第3話:世界の過酷さ
旅を続けるユウは、次第にこの世界の過酷さを実感していた。
ある村では、戦で家族を失った少年が泣きながら道端に座っていた。
「…君、大丈夫か?」
ユウが声をかけると、少年は顔を上げ、涙で濡れた瞳をユウに向ける。
「お父さんもお母さんも…もう…」
言葉が詰まる少年を、ユウはそっと抱きしめた。
「大丈夫、ここから一緒に行こう。生き延びる方法はある」
別の町では、病に伏せる老人と出会う。手を握ると、老人はかすかに微笑む。
「…若者よ、生きることを忘れるな。戦に勝っても、病に負けても、命は一つしかない」
ユウは頷き、老人に持っていた薬草や食料を差し出す。
「ありがとうございます…あなたのような人がいるから、この世界も少しは希望があるのですね」
老人の声に、ユウの胸が温かくなった。
旅の途中で、ユウは小さな村の祭りにも立ち寄った。子どもたちは裸足で駆け回り、大人たちは笑顔を交わす。戦乱や病の影は消えないが、人々の中には助け合い、笑顔を忘れない力があった。
「…僕の願いはただ、寿命で死ぬこと。でも、こういう生き方を見ると、希望を守ることも悪くない」
ユウは丘の上に座り、遠くの村々を見下ろす。
「安らかに終わるためには、まず生きる。それが、僕にできる唯一の方法なんだ」
道中、傷ついた兵士や病を抱える女性とも出会い、彼らの話を聞きながらユウは学んでいく。
「命を軽んじる者が多いけれど、生き抜くことを選ぶ人は尊い」
心の中で呟くたび、ユウの中で「寿命で死にたい」という願いは、ただの願望ではなく、生きるための決意に変わっていった。
ある夜、焚き火を囲みながら、ユウは自分に問いかけた。
「この世界で、僕はどうやって生き延びるんだろう…?」
答えはすぐには見つからなかったが、仲間や人々の笑顔、助け合う姿を思い浮かべると、次の旅路への勇気が湧いてきた。
戦乱も、病も、まだこの世界には跡を残している。それでも、ユウは少しずつ歩き出す。
「まずは、今日を生きること。それが、明日へつながる」
そして、静かな夜の森に、焚き火の小さな光が揺れる。生きることの重さと尊さを、ユウは初めて肌で感じたのだった。
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