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・【16 鬼火事件】


墓地で鬼火が見えるから調査してほしい、という依頼が来た時、真澄は震え上がった。

撮り鉄の時もそうだが、基本的にオカルトは苦手らしい。

僕も得意じゃないけども、じゃあ無視すればいいと言ったら、

「でも負けられない! 始めれば得る!」

と叫んだ。別にオカルトには負けてもいいと思うけども。

とりあえず夕方、現場に着いた。

「ここが鬼火の現場……アタシ、震えてきた……」

そう寒気がしているようなポーズをした真澄。

それならば、と、僕は真澄の肩を優しく叩きながら、

「苦手なことからは全然逃げていいんだから帰ろう、こういうことはこういうことが得意な人がやればいい」

「でも! この震えは寒気かもしれない! 鬼火であったまる!」

「いやそんな無理の仕方はしなくていいから、鬼火で得してやろうじゃぁないんだよ」

そんな会話をしていると、一人のおばあさんが墓地の中に入ってきた。

僕と真澄は黙って見ていると、お墓の前におまんじゅうを二個置いた。

まあ普通に墓参りかと思っていると、真澄がおばあさんに話し掛けた。

「このおまんじゅう、ちょっと高いヤツですよね! アタシ好きです!」

いやおまんじゅうの値段はどうでもいいんだよ。そしてそれを好きですと突然言われたほうはどうリアクションすればという話だ。

案の定おばあさんは少し困った表情をしていたので、僕は、

「この辺りで鬼火が見えたという目撃情報があって調査に来たんです。おばあさんは何か知りませんか?」

と真澄のバカ発言をかき消すように、そう言うと、おばあさんはニッコリ笑ってから、

「鬼火ねぇ、そういうことはワタシャ分かんないよぉ」

まあそうだろうなぁ、と思った。おばあさんとの会話も終わり、おばあさんはその場を後にした。

さて、これからどうするか、僕は少し思ったこともあったので、真澄へ、

「一旦帰ろうか。また明日来よう」

と言うと、真澄は、

「明日じゃなくて今日解決してやる!」

と拳を突き上げたので、

「じゃあ夜までここで張ってるの? 夜の外出の許可、親からとってきた?」

「確かに! とってない! 今日は帰らなきゃ!」

「とにかく。明日来ればまた何か分かるかもしれないから、今日のところは帰ろう」

僕がそう言うと、うんと元気に頷いて一緒に家路に着いた。

鬼火なんてなんてことはない、こんな七月下旬に墓参りに来るということは多分そういうことだろう。月命日でも無い限り、きっと僕の考えていることであっているだろう。

次の日、昨日と同じ時間に墓場に着き、僕はすぐに昨日、おばあさんがお供えしていたおまんじゅうを確認した。

するとそのおまんじゅうは案の定、無くなっていた。

やっぱりな、と思っているとまたあのおばあさんがやって来たのも予想通りだ。

「また鬼火かねぇ?」

そう僕と真澄に話し掛けてきたおばあさんに僕は言うことにした。

「そのお供え物、誰かに盗まれていますよ」

その言葉に目を丸くして驚いたのは真澄だった。

「ど! どういうことだよ!」

でもおばあさんはあんまり驚いているようには見えなかった。

そりゃそうだろう、毎日おまんじゅうが無くなっているんだろうから。

一応僕は真澄に説明をし始めた。

「鬼火の正体は懐中電灯の明かりだよ、毎日ここにおまんじゅうがお供えされることを知っている誰かが夜に盗んでいるんだ」

するとおばあさんがフフっと笑ってから、こう言った。

「あぁら知らないのぉ? 仏様って本当にいるのよぉ?」

その言葉に背筋を凍らせるようにピンと驚いた真澄。

でも僕は冷静に首を横に振ってから、

「いいえ、これは人間の仕業です。貴方も分かっているんじゃないんですか?」

「いやいやぁ、仏様は本当にいるのよぉ?」

そう怪しく笑ったおばあさん。

何だが不気味だけども、僕にはやるべきことがあるので、会話はそのくらいにしておばあさんとは別れた。

おばあさんがいなくなったところで、

「真澄は今日、親から外出の許可をとった?」

「忘れてた! また明日だ!」

「いいよ、僕がもう終わらせるから」

「佐助一人で大丈夫か!」

「いや本物の鬼火相手に、じゃぁないんだよ。普通に相手は人間だよ。話し合いで解決するさ」

真澄はちょっと不満そうに口を尖らせていたけども、僕は真澄の両親から怒られるほうが嫌なので帰した。

さっ、あとは夜になるのを近くで待つだけだ。

一応鬼火が怖いという話だから止めさせないとな。

午後八時頃、懐中電灯の光が二個、墓地に向かって歩み始めた。

僕はササッと近付き、声を出した。

「お供え物泥棒、していますよね」

「「わっ!」」

驚く少年と少女の声。年齢は中学生と小学生くらいかな?

懐中電灯の光はすぐに僕の顔に向けられた。

眩しかったけども、気にせず喋ることにした。

「お供え物泥棒は犯罪なので止めたほうがいいですよ」

僕が冷静な口調だったからか、それとも僕もたいして大人じゃなかったからか、少年のほうがこう言った。

「うるさい! 大切な食料なんだよ!」

僕は逃げられても困るので、間髪入れずにこう言った。

「食料なら他にとってもいいモノをとればいい。もらえばいい。こういうことは少し年齢が上の僕に任せてください」

「とっていいモノをとる? もらう? 墓場にあるモノもとっていいだろ! 誰も食べないだろ!」

「それは仏様のモノです。それよりも食べ物は意外ともっと普通に手に入るものですから。僕が教えてあげますよ」

「本当か!」

懐中電灯の明かりをよりズイっと僕の顔に当てた少年のほう(多分)。

僕はあくまでゆっくり淡々と、

「まあとりあえず近くの公園で休みましょうか」

と言って僕は歩き出した。

その後ろを懐中電灯を持った少年と少女が追いかけてくる。

街灯のところまでいくと、思った通りその少年と少女はまだ若くて、中学生くらいの兄妹といった感じだった。

とりあえず公園の机のあるところに座らせて、自販機でジュースを買って渡した。

僕は口を開く。

「君たち両親はどうしているんだい?」

「真夜中に帰ってくる。いつもそうだ」

「食料はじゃあほとんど無いということ?」

「たまに菓子パンが置いてあることがある」

「水道やガス、電気が止められているわけではない、と」

それに兄も妹も頷いて、

「別にお金が無いわけじゃないらしい。いつも母親は綺麗な服を着ている」

それは誰かからもらっている可能性もあるなと思いつつも、水道やガスが生きているのなら教えることは簡単だ。

「野草を料理しよう。そうすれば食べることはできると思うよ」

「……野草?」

そう言って小首を傾げた少年。少女のほうも頭上に疑問符を浮かべているようだった。

「あとはそうだね、パン屋さんに行けばパンの耳ももらえると思うよ。あそこのパン屋さんからは昔僕はもらったこともあるし」

「パンの耳がタダでもらえるのか?」

「そう。あくまでご厚意で、だけども。事情を話せばもらえるようになると思うよ。だから、短絡的に犯罪へ走ってはいけない。じゃあ明日は土曜日だから休日だよね。待ち合わせ場所はここでいいよね、時間は午前九時とかでいいかな? そういうことでよろしくね」

ここは僕のペースで進めたいのでバンバン言葉を入れていく。

とにかく犯罪は止めなければ。向こうの予定はできるだけ聞かず、こっちのやりたいようにやる。

僕はこのタイミングでもう帰る準備をする。

たいした準備みたいなもんも無いんだけども、イスから立ち上がり、お尻を払ってもういなくなる素振りを見せる。

すると当然慌てたように、

「ちょ! ちょっと!」

と言うので僕はもうその場を去り、何歩か進んでから振り返り、

「明日の午前九時、ここ集合。忘れないでね」

と、あえて強い口調で言う。

こうすればもう完全にこっちのペースだ。あとは一切振り返らずその場を去る。

後ろから「ちょっと待って!」という声も聞こえたけども、追いかけてくる感じでもないので僕は歩く速度を上げた。

本当に困っていれば追いかけてくるはず。

それもせずに声だけなら、了承したと思っていいだろう。

僕は颯爽とその場を去った。


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