テラーノベル
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「はじめまして、リオ・グランという者だ。君がこの物語の最初の目撃者ということになるだろう。異世界に来てからというもの、もう何年も経つが、今日からは僕の物語を聞いてもらおうと思う。」
リオ・グランは、異世界のどこかの小さな村の一角で、赤い髪と目を持つ青年として暮らしていた。彼の最大の特徴は、普通の魔法使いとは一線を画す“奇妙な”魔法の使い方だった。
「僕が使う魔法はね、ちょっと変わってるんだ。普通、魔法使いっていうのは呪文を唱えるでしょ?でも僕の場合、それはちょっと違う。」
リオが言ったその言葉には、自信と少しの誇りが滲んでいた。なぜなら、彼の魔法は他の魔法使いのように詠唱を必要としないものだったからだ。リオが魔法を使うとき、その動きや考えが魔法の発動を引き起こす。
例えば、手をパチンと鳴らすと、まるで指を鳴らした瞬間に周囲の空気が振動し、地面から花が咲き始める。その花は、リオの感情を反映した色や形をしており、時には空に羽ばたくこともあった。
「ほら、見て。今、僕がパチンとやると、また違った魔法が発動するんだ。」
リオが指を鳴らすと、周囲の空気が一瞬ひんやりと感じられ、地面からは小さな氷の結晶が浮かび上がり、空中でキラキラと輝きながら消えていった。
「これが、僕の魔法さ。呪文とか、道具とか、そんなものがなくても、ただ感じるだけで魔法が使えるんだ。でもね、どうしても使えない魔法がひとつだけある。」
リオの表情が少し曇った。その言葉には、彼の苦悩が垣間見えるようだった。
「それは、“時間を操る”魔法。どれだけ試しても、僕の魔法では時間を戻すことも、未来を見通すこともできないんだ。でも、だからこそ、僕はこの世界をもっと面白くしていきたいと思ってる。」
リオは自分の魔法が持つ不思議な力に感謝しつつも、それが持つ限界にも苦しんでいた。時間を操れれば、どんな困難でも乗り越えられるのに。未来を予見できれば、避けられる危険もあるだろう。でも、リオはそれを受け入れていた。自分の力には限界があることを。
その日、リオは村の広場で奇妙な依頼を受けることになる。
「リオさん、ちょっとお願いがあるんです!」
村の老婦人、エリナが慌てた様子でやってきた。
「どうしたんですか、エリナさん?」
「実はね、森の中に変な魔物が出てきて、みんな怖がってるのよ。もしよかったら、リオさんに魔法で追い払ってほしいんだ。」
リオは一瞬考え込み、エリナの顔を見た。
「分かりました。でも、普通の魔法じゃ面白くないから、少し違ったやり方でやってみますよ。」
「本当に!?あんたならきっと大丈夫だろうけど、変なことしないでね。」
リオはクスリと笑い、広場を離れて森へ向かう。
「さてさて、今日はどんな魔法を使ってみようかな?」
彼が森に入ると、突然、足元からザワザワと不穏な音がした。リオはその音の方を見やると、巨大なウサギのような魔物が出現した。その魔物は、体中に青白い炎をまとい、ただ歩くだけで周囲の草木を焦がしている。
「これはちょっと面白いな。『炎を操る魔法』…でも、ただ燃やすだけじゃつまらない。どうしようかな?」
リオはひとり言をつぶやきながら、魔法を発動させるための準備を始めた。彼が両手を広げると、空気が一変し、周囲の温度が急上昇する。リオの体から魔法の波動が広がると、青白い炎をまとった魔物は一瞬、動きを止めた。
その瞬間、リオは思いついた。
「よし、これだ!」
リオは両手をひらひらと振りながら、魔物に向かって指をさす。その瞬間、魔物は突然、小さな炎の玉になり、何もない空間をぐるぐると回り始めた。そして、その炎の玉がリオの周囲を漂い、彼の指示通りに自在に動き始めた。
「こんな感じでどうだろう?」
リオが嬉しそうに魔法を使うと、魔物は完全にその小さな炎の玉に包まれて、元の姿を失って消えていった。
「よし、これで終わり!」
リオは軽く手を叩いて、自分の魔法に満足げな表情を浮かべた。彼にとって、魔法の力を使うことは、ただの戦闘や解決手段ではなく、楽しむための一つの“芸術”だった。
「ふぅ、今回はうまくいったな。でも、次はもっと面白いことをしないとね!」
リオはそんな風に呟きながら、エリナの元に戻ると、あっさりと問題を解決したことを報告した。
「おお、リオさん、さすがだね!魔物も一瞬で消えちゃった!」
「ええ、まあ。ちょっと手を加えたけどね。」
こうして、リオの冒険は始まったばかりだった。
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