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壊れていたのは、あなただった

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壊れていたのは、あなただった

27 - 第27話 「救えなかった」

♥

21

2026年03月02日

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リビングは静まり返っていた。

スマホの光が消える。

なつは目を伏せたまま言う。

「……昔の話だ」

「昔って?」

いるまが聞く。

なつは少し考える。

「数年前」

それだけ。

でも、重い。

「仲間がいた」

静かな声。

みことが視線を上げる。

「そいつ、壊れかけてた」

笑わなくなって。

連絡も減って。

夜中に意味のない電話。

長い沈黙。

「気づいてた」

なつの指が、わずかに震える。

「でも、重いって思った」

部屋の空気が止まる。

すちの表情が消える。

らんも何も言わない。

こさめはいるまの袖を強く握る。

「俺が背負うもんじゃないって、思った」

距離を置いた。

既読をつけない日もあった。

電話を切った日もあった。

その夜-

なつの声が、ほんの少しかすれる。

「また電話、鳴った」

夜中。

名前が光ってた。

でも。

出なかった。

“明日でいい”って思った。

「次の日、そいつはいなくなった」

詳しくは言わない。

言えない。

でも、全員わかる。

軽い話じゃない。

「俺は助けられなかったんじゃない」

ゆっくり顔を上げる。

「助けなかった」

はっきりと。

言い訳なしで。

その言葉は、刃みたいだった。

いるまの胸がきしむ。

数か月前。

玄関で崩れた夜。

なつは言った。

“壊れたやつが立ち直る場所だ”

あれは誓いだった。

後悔から生まれた誓い。

スマホがまた光る。

【救えなかったくせに】

【ヒーローごっこなんてやめろ】

らんが低く言う。

「生きてんのか、そいつ」

沈黙。

なつの目が、ほんの一瞬だけ揺れる。

その揺れが答えだった。

みことが小さく言う。

「消えてないんだね」

なつは否定しない。

いるまは一歩前に出る。

怖い。

でも逃げたくない。

「……それで、今?」

なつは苦く笑う。

「多分、俺を壊しに来てる」

守る側のはずだった人が。

過去に、足を掴まれている。

静かな家。

でも、もう平穏じゃない。

数年前の夜が、

今、扉を叩いている。




夜はまだ静かだった。

リビングにいるのは、なつと、いるまと、みこと。

テーブルの上のスマホが、また光る。

表示名。

ゆう

いるまの喉がひくりと鳴る。

なつは、画面を見つめたまま動かない。

【出ないの?】

短いメッセージ。

追い詰めるみたいに。

みことが静かに言う。

「……その人?」

なつは、ゆっくり頷く。

「ゆうだ」

空気が重く落ちる。

こさめも、らんも、すちも、廊下から動けない。

なつが、スマホを握りしめる。

「数年前、一番近かったやつだ」

一番近かった。

その言い方が、過去形なのが痛い。

「俺が、距離置いた」

夜中の電話。

長い沈黙。

「めんどくさいって、思った」

その一言が、部屋を冷やす。

いるまの胸がぎゅっとなる。

なつは続ける。

「最後の電話、出なかった」

ゆうは何も言わなかった。

ただ、呼吸の音だけが聞こえていた。

それすら、うるさいと思った。

切った。

“明日でいい”って思った。

明日は来なかった。

「消えたんだよ」

なつの声がかすれる。

「俺から」

死んだとは言わない。

でも、いなくなった。

連絡先も消えて。

居場所もわからなくなって。

それで終わりのはずだった。

スマホが震える。

着信。

画面いっぱいに、ゆう

全員の視線が集まる。

なつの指が、止まる。

出るか、出ないか。

数年前と同じ分岐点。

いるまは、なつの手を見る。

震えている。

守る側だった人の手。

「……出ろよ」

らんが低く言う。

すちも小さくうなずく。

みことは何も言わない。

でも目は、逃がさない。

いるまが、そっと言う。

「今度は、明日にしないで」

静かな一言。

なつの目が揺れる。

呼吸が浅い。

着信が、あと数秒で切れる。

なつは――

指を、画面に滑らせた。

「……ゆう」

静まり返る部屋。

スピーカー越しに、息遣い。

そして。

「久しぶり、ヒーロー」

低く、笑う声。

冷たい。

あの夜とは違う。

壊れた側じゃない。

壊しに来た側の声。

なつの喉が鳴る。

「生きてたのか」

「残念だった?」

ゆうが笑う。

「俺さ、あの夜からずっと考えてた」

沈黙。

「なんでお前は、俺を選ばなかったんだろうなって」

いるまの胸が痛む。

選ばなかった。

なつは、何も言えない。

ゆうが続ける。

「今、楽しそうだな」

「居場所作ってさ」

その言葉に、いるまは顔を上げる。

知っている。

この家のことを。

ゆうは、全部見ている。

「なつ」

ゆうの声が少し低くなる。

「今度は、見捨てるなよ」

通話が、切れる。

沈黙。

なつは、立ったまま動かない。

過去は、消えてなかった。

ゆうは、生きている。

そして。

なつの“守る側”を壊しに来ている。

うらでひそかに、黒い物語が進んでいた…
























名前に関してはすまん…

てかべつのひとでてきちゃってるからなおさら

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