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ハル__。
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「……いらない。飲まない」
掠れた声で頑なに顔を背けるリョウガに、タクヤは深いため息をついた。
ツアーの過密スケジュールの合間、珍しく高熱を出して倒れたのはリョウガの方だった。いつもは飄々と周りの体調を気遣うくせに、いざ自分が倒れると「熱なんて寝れば治る」「水分? お腹タポタポになるからいらん」と小学生並みの理屈をこねて意地を張る。
「あのさぁ……脱水症状で点滴打ちたいわけ? 38度5分あんだよ? 黙って飲みなよ」
スポーツドリンクの入ったグラスを差し出すが、リョウガは布団を頭までかぶって拒否姿勢を崩さない。汗をかいて喉はカラカラのはずなのに、熱の浮遊感と気怠さのせいで完全に頑固な子どもモードに入っていた。
「……タクヤにうつるから、近寄んな」
布団の中から漏れたその一言に、タクヤの眉がぴくっと跳ねる。
「……はぁ? 理由それ?」
タクヤはグラスを手に取ると、一気にその液体を自分の口に含んだ。
そして、躊躇することなく布団を強引に引っぺがす。
「……っ、おい、タクや——」
驚いて体を起こそうとしたリョウガの頬を、タクヤは片手で強く挟み込んだ。
大きな手で逃げ場を塞ぎ、強引に自分の方へと顔を向けさせる。驚きでリョウガが目を見開いたその瞬間、タクヤは迷わず自分の唇を重ねた。
「んむ……っ!?」
拒む隙を与える間もなく、舌でリョウガの歯列をこじ開け、口内に溜めていた冷たいスポーツドリンクをゆっくりと流し込んでいく。
強烈な体温の差と、ダイレクトに伝わる喉の渇き。リョウガは咽びそうになりながらも、タクヤの強引で必死な熱量に押し切られるようにして、ゴクリとそれを飲み下した。
唇が離れると、銀色の糸が微かに引いた。
タクヤは息を整えながら、赤くなったリョウガの頬を挟んだまま、至近距離で鋭く睨みつける。
「……言っとくけど、うつるとかどうでもいいから。お前がさっさと治らない方が、俺は100倍ムカつくの」
「……っ、お前、ホント……そういうとこだぞ……」
熱のせいか、それとも今の強引なキスのせいか、リョウガの顔はさらに真っ赤に染まっていた。タクヤの残した甘い余韻と喉を潤す感覚に降参したのか、リョウガは大人しく布団の中に沈み込み、そのまま深い眠りについた。
それから二日後。
タクヤの手厚い(そして少々強引な)看病の甲斐あって、リョウガの熱はすっかり下がり、いつもの軽快な調子を取り戻していた。
「いや〜! タクヤ様のおかげで完全復活いたしました! 本日のリハも絶好調であります!」
楽屋で調子良く喋るリョウガを、タクヤはソファの隅からじっと見つめていた。……というか、身体が重くてまともに視線を動かすことすら出来なかった。
頭が割れるように痛い。視界がチカチカする。
「……タクヤ? どうした、静かだな……」
異変に気づいたリョウガが歩み寄ってくる。タクヤのおでこにそっと手を当てた瞬間、リョウガの顔から余裕が消えた。
「……っ、熱っ!? タクヤ、お前熱あるぞ! 38度は軽く超えてるだろこれ!」
「……うるさい、声でかい……」
「声でかいじゃねぇよ! なんで言わないんだよ!」
「……誰のせいだと、思ってんの……」
恨めしそうな目で見上げてくるタクヤに、リョウガはハッとした。あの日、逃げ場をなくすようにして交わした、あの強引で濃密な口移し。
「『うつるとかどうでもいい』って……本当にうつされてどうすんだよバカ……!」
「……バカって言うな……っ、」
タクヤは熱でうるんだ瞳でリョウガの服の袖をギュッと掴んだ。普段なら絶対に見せない、完全に弱りきった甘えた姿。
「……責任、取れよ……」
その掠れた声と力ない指先に、リョウガの胸がぎゅっと締め付けられた。
「取ろーじゃねぇか、責任。……おい、車までおんぶするぞ。家帰って、俺が今度は倒れるまで看病してやる」
リョウガはタクヤの細い身体を優しく抱き上げ、毛布でしっかりと包み込んだ。
あの日、強引に繋がれた二人の熱。お互いに体温を分かち合い、うつし合いながら深まっていく二人の『愛の感染ルート』は、これからもずっと、二人だけの閉じた世界で巡り続けていくのだった。
𝐹𝑖𝑛.
コメント
2件
毎話楽しませてもらってます💞ᩚ 本当に尊すぎる🤦♀️ᡣ𐭩
2人の熱のうつし合い、可愛すぎてにやにやが止まんなかったわ。普段飄々としてるリョウガが高熱で小学生みたいに頑固になるところ、タクヤに強引に口移しされてるのに「うつるとかどうでもいい」って言い放って、見事にうつされてダウン→「責任取れよ」って甘えるの、完全にグッときた。看病逆転のラストもあたたかくて、この2人の閉じた世界感、ずっと見ていたくなる。Fin.名残惜しい!