぇ奴ばっか!!!!いきなり呼ばれていきなり質問を押し付けられるこちらの身になって欲しいものだ。
「はいはい、わかりました。単位と交友関係は俺がやるからその代わり他のふたつはお前らがやれよ?」
「うっっわ、釣れねぇ…比較的簡単なやつ捨てていきやがったな」
俺の言葉に千切はゲッ…とあからさまに嫌そうな顔をして俺を見つめる。俺はそんな千切をみてにっこりと微笑んで質問の内容に答えていく。
「えーっと、まずは単位が足りねぇんだよな?そうだなー……やっぱ金じゃね?賄賂使う他ねぇだろ。それか留年だな。どっちにしても金いるから金増やしたいなら俺の投稿してる動画に『金を増やす秘訣』ってヤツあるからそれ見てな!んじゃ次…「いやいや待て待て待て」」
俺がせっかく答えてやったのに、俺の話に割り込んできたのは困惑顔をした潔だった。
「お前なぁ、金で解決なんて漫画じゃねぇんだし、現実味無さすぎだろ?もうちょっと真面目に…「じゃあISAGIは他にいい案あんの?単位が足りないとかいう現実を考えていない質問に対して最適な答えが」……。ナイデス、スミマセンデシタ」
「よろしい。んじゃ次なー」
俺に正論をぶつけられた潔はみっともなくカラスに「アイツの感性ちょいちょいおかしいから大丈夫やで…」と慰められている。なんだその言い方は!俺がまるで潔をいじめたみたいじゃねぇか!!とも思ったが今は配信が優先なのでスルーしていく。
「えーっと?友達ができねぇんだよな。そうだな、これも金で「せやさかい金はあかんて言うとるやろ!」」
俺がまたまたせっかくアドバイスしてやろうとしたのに、今度はカラスまでも邪魔をしてくる。もうなんなんだ!俺に任せてくれたんじゃねぇの!?
「お前らなんなんだよ!俺に質問応えろって言ったくせになんで指摘ばっかしてくんだよ!!」
「ダメに決まっとるやろ!!!なんでええと思うた!?友情は金で買えねぇやろ!」
「買えるだろ!!今の時代恋人だってレンタルできる時代だし!!レンタル友達とかやってんじゃん!」
「ぐっ…」
俺の言葉にカラスはなにか言いたげだったが押し黙ってしまった。これで俺の完全勝利…と、思っていたのだが思わぬ伏兵がやってくる。
「REOはさ、もし俺に友達ができなくて困ってるって言われたらどうする?」
「え?ナギ、お前困ってんの?」
あまりに急な凪の質問に俺はついつい本音で聞き返してしまう。それほどまでにいつもの、普段の凪からは聞くことができない内容だったんだ。
「え、いや困ってないけど。ただ、REOは俺が困ってるって言ったらお金で買った友達を作ってくるのかなって思っただけ…」
凪はちょっと困り気味な顔をして首に手を当ててちらりとこちらを見つめてくる。コレは凪の癖だ。緊張してるときとか、困った時なんかにこうやって首に手をやる。だから俺は凪に対して真剣に答えを導いて応えてやる。
「はぁ!?んなわけねぇだろ!!もし困ってるって言うなら俺がお前の友達になってやる!!いや、親友だ!今から俺とお前は親友でパートナーだ!!!」
「え、ちょっ…え?展開飛ばしすぎじゃ…」
「ナギ!!!今から俺とお前は配信者で世界一になってやろうじゃん!!!大丈夫!心配すんな!!俺とお前なら何とかなる!!」
「いや、だから展開飛ばしすぎ……」
俺は思わず興奮で凪の肩に腕を預けて肩組みしてしまう。凪がこんなにも動揺している場面なんてそうそう見れるものでは無い、だからか知らないが、いつの間にか身体は凪に預けて顔はによによと笑っていた。普段からあのポーカーフェイスでぽやーっとしている凪が、自分の言葉に動揺して、考えて、悩んでいる姿を見るのはかなり優越感がある。
「そんじゃ!!さっきの訂正な!Answerは『俺が友達になってやる!』だ!」
「ほえー、さすレオ…」
なんて言い合いながら過ごしていると、いつの間にか配信は終わり、打ち上げもパパっと済ましてBL営業配信の日になった。
「やっほー!皆〜!!BLUEROCK、1期生のハチだよ〜!!今日はお偉いさんからのご依頼ってことでBLごっこを…あっ!これ言っちゃダメだった?ごめん!今のなしね!それじゃあ宣言していた通り、ちょっとえらーい人からお願いされたBL営業していくよー!え?これもダメ?じゃあBLしてくね〜!」
ついにやってきた、BL営業配信だったのだが、蜂楽が始めでやらかしたほぼ全てすっ飛ばした配信のきりだしだったが、スタッフからのOKサインが出たので無理やり突き進んでいく。
─BLごっこってなにするの?
─個人的にべろちゅーが見たい
─⬆公式にコメしちゃだめだろ!!
─個人的にishcかhcisがみたいです…
コメントは流しそうめんかのようにズラズラと並べられていく。途中でよく分からない単語があったので、とりあえず千切に聞いてみたら目をそらされた。なので國神に聞くと「知らないままいる方が幸せなことがある」と謎の名言を言われたので仕方なく押し黙る。
「BLごっこは俺達もよくわかってないんだけど、事前に配信前のアンケートで投票してもらった投票率の高いカップリングをルーレットでやっていこうと思う。あ、ちなみにルーレットはカプ決める時のことな」
俺が頭を ? でいっぱいにしているときには、すでにBLごっこについての説明をISAGIがし終えておりただ座っているだけになってしまった。威厳がたたないとはこういうことなのだろうか…もっと役に立ちたかったと項垂れていると、千切が謎にキラッキラの笑顔で親指を立てるのでぶるっと身震いする。千切がやけに上機嫌な時は決まって嫌な予感がする…そして、その予感は99%の確率であたる。
「ちなみに、シチュはルーレットでやる内容発表した瞬間、1番早かったやつをやるからな〜!!頑張れよ!」
ニッコニコの笑顔で爽やかに囁くのは、やはり予感を的中させに来ている千切だった。千切の意味深な笑みに鳥肌がポツポツとたったので腕をさすっていると、同じように右斜め前の烏も同じように腕を高速でさすっていたので、やはり嫌な予感は当たるのだろう…
「えっと…?まずは何するのか決めるんやんな?ほなコメントで5個くらいどないなものをやってほしいか書いてな」
千切と同じく、意味深な笑みを浮かべる氷織の悪魔の囁きによってコメント欄が大盛り上がりとなる。そして、さっきまで俺と同じように腕をさすっていた烏はふっ…と何かを諦めたかのように点を見上げる。残念ながら烏の見上げる天は撮影部屋の人工的な照明だ。烏と仲間意識を抱いていたところで、いつの間にかコメントで何をするかの案の出し合いが始まっていた。
─初めなんでほっぺにキス!!!
─壁ドンからの顎クイで胸きゅんセリフ囁いて欲しい!
─ハグしながら頭なでなでしてほしい…
─身体のどこか1箇所にキスマつけて欲しい!
─膝枕して欲しい!!
などなど、たくさんのコメントが寄せられていた。中でも1番盛り上がっていたのは『唇にキス!』だった。勿論言わずもがな俺は無理だと思う。なんでと聞かれればマスクして顔出ししないようにしているから、と答えるだろう。ほっぺくらいならマスクをちょっとずらせばいけるが口はダメだ。俺の顔が画面にはっきり映ってしまう。
「じゃあとりあえず、3個くらい候補搾って順番決めてくか。順番だけで後でやるけどな」
そういった國神は俺や烏と違って和やかにことを受けいれつつ進めている。俺はてっきりこういうことに初心な國神は戸惑っているのかくらいは思っていたのだが、想像に反してそんな気は1ミリも感じられない。同じく潔も「だなー」と呑気そうに國神に返事して進行を進めていく。特に焦り散らかしそうな2人が焦ってもおらず、動揺のどの字も見せない姿から俺と烏はどういうことか理解できず首を傾げていた。
そんなこんなで選ばれたのは『ほっぺにキス』、『身体のどこか1箇所にキスマをつける』、『唇にキス』の3つだった。最後の唇にキス以外は出来そうでホッとしたのだが、何やら意味深に笑う千切と氷織の顔が引っかかってなんとも言えなかった。そんな俺を置き去りにして配信はどんどん進んでいく。
「順番は『キスマ』、『ほっぺちゅー』、『口ちゅー』の順番な〜!」
すでにルーレットを回したのだろう潔がたんたんと司会として進めていく。
「あ、今更なんだけど口ちゅーREOできなくない?」
放心している俺を置いて、大切なことに気づいてくれた千切がぼそっと呟く。するとコメントでも「確かに〜!!」とか「えっ!マスクとるん!?」とか「顔出しktkr!!」なんて勝手に盛りあがってくれている。盛り上がるのに水を指すのは配信者としてとても心苦しいことだが、自分の秘密とメンバーのためにも俺が俺であることがバレてはいけないので、大変辛いがバッサリ否定させていただく。
「あー…盛り上がってるところ悪いけど、顔出しは事務所NGなんで!口ちゅーは俺以外のメンバーがやってくれます!!」
俺がにっこりと微笑んで言うと、コメント欄では「えー…、REOぴのファーストキス楽しみにしてたのに残念…」、「いつか顔出ししてくれるのを待ってます!!そしてこの中の誰かと結ばれることも待ってます!!」、「REOぴ絶対イケメソだもんな…そりゃ自衛するわ」などなど優しいコメントばかりでホッと安心して胸を撫で下ろす。
「え、REOやんないの?じゃあ俺やる意味ないじゃん。ISAGI、俺リアイアできる?」
「はぁ!?できねぇに決まってんだろ!!REOは仕方ないとしてお前には視聴率稼いでもらうかんな!!」
「はぁ…ダル…」
俺が口ちゅーできないのをずるいと思ったのか、なぜか凪は全力で面倒臭いをアピールして潔にリタイアを申請するも見事に却下され、面倒臭くなるであろう未来にため息をこぼす。
「んじゃまぁ、最後のやつ以外はREOもできるわけだしリスナーのみんなにコメントでやってほしいカプお願いするか」
凪を宥めるのは軽く済ませ、國神が配信の進行権を握る。そして國神の一言によりコメント欄がよく分からないアルファベットで埋めつくされていく。
「えっと…?ishc…?gmoj…?は?え?なんていうやつなんだ?なぁISAGI、これなんて言うやつなんだ?てかなんで皆日本語喋らねぇの?」
俺はせめてコメントだけでもと思い、コメントを拾おうと画面をのぞき込むも、そこには意味のわからないアルファベットが4文字ほど並べられているだけで全く意味がわからない。それに、さっきまで日本語で「楽しみ!」とか「早くみたいです!」とコメントしていてくれた皆が一瞬で、怖いくらいにアルファベットの使い手となってしまったのに俺は困惑した。
そんな俺の疑問を解消するのは1期生の潔。彼は基本的に聞かれれば必要事項を答えてくれるいい人材なのだ。なぜ國神に聞かないのか?と言われると答えはこうだ。『國神は答えてくれる時と答えてくれない時があるから』だ。國神もまだ高校生という名の未成年だ。だからか、恥ずかしい(性的な)ことは聞いても顔を赤くして答えてくれないのだ。そして、答えてくれない國神がSOSを求めるのは潔なので、もうこの際さっさと答えを知りたい俺は潔に聞くことにしたのだ。
潔は暴言なんかをついつい言ってしまうことがある(1話参照)からか、恥ずかしがりはするがそういった話を一応分かりやすく言ってくれるので助かる。のだが、その潔に疑問をぶつけた瞬間、ズズズッ…とあからさまに顔を背けて俺から目を逸らしてくる。潔のこんな反応は初めてなので思わずポカンと立ち尽くす。
「おっ!ついにISAGIくんにも恥ずかしさが芽生えちゃったか〜!!!やったなガマ!仲間増えたじゃん!!!」
俺がぽかんとしていると、潔の反応に目をつけた千切がここぞとばかりに潔をからかいだし、ついでと言わんばかりに國神を巻き込んでからかいにいく。そして2人は可哀想なことに千切の言葉によってクッ…!と唇をかみしめお互いを慰めあっている。
「あ、ちなみにこのアルファベットの羅列はカップリングのことだから覚えとけよ?おっ!ちょうどお前が下のカプが…ん?ojro……ってこれ俺とお前のカプじゃん𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐」
ゲラゲラと笑う千切とは対称に俺は理解できない数々のアルファベットを薄目で見つめ、馬狼は自身と凪のカプが存在していることに気づき凪に逆ギレして胸ぐらをつかみ、凪もまたバチ切れして馬狼に掴みかかる。凛は俺と同様、あまり知ってはいけない世界を目の前にしてしまったからか、薄めにして画面をチラチラと見る。
そんな俺達に気づいていないのか、1期生の千切と蜂楽、プラス俺以外の2期生の烏と氷織がニッコニコでルーレットを回し始める。1期生の他のふたりは?そう、言わずもがな他のふたりはまだお互いを慰めあっていてとてもじゃないが戦力にはならない。
そうこうしているあいだにも、地獄は、いや時間はやってくる。
「おっ!!!出たな!えー、なになに〜…?」
ありえないくらい、嬉々とした千切の声に俺たち6人はドバっと冷や汗を垂れ流してチラリと千切の持っているスマホに近づいて、自分に神の手がさずけられることを願いスマホを見るとそこには_
『hcro』(蜂楽×玲王)
と、意味のわからないアルファベットの羅列が並べられていた。なんの事だかわからなかったが、蜂楽がなぞにこちらを見てニコッと微笑んだのを見て察した…あ、それ俺とお前のカプなのか…と。なので俺は少しでも自身のストレスを減らすためにみんなに提案する内容を優秀な自身の頭脳をフル活用して思いついたので口を開く。
「ちょっっっっと待ってくれ」
「なんだよ、お前キスマはやだってのか?逃げんのはなしだかんな?」
千切は俺の焦り具合からして俺が逃げようとしていると思っているのだろう、なのでそこはきちんと否定して言い直す。
「俺とハチのカプだけじゃ物足りねぇだろ?!もう1つカプを増やそう!!!」
「……は???」
「ええな、それ。僕も賛成やで、ほなREOくんとハチくん省いてもう1カップル作ろっか」
俺の声に苛立ちを覚えたのか、意義の声を漏らしたのは馬狼だったが、すぐさまその声を否定するように氷織から賛成の声がもれた。もしかしたら、自分が当たるわけが無いと氷織の直感がいっているから、わざとあくどい事をやろうとしているだけなのかもしれないが、今は氷織のその言葉に少しありがたく思ったのでそのまま進めさせてもらう。
「いやいやいや、待て待て。なんでだよ、1組で充分だろ」
「俺も氷織の意見には賛成や。リスナーの注目度を集めるなら1組だけなんて勿体ぶらんとやるべきやろ」
潔から出てきた言葉をまたしても一喝するように話し出したのは、同じ2期生の烏だった。何故だか知らないが今ここが1番と言っていいほど2期生の絆というものを感じた。ありがとう…2人とも、感謝してるから後でサンマと昆布茶(どちらも高級)送ってやるから…と心の中で感謝をして話を続ける。
「いいか?俺たちはこういうやりたくない場面でも、嫌がらず、出し惜しみもせず己のオリジナリティを発揮できるやつなんだと、世間に知らしめることができるせっかくの舞台を盛り上がりもなしに終わらせる気か?いいや、終わらせたりしねぇだろ?な!!頑張ろうぜ!!」
そう言ってにっこりと微笑んで潔と肩を組むと、潔はふむ…と考えたあとこくりと頷いてくれたので放心状態の3期生達が目覚める前にとノリノリの烏と氷織にルーレットを回すようにお願いして回す。そして新たに選ばれたカップリングは_
『brkr』(馬狼×烏)
さっきまでノリノリでルーレットを回していた烏は、出てきてしまった自身の名前をみてガクン…と思いっきり膝から崩れ落ちる。そして、まさかの出てきてしまった馬狼はピキピキと顔に青筋を作っている。そんな二人を見て氷織は楽しそうに烏の背中をぶん殴りながらクスクスと笑い、怒りを必死に抑える馬狼に千切が大笑いをかましながら四つん這いになり床をバンバン叩く。
「ひーーーーっっっ!!!!!!!𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐ひゅー…っっ𝗐𝗐𝗐はぁっ𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐悪ぃ𝗐𝗐𝗐ツボが𝗐𝗐𝗐だはッッッッッッ𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐𝗐」
俺たち4人に代わって司会をしようとしているのだろう、千切はツボにハマりすぎて会話が成り立たなくなってしまった。
「ぶふッッッ𝗐𝗐𝗐わ、悪い。それじゃあ𝗐𝗐𝗐キスマつけて言ってもら𝗐𝗐𝗐う、クッ……𝗐𝗐」
会話ができない千切の代わりをと自信を繰り出したハズの國神だが、千切に釣られてか笑いが止まらなく、千切ほどでは無いが笑いながら配信を進める。
「んじゃ、さっさとつけようぜ。」
「うん、そうだね♪あ、俺がつける方やってもいい?」
「え?まぁいいけど…ハチ、お前キスマ付け方知ってんの?」
「んー…知らない!!!でもREOっちマスク取れないんでしょ?じゃあ俺がやるしかないじゃん?」
あ…と思わず声がもれた。そうだ、キスマを付けるとなるとマスクを取らなくてはならないのだ。まさかあのポケーっとしている蜂楽にこうして気を遣われるという事態になるとは思っておらず、ついつい驚いて蜂楽をボーッと見つめてしまう。
「ん?REOっちどうしたの?具合悪い?」
「え、あ、いや…ただハチがそんなふうに気ぃ遣ってくれてたなんて嬉しくて…」
「…!ふふっ、当たり前じゃん♪俺ら仲間なんだから助け合いは当然だよっ!」
クソッ!!!蜂楽の笑顔が眩しい…!!!これが世にいう天然というやつなのか!!と俺は改めて天然というものを実感して深呼吸してキスマに挑もうと蜂楽を見ようとすると、隣というか馬狼と烏たちの方が騒がしいことに気づいたのでそちらをちらりと見る。
「おい!!!!お前腕に消毒しろ!!汚ぇだろ!!」
「やかましいわボケ!!!腕に消毒なんて注射とちゃうんやからするわけあれへんやろ!頭沸いてんのか?!」
「あ???頭沸いてねぇだろ!!!どっちかと言えばお前のその腕の菌の方がうじゃうじゃわいんじゃねぇか!!!」
「菌ッッ!?!?!?俺、一応大先輩やで?もうちょっと敬うことはできひんのか!?この世間知らずが!!!」
と、暴言炸裂している2人に思わず口が空いてしまう。流石にいけないと思い止めに入ったであろう潔は2人が猛獣と化してしまい、威嚇されて呆気なく退場していく。そして潔の代わりに止めに入ったであろう國神は「偉そうに指図すんじゃねぇ!!」と怒られて可哀想に撃沈して潔と2人で慰め大会を開いてしまう。
おいおい、ここ一応BL配信だぞ?暴言炸裂バトルロワイヤルじゃねぇんだけど??と、考えているとラスボスが2人に近づく。そしてドカッッッ!!!と音を立てて2人の頭をグーパンで殴り説教を始める。馬狼は殴られたことに怒り、馬狼を殴った相手である千切に怒ろうとした瞬間、除菌シートを無言で渡されて落ち着く。烏は氷織のにっこり笑顔をみて無言で自身の腕に消毒をこれでもかと吹きかけてゴシゴシと洗う。
「……、母と子?」
ボソッと蜂楽が呟いた瞬間、溜めていた笑いが思わず吹き出してしまい、空気をぶふッと吐き出すがにっこりと微笑んだままの氷織がこちらを見たので、すぐさま切りかえて蜂楽に向き直る。
「よし、俺が見本見せてやるからしっかり覚えろよ。試しに腕にやってやるから、あ!スタッフさん!こっちにカメラ向けないで!マスクとるから!」
俺がそう言ったら、スタッフの人はこくりと頷いてカメラを烏達の方にだけ向けてくれる。
「そんじゃ、ちゃんと見とけよ?」
「あいあいさー!!」
蜂楽がにこにこと楽しそうに笑いながら返事をするのを確認して、蜂楽の腕を持ち上げてちゅぅと唇を吸い付ける。そして軽く口で腕を吸ってちゅっと音を立てて離すと蜂楽が大きく目を見開いてこちらを見ていた。え??怖っ、どうしたんだよと思うがひとまずマスクをつけてから蜂楽に声をかける。
「え、何?どうした?もしかして痛かったか?」
「いや、全然痛くないよ!ただ…REOっちがなんかすっごいエッチだったからつい…」
蜂楽のあまりに衝撃的な話に思わず、さっきまで大乱闘を繰り広げていたはずの烏がグリンと首を180°ほど捻ってこちらを見てくる。え、ちょっと待て、お前斉Ψの燃○??ちょっ、首イカれてねぇよな???
「確かに、さっきのREOはえっちだった」
「ちょっ!ナギ!?!?!?」
○堂の次にこちらの状態をみたナギは、まさかの救世主ではなく救世主の皮を被ったワルだった。
「REOっちのおかげで多分わかった!じゃあ首に失礼しまーす♪」
「あっ!!ちょっ!!!」
俺が制止するのに有無を言わさず、蜂楽は俺の首に顔を埋め、ちゅっちゅっと軽くキスをしてくる。
「ッ〜〜!!!!」
「ははっ、かわいー…♪」
耳元でポソッと蜂楽はそう囁いてじゅるっと大きな音を立てて俺の首元を吸う。しばらくしてじゅっ…と首元から水音をたてて離れたと思ったら、今度は鎖骨に顔を埋めまたキスマをつける。流石に羞恥心で死にそうになったので蜂楽を突き放すように無理やり剥がす。
「あー…!いいとこだったのに…」
「バカ野郎!!!誰が2回戦やっていいなんて言ったんだよ!!ダメに決まってんだろ!」
名残惜しそうに蜂楽は俺の鎖骨を見つめてくるので、思わず反射して鎖骨を腕で隠して蜂楽に向かって説教をする。まさかあの人畜無害な蜂楽がここまで悪い方に変身できるとは思っていなかったので、動揺して説教する時に声が上ずってしまう。
「あー…その顔だめ」
突然背後から説教していた俺を抱きしめてきたのは凪だった。
「えっ?!?!?!凪!?」
「ダメでしょ、レオったら。いくらマスクしてるからって、そんなメス顔見せて視聴者が興奮したらどうすんの?」
「メッ…!?!?」
「おいコラナギ!!!!!REOにいらんこと教えんな!!穢れんだろ!!」
先程まで烏達に構っていたはずの千切が、凪の頭をドっ!!!と音を立てて思いっきりグーパンする。
「いっっっ……!!!何すんのおじょー…」
「何すんのじゃねぇわ!!!一応これ配信してんだからそういう言葉使うんじゃねぇっての!!これ全年齢対象配信なんだから!」
これはごもっともである。千切の言うとおりだ……、だから早くこの抱きしめている腕を解放してくれ…ほ、骨が折れる…
「ちょちょ!!お前ら落ち着けって!バロー達も何とか終わったんだからここで騒ぎおこすなよ!」
問題解決のプロの潔がバロー達のことを引き合いに出してなんとか場を収めてくれる。あの暴れ馬以上のレッテルを貼られるのはかなり耐え難いことだったのか、凪はゆっくり俺を解放してくれ、蜂楽は不適切発言のためかるーく國神に説教されている。そして俺は何故か意味がよく分からないまま千切に抱きしめられている。凪と違って力加減が上手いのか、千切に抱きしめられるのは痛くないので構わないが、流石に俺の首元に頭を埋めてくるのは先程の蜂楽を思い出すのでやめて欲しい…
「お嬢様〜?そろそろ配信再開するんで俺のこと離してもらえると助かるんですけど…」
「しばらくこのままでいろ、お嬢様命令だ」
こうなった千切はどう足掻いても言うことを聞いてはくれない、なので諦めてこのまま配信を再開することにしてカメラに向き直る。その間も千切は一切カメラには目もくれずただひたすらに俺に顔を埋める。
「それじゃあちょっっと気になるところはあるけど再開するか」
潔はこちらを見て若干苦笑いをしながら進行を進めてくれる。俺としてもツッコミたいところは山ほどあるが、こうなってしまったお嬢を止めることは誰にもできないので早々に諦めて配信を進めることにした。
「えっと?ほっぺちゅーだよな…んじゃ回してくか」
千切の保護者第1号である國神はチラリとこちらに視線を向けるだけで、あとは面倒に巻き込まれたくないからかそのまま素通りして何事も無かったかのように進めてしまう。
「おっ!でたでた」
そう言った潔の声に俺はピクッと反応して千切を背負ったまま潔に近づきスマホを覗き込む。
『ojro 』(千切×玲王)
『gmng』(國神×凪)
「うっっっわ、キッツ…」
そう言ったのは、國神とキスすることになってしまった凪だった。彼は普段表情筋が動かないことで有名だったが、今この時は汚物でも見たかのような表情でスマホを眺めていた。そして、その相手である國神は凪の反応を真に受けて落ち込んでしまい蜂楽に慰められている。だが待ってくれ、一番文句を言っていい奴がここにいるんだ!!!!
「おい!!!なんで俺だけ2回連続なんだよ!!まさか偽装なんてもんしてねぇよな!」
そう、その1番文句を言ってもいいやつとは完全に俺のことだ。だっておかしいだろ?俺だけ2回連続だなんてなにか偽装でもしない限りそうそうない。なので、恨みの籠っためで潔を見ると、明らかに動揺したような焦り具合に潔が視線を動かす。
「おいISAGI。お前やったな…?」
「いや!!悪いと思ってるよ!でもこのままだとお嬢も復活しないまま湿っぽい配信することになっちまうじゃん?!だから喝入れるためにさ!!ここは一肌脱いでくれ!!」
俺が潔に詰め寄ると、意外と呆気なく潔は白状する。まぁ潔の言っていることもわかるっちゃわかる。だがそれとこれは話が別だ。別に俺が喝入れてやるのはいいとしよう、しかし偽装の件は許せない。視聴者にこうやって何か問題があると勝手に偽装する”いつまでも逃げの体勢を最初にとる配信者”としてのレッテルを貼られてしまうことがとてつもなく嫌だからだ。
「お嬢に喝入れてやるのは別にいい。だけど、勝手に偽装はなしな。なんの偽装もしてないもう1組をプラスでつくれ」
「わ、わかりました…」
潔はしゅん…として申し訳なさそうにルーレットを再び回すと今度は
『hois』(氷織×潔)
嗚呼…なんということでしょう、さっきまで天使のように微笑んでいたはずの氷織が暗黒微笑みを浮かべております。そして、こちらもなんということでしょう…!!潔から冷や汗がダラダラと流れ始めて絶望したように顔を真っ青にしています。
「ISAGIくん、ちょいええかな?あ、すこーしだけISAGIくん借るなぁ。皆先に進めといてな」
途中潔は、氷織にトレンドマークを掴まれてネフェ○ピトーに頭の中をぐちゃぐちゃにされるポッ○ルのように「あ…あっ…」と声を上げてどこかへ引きずられていく。その後ろ姿を烏はどこか遠くを見つめ、潔のこの先の未来を暗示てか祈るように手をかざす。そしてその烏を見て自然とそこにいた全員もれなく潔に手をかざしていた。
「ほんじゃ、俺からキスするな!!あ、お前の分もやんなきゃだから2回するから覚悟しとけよ!!」
「お、おう…さんきゅ?」
先程とはうってかわって、なぜか突然口ちゅーの相手を俺だと聞いた途端、元気になった千切は意気揚々と俺に笑いかける。え?何これホラー見させられてんの?ここまでの早変わり、ホラーでもそうそうねぇしマジで怖いから誰か助けてくれ…!と思って國神たちの方を見ると、この先の未来に絶望した2人がどちらが最初にキスするか、地獄のジャンケン大会を地獄の亡者のようにひっっくいトーンで行っていた。
「うわ……何あれ怖っ…」
流石の今日メンタルの千切でもあれは異常だとわかったのか、國神たちのほうをちらりと見てゲテモノを見るかのような目で2人を見守る。(※見守るではなくゲテモノを見ています)
「ま!俺達もあんな風にならねぇようにやっちまうか!!」
「おう…おい、なんかお前やけに張り切ってね??」
「んー?別にそんなことねぇけど?」
千切は得意のぶりっ子で何事も無かったかのように笑いかけて、数分前のゾンビを俺の記憶からなかったかのように最高の笑顔1つで記憶改ざんしようとしてくる。
「んじゃ失礼しまーす」
「んー」
俺が返事をして頬を差し出すが、なぜか千切は俺の頬をじっと見つめるだけ。なにしてんだ?と思って声をかけようとした瞬間、千切はマスクをグッと横によせ、思いっきり俺の頬を露出させて勢いよくキスしてくる。
「ちょっ!!!!ちgっ!!!!じゃねぇ!お嬢!!」
「おいおいREOくん〜?なーに本名暴露しようとしてくれちゃってんの?」
「間違えたんだよ!!それより何勝手にマスク取ろうとしてんだよ!!事務所NGだって言ってんd 」
俺が文句を言おうとした瞬間、千切は得意の素早さを活かし、目にも止まらぬ速さでまたもや軽く俺のマスクをズラして頬へ口付けをする。
「いっただき〜!」
「こっっの…!!!!」
千切に怒ろうとした瞬間、突然ドスッと何かが横から突進してきて思わずその何かと共に倒れ込む。
「っってぇ…!」
「あれま、REOだ。ごめんごめん、きんに君のキス顔見たら鳥肌立っちゃって思わず逃げてきちゃった」
「何もそこまで言わなくたっていいだろ…俺だってお前のキス顔見させられても鳥肌立ちながらうけたんだから…」
そう言って倒れ込んできた凪を、起き上がらせるために腕を掴んできたのは凪を震え上がらせた相手である國神だった。確かに男同士のキス顔を間近で見るのはかなりキツイものがある。え?その割には千切の時はキツイキツイ言ってなかったって?そりゃ、あの千切だぞ?あの美形美少女(男)だぞ?逆に見惚れるくらいの顔面偏差値だからキツイものなんて全くない。
「俺達はもう、終わっちまったから早くそっちも切りあげろよ?ご褒美にナギにはレモンティー後で入れてなるからさ」
「! わかった。絶対忘れないでよREO」
凪はそう言って差し出された國神の手を必要とせずさっさと立ち上がり、頬を早急に差し出してほっぺちゅーをものの2秒で終わらす。早すぎじゃねぇか?てかそんなに早く終われるんならご褒美いらなかったんじゃね…?と思ったが、凪がやる気になったようなのでスルーしていく。
そしてしばらくした時、少しだけ服に赤い何かがついた氷織と、頭からうっすらと赤い何かが垂れ、トレンドマークがヘニャヘニャになってしまった潔がやって来て10秒でほっぺちゅーを終わらす。何これ、専門業者?なんて、感じられるほどのスピードで終わらすので思わず感嘆の声が漏れる。
が、氷織が何やら覇王色の覇気のようなものを纏っているように見えたので、氷織を極力目に入れないように2人から目をそらす。
「さーて!最後の口ちゅーきたね!!REOっち!」
「おう!やっときたな!俺はやんないから楽しみにしとくな!!」
「うっっわ、ずりぃ…」
「ハッ!!なんとでも言うがいいさ!」
蜂楽の最後という言葉に調子に乗った俺は、疲れ果てた潔の声を王様のように蹴散らして無慈悲にもルーレットを回していく。
「おっ!!!きたぞ!」
俺の声にみんなが集まってきてスマホ画面を覗き込む。そこには_
『gmoj』(國神×千切)
『krrn』(烏×凛)
「「まぁいけるか」」
ルーレットを覗き込んで最初に発言したのはなんと國神と千切だった。まぁ二人は親子のように親しい友人だし、そのくらいはいけるだろうと思ったのだろう。平常心のままルーレットを見つめる。だが問題はこっちだ。
「おいREO、ルーレットをやり直せ。こんなやつとキスだなんて殺す気か?」
「ジブンら揃いも揃ぉて失礼やな!!!少しはオブラートに包むちゅうことを学び!」
まさかの逆ギレをする凛に烏は少し悲しそうにしながら怒る。烏の様子からなんだか同情してしまい、凛の逆ギレをききながらそっと烏を慰めるように肩を叩いてやると「アイツらなんなん!?!?先輩を敬うってこと習っとれへんかったん?!」と理解不能という顔をしながら異議を唱えてくるので思わず笑いそうになる。
笑いそうになるのをこらえてさっさとキスをやってもらおうと烏の背中を押してやっていたら、突然グイッと腕を引かれる。なんだ、?!と思ったのもつかの間、引っ張ってきた相手である凛は俺の背後にいつの間にか立っていて俺をぎゅっと抱きしめるように引き寄せ、カメラに俺が見えないような立ち位置をしてマスクをサッと外し俺の唇にキスをしてくる。
「なっ…?!?!?!」
烏が零した声はヒートアップした俺の耳に入らない、ただ一言。聞こえた言葉は_
「初キスは初恋相手にさせろって言ってんだろ」
という凛の声だった。
「RINのバカ!!!!!!!!変態!!!!!」
バチコンッッッッッッッ!!!!!と音を立てて凛に平手打ちをしてマスクを再びつけて撮影部屋を飛び出す。途中、千切や潔の制止の声が聞こえたが今はそんな暇は無い。なんで?なんでじゃねぇバカ!!!!!!こちとら初キス奪われたんだわ!!!
「もう!!意味わかんねぇって!!!!!」
そして、この伝説の配信をきになぜか凛含め開き直ったメンバーから、俺へ愛を伝える口説きシリーズが組み込まれたのはまた今度。
皆さん、更新長らくお待たせしてしまいすみませんでした!!そして見てくださっている皆様。とても励みになります!ありがとうございます!自作は凪玲にしようと思っているので、是非是非次作も見てください!
それと、字数18000字といつもよりも多めに書いちゃったので大変かと思いますが、ここまで読んでくださりありがとうございます!それではまた次回作で!
コメント
5件
あッあの~、このシリーズ続きは無いのでしょうか…?、
初コメ失礼します! 面白かったです!次回も楽しみ^_^
更新遅くなってすみませんでした!!!続きが思い浮かばずダラダラと数ヶ月ほど待たせてしまったこと。深く謝罪いたします!!!!自作の内容はもう考えているのであとはできるまでお楽しみに!!