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20 - 第20話*演技派彼氏と雨の記憶*8

2025年07月15日

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***



「なるほど、あの顔は機嫌が悪い時なんですか?」

「……ん? なに?」


ひゅうひゅう、と吹く風の音が会話の声を聞き取りにくくする。

朝よりも格段に強くなった風、もはや暴風。

時々雷のゴロゴロとした、あの嫌な音が遠くで聞こえはじめてる。

まだ台風の時期ではないと思うのだけれど、本当に嫌な天気だ。


「いえ! ひとりごとですーー!」


風の音に負けじと、声を張り上げて答える。


「ちょっと雨も降り出してきたね。あ、柚、こっち」


慣れた動作で肩を抱き寄せ、歩く速度が早められる。 昨夜と同じ店の裏にある公園横に停められた車。

優陽がポケットからキーを取り出し、チカチカと光りながら鍵が開く機械音が何となく聞こえる。


「す、すみません、あの」

「どうしたの? 早く乗ってね、寒いでしょ」

「いえ、あの、優陽さんお仕事の途中なんですよね? 店長なら充分に私と優陽さんのことを信じてると思います」


そう、柚が話している途中。

開いてた運転席のドアをバタン、と勢いよく閉めて。

彼は背後にやって来た。


「うん? それで?」


肩に手を置かれ、耳元で聞こえる吐息混じりの囁き。

柚のパーカーの、やや厚手の生地を通り越し、指の感触を強く感じた。

なにやら力の入れ具合が恐ろしいなと、振り返ろうとした時だ。


「え、いえ……。 なので、ですね。 連日送っていただかなくても大丈夫です、って、ぎゃあ!?」

「ははは、ありがとう。 うん、とりあえず乗って」


突き飛ばされたのかと錯覚する勢いで助手席へ押し込まれた柚は、見下ろしてくる優陽を呆然と眺めた。この人、乱暴者だと思わず指を差したくなったのだけれど。


そんな柚の手を止めさせたのは、風になびく絹のように細くしなやかな優陽の髪。

薄暗い街灯をバックに綺麗なアッシュブラウンの髪が、さらりと揺れて、金色みたい。

そんなことが幻想的で、見惚れてしまうなんて。

イケメンは何かがやっぱり違うんだ。

目が合うと、ニコリと笑みを作りドアを閉め、数秒後には、その笑顔が隣に座る。


怒るにはタイミングを見失ってしまった。

顔がいいって本当に武器だ。


「き、昨日の恐ろしさに加えて随分、なんといいますか」

「ああ、ごめんね。 少し乱暴だったよね」


(少しでしょうか!?)



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