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3 - 御天道様に恋した人魚姫は

♥

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2024年08月26日

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☀️📱で奇病ネタ

※原型でも擬でも読めるよ

※初々しいよ

※死ネタじゃないよ

※ちゅーはあるよ

※行為はないよ

※荒川にまだゲロリオがあった時代に書いた作品だよ

※誤字脱字があったらごめんね

※おーけー?


🔅御天道様に恋した人魚姫は


 いつからか俺は太陽に恋心を抱くようになっていた。いつからだったかは正直に言うと覚えていない。長い間頼りになる仲間だと思っていた筈だったのに、その感情は意識する頃にはもう恋心へと変化していた。 自由奔放でめちゃくちゃで自分を神だと思い込んでいる、一言で言えばヤバい奴。なんで俺はあんな奴に惚れたのだろうか。一人で空に質問を投げかけてみても無論、答えは帰ってはこない。今日も今日とて誰にもこの思いを打ち明けれないまま、一日が過ぎていく。

 叶わない恋だとは理解している。太陽はきっと荒川のことが好きなのだ。長い間一緒に復興作業に務めてきた相棒で、お互いの癖をよく理解しているのだろうからきっと信頼としてではない情も湧いているのだろう。事実として太陽は荒川と一緒にいることが多いし、太陽が荒川に向ける目線は他の沼に向ける目線とはどこか違うものを感じるのだ。

「はぁ〜あ・・・」

 大きなため息をひとつつき、のそりと重い腰を上げる。最近はこの思いのせいでギャルゲにも集中できない。それなのにこういう時に限ってレア物ばかり出るのは何故だろうか。もう居ない筈のデアエールは俺を嘲笑っているのだろうか。

 半同棲状態のフサの廟堂からぼんやりと出てきて、深呼吸をする。そういえば、と 近頃バイト以外で外に出ることがあまり無かったことに今更気付いた。たまにはのんびりと散歩するのもいいかもしれない。そう考えた俺は、ぶらりと気の向くままに散歩に行くことにした。


 ざざんという波の音とふわりと漂ってくる潮の匂いではっとする。ここは何処だろうか。ぐるりと辺りを見渡せば、洋風なレンガ造りの建物が並んでいるのが見える。どうやらここはソーロットの町のようだ。確かここに来る前は、廟堂を出て、300ゲラ払って馬車に乗って・・・そのまま無意識にソーロットに来てしまったらしい。ここは太陽と荒川が復興作業に当たっていた場所。自分はどれだけ太陽が好きなのだろう。

「ストーカーかよ・・・まったく・・・」

 ガシガシと乱暴に頭をかいて、また前を向き、遠くに見える山脈をぼんやりと眺める。ぱしゃりと裸足に冷たい海水が触れる。温暖な地域とはいえ、海水は温まりずらいので昼間でも冷たい。しばらく海水に足を浸けていたが、少し冷たくなってきたのでそろそろ廟堂に戻ることにした。適当に水を払って立ち上がる。

「・・・帰ろ」

 もう分かりきっていることをボソリと口に出して、ソーロットの町を出た。出る直前に近くの家の屋根の付近から音がしたような気がしたが、どうせ鳥かなにかだろうと気にしないことにして、のそのそと廟堂に帰った。


 異変が起きたのはそれから数日後のことだった。俺がいつものようにマイドンランチでバイトをしていると、太陽、ウイエ、フサキン、シュミタロウ、シグキン、バチキン、氷虎が来た。どうやら金策でラップイヤドラゴンを倒しに行くらしい。

「おーおー、まあまあ珍しいメンツの団体だなぁ!死ね!!」

 俺のいつもの言葉にはもう全員突っ込むことは無く、軽く談笑しながら席につく。俺だって平静を保っているつもりだが、心拍数が上がっているのが事実。ただ太陽がいるだけ、いるだけなのだが、俺は一体どうしてしまったのだろうか。

「おら、注文いえやゴラ」

「態度の悪ィ店員だなぁ?」

シグキンが頬杖をつきながら俺を見上げる。それも今に始まったことではないので、スルーだ。

「じゃ、デアエールステーキ・グランデで」

「味付けは?」

「コッテリで」

「へいへーいっと」

 注文をメモし、厨房にいる便器に伝える。便器と呼べば、「便器って言うな!!」と怒られるが、根は優しい奴だ。アイツは料理の腕も一級品で、即料理を作っては、俺に渡す。なんかコイツの方が俺よりこのバイト向いてね?そんなことを考えながら、アイツらに料理を提供した。

「おら、注文の品だぞ」

「せんきゅ〜」

 シグキンはひらひらと手を振って俺を見送った。俺も他の客達に対応すべく、カウンターに戻った。しかし、戻っても特にやることは見つからなかったので、遠目からアイツらを観察してみた。食いっぷりはいいんだよな、食いっぷりは。速攻でステーキを平らげ八人揃って席を立ち、こちらに向かってきた。会計の為だ、分かってる。

「30000ゲラになりますぅ!!」

「へいへい」

 シグキンはどこからともなく、30000ゲラという大金を取り出して、俺に渡した。簡単に全額あるか確認して、レジに詰め込んだ。

「まいどありがとうございましたぁ!!」

「おー、お前も頑張れよ」

「ったりめぇだ・・・・・・!」

 「当たり前だろ」と返事を返そうとするが、いきなり声が出なくなってしまう。声を絞り出そうとしても、口から出るのは乾いた息を吸うような音だけだ。

「どうしたバチ、マリキン?」

「・・・・・・!」

 他の沼たちが何も喋らない俺を心配して、近づいてくる。バチキンが何回も何回も「何か喋るバチ!」と問い掛けてくるが、声が出ないのでどうすることも出来ない。痰が絡んでるわけでも、風邪を引いているわけだもない、原因は謎だ。

「マリキン、筆談は出来るかい?」

「!」

 声が出せないといち早く気付いたらしいウイエが自分のメモ帳とペンを差し出してきてくれた。流石ウイエ。頼りになる。

[声がでねぇ]

「声が出ない?風邪か?」

[違う!]

 書いた紙をシグキン達に見せながら、状況を説明する。とりあえず風邪は引いていないこと、ふざけているわけではないことは理解してもらった。

「ふむ、変なものを食べたとかはないか?」

 氷虎が腕を組みながら質問を投げかけてくるが、首を横に振る。拾い食いをした覚えは無いし、最近食べたものといえば、フサキンの料理とカップラーメンぐらい。フサが変なものを入れるとは思えないし、カップラーメンはいつも食べているメーカーのもの。賞味期限も切れてはいなかった筈だ。

「俺ほんとに変なの入れてないよ!!入れてなんのメリットがあるのさ!!それにこの前みんな俺んちで鍋パしてたじゃん!!あれ俺が作ってたし!!」

「まぁ、そうだよな・・・」

少なくともフサが原因ではなさそうだ。では、原因は何なのだろうか。

「取り敢えず、お前はバイトは早上がりしてオツキンのところに言ってくれ」

 バイトを早上がりすると言うことは、有給も使うし給料が減るということ。俺は石を買う為にバイトをしている。だから、給料が減るということは石の数に響くということ。だからあまり休みを取りたくないのだが・・・

「不服そうだね」

ウイエが俺の顔を見て突っ込んでくる。当たり前だろ。

「話は聞かせてもらったぞ!」

「お、お前は!便器!!」

「便器いうな!!」

 その時、俺たちの話を聞いていたらしい便器・・・いやvenきな子が顔?を出した。

「私が店長に話をつけて置いてやろう。声が出せないのなら接客は難しいだろうからな。」

「さっすが便器!!」

「便器いうなと言ってんだろ!!」

 きな子が蓋をパカパカさせながらシグキンを叱る。彼女は「治るといいな」と言い残し、奥に下がっていった。

「マリキン、ここは素直に彼女の好意に甘えたらどうだい?彼女なりにきっと心配してくれてるんだよ?」

そう言われ、仕方なくエプロンを外し、荷物を持って更衣室から出てくる。

「オツキンには連絡しておく。戦闘は問題なく出来るな?」

 肯定する代わりに、カードをシャッフルさせて見せる。氷虎は頷いてシグキン達と共にマイドンランチを出て行ってしまった。ウイエには直前にメモ帳とペンを返した。「まだ持っててよかったのに」と言われたがそれは申し訳なかったので押し付けるようにして少々強引に返した。太陽は俺のことを一瞬見ていたが、すぐに視線を外して去っていってしまった。太陽のことだからフル無視かと思ったのだが、意外だ。

(帰るか・・・)

 帰る際にもう厨房に戻ってきていたきな子に一礼し、マイドンランチを後にした。


 船や馬車を乗り継ぎ、ナナメ村に向かった。道中、特にエネミーに苦戦することも、スキルが使えなくなることもなかった。のんびりとした雰囲気のナナメ村に入り、右奥にあるオツキンの家に向かう。ガチャリとドアを開けると家主のオツキンと自分の大敵であるエクレアがいた。

「マリキィィン!!ここに来るような話を聞いたからスタンバイしていたらビンゴだったなぁ!?」

「〜〜〜!?!!??」

「辞めろエクレア」

 俺が声にならない叫びをあげているとオツキンがエクレアにげんこつを一つ入れた。エクレアは頭を抑えて蹲っている。俺は内心ナイスと思っていた。

「氷虎から話は聞いているぞ。声が出ないんだって?」

 オツキンの言葉に俺は首を縦に振る。オツキンは少しの間考え込むような素振りを見せた後、ぽんと手を叩いた。

「じゃあ、取り敢えず診察してみてようか。エクレア、一式を持ってきてくれ。」

「ほーい」

「マリキンはそこに座ってくれ。」

 オツキンに促されるまま、そこにあった椅子に腰をかける。オツキンとエクレアは特別仲が良い訳じゃないが、二人共この家の構造や、閉まってあるものをほぼ完璧に理解している。だからこそ出来る息の合ったコンビネーションだ。

「はいよ」

「ん、じゃマリキン、口を開けてくれ」

 オツキンの指示通り大きく口を開ける。オツキンはライトを取り出し俺の口の中の様子を確認する。

「次は、目を見るぞ。眩しいと思うけど我慢してくれ。」

 原因を解明しようと試行錯誤してくれる仲間の指示に背く理由はない。出来るだけ大人しく、黙って俺は診察を受けていた。


 一通りやる事が終わったらしいオツキンは自分のデスクの椅子に腰掛け、難しい顔で何かを考え込んでいた。時々エクレアがあーじゃないか、こーじゃないかとド素人には伝わらない次元の会話を繰り広げていた。二人で首を捻ってうーんと唸った後、オツキンは俺の方に向き直り、真面目な顔で話し始めた。

「マリキン、正直に言うぞ。すまないが俺たちでは分からない。」

「・・・・・・」

「声が出なくなる病も無くはないんだが、少なくとも私たちが知っている病気にはどれにも該当しなかった。」

 真面目に話すオツキンの横からエクレアが追加で解説を入れながら二人は俺にも分かりやすく説明してくれた。

「もしかしたら未知の病かもしれないし、新しい症状が出ているだけの既知の病なのかもしれない。」

「現地点では何とも言えない状態だな。少し経過観察しないと分からないっつうことだ。だってスキルの封印もMP、HPの変化も無かったんだろ?」

[無い。技術的な面にも変化は無かった。]

 オツキンから受け取った紙に文字を書いてそう伝えた。二人はまた首を傾げる。やはり分からないらしい。

「声帯にも異常はなかったし、心音も普通。本当に何が原因なんだろうな?」

「ともかく、原因が分からなかったら薬も出せない。だから私達では力になれない。すまんな。」

 珍しくエクレアがしゅんとして謝っている。このヤク中にこんな感情あったんだなと考えながら二人の肩に手を置いて、慰めた。

「大丈夫だってか?優しいな、お前はさ・・・とにかく!なんか変化があったら早く俺らのとこに来い!診察してやっから!!」

 オツキンが笑いながら俺の肩を叩く。エクレアは奥で煙管を咥えながら手を振っていた。吸ってるのは恐らく(いやほぼ確定で)ヤクだろうから、出来るだけ吸い込まないように足早にナナメ村を後にした。


「あ!!マリちゃーん!!大丈夫!?なんて言われた!?」

 廟堂に帰るや否やラップイヤドラゴンの討伐から戻ってきていたフサが俺を見つけて駆け寄って来て、結果を聞いてきた。メモ帳は持っていなかっので、分からなかったという意図を込めて首を横に振った。

「え!?マジ!?嘘ぉぉ!?オツキンでも分かんないんだったらもうお手上げじゃあん!?」

 フサが大袈裟なリアクションで肩を落とす。「取り敢えず上がって」と言われたのでそれに従って中に入った。

「で、大丈夫なの?なんの病気かも分かんないし、治療方法も分かんないんでしょ?」

[声が出なくなる以外は弊害はないけどな]

「それでも、だよ!!本当にどうするのさ・・・」

 フサは頭を抱えて悩みこんでいる。そこまで心配することでも無いと思うが。まだまだ俺は全然元気なのだが。

「と、り、あ、え、ず!!マリちゃんはそれが治るまでバイトお休み!!うちで療養生活をしてもらいます!!」

 俺は今恐らくとてもげんなりとした顔をしているのだろう。それを見てフサのバッテンが伸びる。怒っていることは一目瞭然だった。

「もう!!こんな時まで課金なの!?ダメダメ!!ほら!ご飯食べれる!?食べれるよね!?」

 強制的に休むことが確定してしまい、フサによってバイト先には一週間ほど休暇の連絡を入れられた。最近まで引きこもりだったくせになんでそんな機械に強いんだという文句はしっかり飲み込んで、今は療養生活に集中することにした。


 それからたった三日後の事だった。色々な沼たちが俺の様子を見に来たり、病名を突き止めようとしてくれたがそれらは全て空振りに終わってしまった。未だに声は戻らないが、相方のお陰でまあまあ充実した日々を送れていた。

 廟堂に構えている自分の部屋の窓から差し込む朝の日差しで目が覚める。まぁいつもの天井だった。ゆっくりと重い体を起こして居間に向かう。時間は八時ほど。この時間帯ならばフサは起きているだろう。ぼんやりとする頭で足に指示を出し、欠伸をしながら歩く。居間に続く襖を開ければそこに丁度、座布団に座ったばかりのフサが居た。

「あ!おはよう!マリちゃん!今日のご飯は・・・・・・」

 フサはそこまで言ってピタリと動きが止まってしまった。目を見開いて俺を指さしている。失礼な奴だな。人に指差してはいけませんって習わなかったのかよ。

「マ、マリキン・・・む、胸の・・・心臓の辺り・・・それは・・・鱗?」

 フサに言われ、胸の辺りに視線を落とす。そこには胸、心臓の辺りを覆う水色の鱗があった。魚類のような人魚のような鱗。それが胸元を覆っていた。

「・・・・・・!?」

「驚くのワンテンポ遅くね!?ど、ど、ど、どうしよう!?ま、まず、まず!!オツキンに連絡!?」

 フサが慌てて、スマホのようなものを取り出して震える指で通話ボタンを押す。かなり慌てていたようだったので間違えてオツキンでは無く、太陽に電話をかけてしまったらしい。しかし、フサはそれに気付かず、何故かスピーカーモードにしたまま喋り出した。

「オツキン!?マ、マリキンがヤバくてさ!?ちょっと来てくれない!? 」

「え????何ですか????俺オツキンじゃないんですけど?????何なんですか!!???」

「じゃ!よろしく!!」

 フサは太陽に返事をさせることなく、電話を切ってしまった。声が出ないし、今近くに紙とペンはない為、間違いを伝えることが出来ない。ヤバいなコイツ。

「良かったね!マリちゃん!!オツキン来てくれるって!!」

 自分の病のことも忘れて思わず眉間を抑える。フサは頭が痛いのか、とこちらを心配しているが、全くもって見当外れ。マジで大丈夫かコイツ。その約五分後、入口の方からドタドタと音がして、オツキンとエクレアと氷虎が入ってきた。その後ろには頭の後ろに手を置いて歩いて来る太陽がいた。瞬間、心拍数が跳ね上がるのが分かった。生娘かよ!クソッ!!

「太陽から聞いたぞ!マリキン!大丈夫か!?」

「え!?なんで太陽が知ってんの!?!?」

「お前がテンパって俺に電話かけてきやがったんだよブァァァァカ!!!」

 こちらに駆け寄ってくる三人は早速俺の診断に取り掛かった。フサは太陽に間違い電話したことに本当に気付いていなかったらしく、言い争いが始まってしまった。その時心にもやりとした物が浮かんでくる。嫉妬だろうか、嫉妬だろう。そんな物が心に浮かんでくると胸元の鱗がピキピキと広がっていった。

「うおっ!?増えた!?」

「ヤバ、現在進行形じゃねぇか!?」

オツキンとエクレアが声を上げて驚く。それに反応した太陽とフサも俺の鱗を覗き込みに来た。

「うわ、半魚人???魚???」

「綺麗なんだけどなぁ・・・」

 水色の鱗は光に照らされ輝いている。五人が物珍しそうに見つめるなか、オツキンが話を切り出した。

「とにかく、検査するぞ!検査!!この鱗は触っちゃ・・・ダメだよな?」

「あぁ、未知の病なんだ。触って感染したら元も子も無いからな。」

 三人は厚い手袋をつけて、そっと俺の鱗に触れる。触られている感覚はある。だが不思議な感覚だった。

「痛くないか?」

オツキンの問いに首を縦に振る。

「痛みはない、と・・・」

 エクレアが手袋を外し、メモ帳にメモをとる。太陽とフサは黙ってその様子を見ていた。この前のものとほぼ同じ内容の検査を受け、解放された。その間にも少しずつ、少しずつ、鱗は俺の体を蝕んでいった。

「おい!!!!カルテ見せやがれください!!! 」

「うるさっ!?ま、まあいいけど・・・」

 その時、急に太陽が大声を出し、エクレアの持っていたカルテを覗き込む。しばらくじっとカルテを見つめ、顔を上げた。

「ふ〜〜〜〜ん???なぁ〜〜んか聞いた事あんだよなぁ〜???」

「ま、マジか!?教えてくれ!!!なんの病気なんだよ!?」

 オツキンが食い気味で太陽に掴みかかる。太陽はすぐにオツキンの腕から抜け出し、読めない顔で話を続けた。

「忘れちゃたよ〜^^お前らがイキリトラ時代の記憶消したせいで!!」

「あ〜・・・それは・・・スマン・・・」

「てことで!!俺は小屋に籠るから!!じゃ!!!」

 太陽はそれだけ言い残し足早に去っていった。氷虎が『イキリトラ』というワードに少しだけ反応したが、今はそんなことどうでもいいらしい。

「ふむ、太陽が知っているかもしれない、か・・・」

「じゃあ最後の頼みの綱は、太陽の知識・・・ってことか・・・」

オツキンが腕を組んで考え込む。

「流石、フワンソーワを瞬間卒業した実力者だな。知識の格が違うぜ・・・!」

エクレアが若干オツキンと氷虎をディスりながら太陽を褒める。なんだその独特な褒め方は。

「エクレアそれ、俺らをディスってるのか??」

「そぉ〜んなことないんじゃね〜???」

エクレアがわざとらしく目を逸らしながら否定する。悪気はあんのかよ。

「とにかくこっちでも色々調べてみるから、お前は絶対安静だ。いいな?」

 氷虎に言われ、流石に大人しく従うことにした。声が出なくなり、鱗が生えてくる未知の病。俺も怖いし、今バイト先に言っても追い返されるだろう。何かあっても嫌だしな。

「文句は無しだ。フサキン、引き続きマリキンをよろしく頼む。」

「う、うん!任せて!!何か会ったら連絡するね!!」

 氷虎はフサキンに頭を下げ、俺の肩を叩いてオツキンとエクレアと共に廟堂を出て行った。鱗はじわじわと俺の下半身に向かってまばらに広がっていく。水色の美しいこの鱗。病の証でもあるこの鱗。これが全身に回ってしまったら俺はどうなってしまうのだろうか。

「ねぇ、マリキン、大丈夫?顔色良くないよ?」

 フサキンが俺の顔をなぞり、目線を合わせて俺に話しかける。どうやら顔から血色が抜けていたらしい。少し心配になっただけで、大丈夫だ。そんなことより自分の心配したほうがいいんじゃないか?お前にも移す可能性はあんのに。どこまでも優しい奴だ。

「今マリちゃんさ?『俺の事より自分のこと心配しろって』思ったでしょ?ダメだよ、そんな自分を犠牲にするようなこと考えたら!お前いっつもデアエリス止めるくせに、これはいいのかよ?」

 なんだコイツエスパーかよ。確かに同じようなことは考えたが、それとデアエリスは別物だろ。そんな恨みたっぷりの視線は届いたようで、フサは自分で言い出しておいて気まずそうに目を逸らして話題を変えた。

「ほ、ほら、ご飯食べよ!ご飯!まずはマリちゃんの健康第一だし??」

 わたわたとキッチンに走っていくフサ。コイツはやっぱり見てて飽きない面白い奴だ。俺はやれやれとため息を吐きながら座布団に座りこむ。台所で準備をしているフサを見ながら、手元のスマホのようなものに目を落とした。


 それから一週間後。俺の胸元に出現した鱗はどんどん俺の下半部を包みこんでしまっていた。もう立つのにも一苦労で鱗のせいか、足が動かなくなり始めていた。だから最近はフサによって年寄りのような介護生活を送っていた。飯は俺の部屋まで持ってきてくれるし、外に出る時にはどこからか持ってきた車椅子で俺を連れ回していた。始めの方は自分でも歩こうと努力していたし、幾らかは歩けた。しかし、今はほとんど歩けないし、動けない。俺は ベッドの上でだらだらと一日を過ごす日々が続いていた。

「マリちゃ〜ん、おはよう。体調どう?」

 俺の部屋の襖が開きフサが入ってくる。

[足動かない以外は元気]

「やっぱりかぁ〜・・・日に日に広がっていくよねぇ・・・」

 今の体調や状況を書いた紙をフサに渡す。渡された紙を見ていつものように首を捻っている。あれからオツキン達からも太陽からも新しい情報は来ていない。アイツらで分からなかったらもうお手上げなんだけどな。

「オツキン達からも連絡来てないし、検査には来てくれるんだけどね〜・・・」

俺が思っていたこととほぼ一緒のことをフサが口に出した。なんだ?コイツと俺は双子だったのか?

「ご飯は?食べれる?」

 お盆に乗ったお粥とスープを俺の前に差し出した。相変わらず食欲はあるのですぐに飯をたいらげ、お盆と食器をフサに返した。

「食欲はあるのにね〜?俺、お盆と食器片付けてくるからさ、終わったら散歩行こ!太陽光浴びないと不健康になっちゃうよ!」

 フサはそう言い残し、俺の部屋を出て行った。まあ、いつもの光景だ。俺が歩けなくなってきてからもフサは俺をやたらと外に連れ回したがる。確かに外に出ないと自律神経がダメになるとはいうが、そこまで心配することなのだろうか。その時、俺の部屋の襖が勢い良く開いて太陽が入ってきた。

「おい!!!!!!起きてますか!!!!?????」

 うるせー!!と突っ込もうとするが、声が出ない。そういえば声が出なくなったのが事の発端だったことを思い出していた。

「おめーが喋らないと静かでいいですねぇ!!??てことで、おめーの病気が分かった。 」

「!!!???」

 唐突のカミングアウトに体が跳ねる。オツキン達より先になんでアイツが来るんだよ・・・太陽は俺の枕元にある椅子に腰掛け、真面目くさった顔で話始めた。

「病名、泡沫症候群。俗に言う奇病の一種だ。発症条件は〈1〉強い恋心を抱いている相手がいる。〈2〉その恋心に絶望している又は諦めている。〈3〉想い人に嫌われている又はそう思い込んでいる。1、2、3、全ての条件に当てはまる奴が本物の海を自分の目で見ることで発症する病だ。」

 淡々と語られる太陽の言葉に耳を傾ける。奇病。珍しい病。恋煩い。色々なワードがぐるぐると頭の中を回っている。

「初期症状は声が出なくなる、次に心臓の辺りから下半身に向かって鱗が生えてくる。次に想い人に対しての気持ちが宝石になって涙みてーに目からこぼれ落ちる。最後までこぼれ落ちると白い宝石が落ちる。こいつが出てきてちまったら、お前に関する物、記憶は全て保持されたまま、一日かけて泡になって消えちまう病気なんだと。」

泡になって消えてしまう病。ああそうか。確かに俺はあの時ソーロットに行って黄昏ていた。まさかそれが発症条件になってしまうなんて。

「治癒方法はねーけど、完治条件ならある。それは、『心からの愛情のキスを想い人から受ける』ことで治るらしい。成功すれば虹色の宝石が目から流れるらしい。」

愛する人からのキスで治るなんて、どこの眠り姫だよ。でも、俺の病はきっと永遠に治らないだろう。叶わない恋。まさにその通りだ。死にたくないという気持ちはあったが、もう治らないだろうよ。

「確定打になったのは寿司がお前がソーロットに来て黄昏てるのを見たっつったから。屋根の上から見てたんだとよ 」

あの時屋根の辺りからした音の正体は荒川だったのかよ・・・

「で???お前好きな人いんの??」

「・・・・・・」

 俺はすっと顔を逸らす。なんで好きな奴から「好きな人いる?」なんて聞かれねぇといけねぇんだよ!!

「ふ〜〜〜〜ん???ま、早めに告ったらどーなの???あ、お前今声でねぇんだっけ???」

 分かりやすくこちらを煽ってくるような素振りを見せる。もはや怒りを通り越して悲しみが湧き上がってきた。病気のせいで精神が不安定になっているのか、じわりと湧き上がってくるものがあった。なんとか飲み込もうとするが、ダメだった。

「あ???」

 ポロリポロリと目から淡い水色の宝石が涙のように零れ落ち始めた。じくじくと心が痛むのを感じる。宝石が出ること自体は痛くないのに。

「それ、想い人に対する感情なんだと。だから零しすぎっと精神的苦痛を伴うんだとよ。」

 んなことなんとなく分かるわボケ!!声を上げたいのに上げれない。気持ちを伝えれば終わる話。なんならもういっそ当たって砕けろ精神で告白すればいいのだ。なのに、なのに、勇気が出ない。ボロボロと宝石は止まらない。

「ぜんっっぜん止まんね〜し、何振られた???好きな人に振られた???」

 好きな人はお前なのに。ここにきて誰にもこの気持ちを話していないという弊害のツケが回ってきた。今言ってもコイツは対応してくれるのだろか。

「おら、神が伝えといてやるよ。書け。」

 太陽が俺の枕元にあったメモ帳とペンを俺に差し出してくる。フサがコミュニケーション取りやすいように、と置いていったものだ。しかし、手が震えてペンを持つ気にもなれなかった。太陽はじっと俺を見て待っている。太陽のことだから急かしてきそうなもんだが何故だろうか。

「書けねーの?」

 太陽の問いに静かに頷く。威圧的なオーラを纏っていたが、特に怖いとは思わなかった。伝わらないとは思ったが、ゆっくりと太陽を指さした。好きなのはお前。他の奴じゃない。

「は????何???なんで指差すの???失礼なんですけどぉ!!??」

 伝わらない、か。まぁ太陽だしな。俺はヘラヘラと笑って頭を枕に沈める。太陽はこめかみに薄く青筋を立てていた。沸点が低い太陽だからな、と考えながら太陽を見た。うさぎのごとく、足を不機嫌そうに鳴らしていた。

「はぁ〜~~~???なんなんお前???俺は!!神ですよぉ!!??」

 良かった。いつもの太陽だ。太陽はそれだけ叫んで不機嫌そうに部屋を出ていった。太陽が閉めずに出ていった襖から入れ替わるようにしてフサが入ってきた。

「なんとな〜く聞いちゃいけない気がしたから外にいたけど、病名分かったんだね。泡沫症候群か・・・聞いた事ない病気だなぁ・・・」

 なんで聞いてないのにその病名を知っているのか謎だったが、外に出てきた太陽から聞いたらしい。

「しっかし、太陽大丈夫?何時にもまして顔赤かった気がするけどさ?怒ってたのかな?」

 顔が赤くなっていたってマジ?マジでブチ切れてたのかそれとも、あのジェスチャーの意味が伝わったのか。本人の顔を見ない限りには分からないが、恐らく前者だろう。しかし、何故?

「宝石も出てきちゃったってことは、もう足は動かないのか・・・」

 フサに指摘され、足を動かそうと力を入れてみるが、確かにまったく感覚がない。そこにあるだけ、神経が通っていないような、そんな感じだった。

「確かに動かないみたいだね・・・とりあえず、散歩行こっか!伝染る心配も無いって分かったし!!」

 フサが車椅子を出してきて俺を抱き抱えて椅子に乗せた。久方ぶりに触れられた自分以外の体温は少し熱かった。


「どう?お外は?」

 カラカラと音を立ててフサが車椅子を押す。柔らかな日の光が差し込み、自分の体を温める。いつも見ている風景のはずなのに今日はまた一弾と綺麗に見えた。俺の心境的には曇っててもよかったとは思うけどな。

「マリちゃん今、マイナスなこと考えたでしょ?」

 だからなんで分かんだよ。そう思いつつ、景色に目線を戻す。清々しいほど晴れ渡った空。とてもいい天気で心地よいが気分は晴れない。

 ポロリと目から一粒の宝石が落ちた。フサが慌ててそれを手で受け止める。涙の形に光る水色の宝石。これが全部零れ落ちた時、俺は消えてしまうと分かっていても受け止められない。受け止めたくない。

「わわっ!?大丈夫!?」

 俺がボロボロと泣き始めてしまったことで散歩は終了。フサが急いで踵を返し、俺を廟堂の中に連れていった。中に入ったらすぐに涙は止まった。俺の部屋まで車椅子を押し、ベッドにそっと寝かせてくれた。本当に申し訳ない。

「聞かされたばっかりでびっくりしてるんだよね?大丈夫!きっと治るって!」

 俺の背中を優しく撫で落ち着かせようと務めてくれるフサ。フサの言う通り不安定になっているだけなのかもしれない。いつ宝石が、涙が出てくるのかはなんとなく予測は出来る。でも分かっていたとして簡単に止めれる訳ではないのだが。

「もう少ししたら、落ち着いてくるかもしれないからさ?」

 俺が弱々しく頷けば、フサは笑って俺の部屋を後にした。あと少し、少しだけ早くこの病気のことを知れたなら・・・太陽に気持ちを伝えることができたなら・・・俺が臆病なだけだったのだ。また、宝石が落ちてくる。これが落ちれば落ちるほど、俺は太陽に対する感情を忘れてしまう。好きだったということも忘れて泡になって消えてしまうのだ。こんなのまるで人魚姫じゃないか。あれは物語の世界の話じゃないのかよ。

 悪態をついても何も変わらない。今の俺に出来ることはできるだけ宝石をこぼさないように延命をすること。そして、死期を予測することぐらい。なんて、なんて、惨めなんだろうよ。嘆いたって何も変わらないのに。行動に、言葉に示さなきゃ意味がないのに。これ以上考えてもきっとマイナスな思考で頭が支配されてしまう、そう感じた俺は頭から布団を被って夢の世界に潜った。


 それから一週間後。とうとう出てしまったのだ。「白い宝石」が。不透明のぼんやりと白い宝石。ミルクのような柔らかい白が結晶の中で渦巻いている。これが出てしまうとその後一日かけて泡になって消滅してしまうらしい。

 真っ先に他の沼に連絡したのはフサだった。たまたま俺の目から宝石が出てくる場面を目撃してしまったのだ。酷く動揺しながらバタバタと全沼に連絡をとった。無駄に情報網広すぎだろアイツ。

「マリキン!!!!大丈夫!!??」

 連絡し終わったらしいフサが急いで俺の部屋に転がりこんできた。ボロボロと俺以上に涙を流しながら俺を固く抱きしめてきた。苦しいっておい。

「あぁ・・・もう足先とか無くなっちゃったね・・・」

涙で顔をベチャベチャに濡らしながら「ごめんね、ごめんね」と必死に謝ってくる。何謝ってんだよ。俺のせいなのに。

 フサが連絡した三分後ぐらいには廟堂に十七沼全員が集合したらしい。俺の部屋の襖は閉まっていたが、泣き声、嗚咽、怒ってるような声など色々な感情の声が聞こえてきた。ぐすぐすと鼻をすする声に混じって、アイツらが何か話しているのが聞こえてきた。少し話した後、足音が一つ聞こえてきた。それは俺の部屋の前で止まり、襖を開けた。フサだった。

「マリちゃん・・・ねぇ、聞いて。皆それぞれ十分、お前と話すために十分貰ってるの。十分話して交代。いい?、分かった?」

 十分て、個人面談かよと思いながら頷く。俺を見上げているフサの目元は真っ赤でどんだけ擦ったんだよと内心思っていた。

 それから確かに十分ぴったりで立ち替わり入れ替わり他の沼達が入ってきては、俺に対する気持ちをぶち撒けていった。枕元に物を置いていく奴もいた。バチキンはポッキー、氷虎はラーメンとりんごジュース、オツキンはマザイ、エクレアはヤク(ふざけんな)、ウイエは絵を、フク郎は魔道書を、荒川は寿司、カシキンはダークマターと言う名の手料理を、あづキンは花を、シュミタロウはスイーツを・・・といった具合で置いていくので、もうぎゅうぎゅうだった。

 そして、最後。最後を飾るのは太陽だった。コイツなんて俺に興味無さそうなのに来るだけ来たのかよ。そう思いながら太陽の出方を見ていると、太陽は俺の横に置いてあった椅子に腰掛けた。太陽にしては妙に静かで何処か不気味だった。

「よォ、死ぬんだってな」

それがなんだよ。結局治らなかったんだから仕方ねーだろ。

「へっ、弱虫の臆病者がよ。じゃ、最後にこの太陽神様が情けをかけてやるよ。」

情け?コイツそんなの言うタイプだったか?てか最初の弱虫の臆病者ってなんだよ、おい。太陽は姿勢一つ崩さずに続けた。

「お前さ、俺が病名伝えに来た時に俺のこと指差したの覚えてる??? 」

あー、そういえばそんなことしたっけ。今思えば何をしたかったのかはよく思い出せない。

「あれ、なんかのハンドサインみてーなやつなんじゃねーかと俺なりに考えて見た。そして、一つの結果に辿り着いたんだよ。」

結果?それはその時の俺が思ってたことだろうか。でも、もう手遅れだろ。見ろよ、俺の体。もう足ねーぞ?

「心して聞け。」

何を聞けってんだよ。心の中でツッコミをいれ、悪態つきながらも太陽の声に耳を傾ける。

「”マリキン。好きだ。”よく考えれば俺から告ればすむ話だったんだよ。んなこと分かってたんだけどよ・・・スマン。」

 は?好き?誰が?太陽が?俺・・・を?後半になるに連れ、太陽の声はどんどん尻すぼみになっていく。普段の太陽からは考えられない言葉だ。その時、もともと泡になり始めた時から止まらなかった涙がより一層強くなった気がした。塩水の涙に混じってポロポロと落ちていく小粒の宝石。この感情はなんだろう。胸の奥が暖かくて、なんだか嬉しくて・・・

「何泣いてんだよ。喜べよ。」

 低く、優しく、柔らかい太陽の声。なんだか目線も合わせられないような気がしてそっぽを向いた。こんなに暖かい気持ちになったのに俺は、俺は消えてしまう。太陽の気持ちを裏切ってしまうことが嫌で嫌でたまらなかった。

「お前、もう生きること諦めてんだろ。は〜・・・人の話を聞いてなかったんですかぁ!!??この病の治癒方法、俺言ったよな?」

 頬を片手で捕まれ強制的に目線を合わされる。いつものニコニコした顔の太陽と涙で顔がぐしゃぐしゃな俺。対称的すぎる二人。太陽は、一呼吸置いてから再度話し始めた。

「”心からの愛情”のキスを想い人から受けること。それがたった一つの治療方法だって。」

 瞬間、太陽の顔が近づき、口に柔らかいものが触れた。キスをされたのだ。と理解するまでには時間を有した。

 すっとすぐに太陽は顔を上げた。短かった、でも、とても満足そうな顔だった。じわりと胸の底から暖かいものが込み上げてくる。涙と似ているが何処か違う何か。ポロリ。俺の目からその何かが零れ落ちた。太陽が椅子に座ったままそれを拾い上げた。七色に光る虹の宝石。それは今までみた虹のなかで一番綺麗だった。

「”虹色に光る宝石が零れ落ちる”ことが、完治条件だ。つまり、両思いになることで治る病気、そう俺は言った。後は分かるな?」

 治ったと同時に太陽と両思いになったということ。治った。治ったのだ。俺は・・・死ななくて済んだのだ。病気は治った筈なのに涙が止まらない。宝石はもうでない。体は泡になるのを止め、少しづつ、少しづつ、泡になる前の鱗が見え始める。こんな奇跡あっていいのだろうか。太陽は俺の上半身を支えて背中を優しく撫でてくれている。太陽の手の暖かさはまるで春の日差しのようで、とても安心できた。

「太陽!!大丈夫!?時間になっても出てこないから心配で・・・マ、マリちゃん!?体起こして大丈夫なの!? 」

 俺の部屋の襖が開きフサが入ってきた。ボロボロ泣く俺を見て、太陽に様子を聞いていた。

「た、太陽?マリキンどうしたの・・・?まさか、泣かせた!?」

「ちげーよ!!カス!!!治ったんだよ。」

「な、治ったって、ま、まさか!?」

「そのまさかだ。病気、治ったんだよ」

 太陽が淡々と状況を説明している。フサは太陽の説明を聞いて、数秒間フリーズしていたが、やっと理解したようで嬉しそうに飛び跳ねながら騒ぎ始めた。

「治った!?治ったの!?やったぁ〜!!!!!良かったねぇ!!マリちゃん!!!」

 苦しい、フサ、苦しいから。俺を固く抱きしめながら、俺の肩の辺りで号泣しだした。嬉し泣きなんだろうけど、流石に泣きすぎじゃないか?脱水になっちまうぞ?俺の肩がフサの涙でびちょ濡れになり始めた頃、居間の方からドタドタと音がして、他の沼達が入ってきた。

「フサキン!!マリキン治ったって本当バチか!?」

「マジだよ。ほら。」

「これは・・・完治条件の宝石じゃないか!ということは治ったことは本当になんだね。」

 ウイエの言葉を聞いた他の沼たちも嬉しそうな顔で俺に飛びついてきた。嬉しいという気持ちを抑えきれない者、嬉し涙で顔がぐちゃぐちゃな者、後ろで滝のように涙を流している者と、色々だった。

「良かったバチねぇぇぇぇ!!!!!私、私はもうマリキンは死んじゃうんバチと・・・」

「良かったなお前ェ!!」

あづキンとバチキンが俺の背中をバシバシと叩いてくる。痛い痛い。

「そういえば、条件は”心からの愛情”のキスを想い人から受ける、だったが・・・太陽?」

 シュミタロウの言葉に全員の視線が太陽に向く。太陽は椅子の上で足を組みながら特に動揺することなく口を開いた。

「俺が想い人ってこと。てことでコイツは今日から俺の嫁。手ぇ出すなよお前ら。」

 まだ付き合いもしてねぇのになんで嫁とか言い切るんだよ!!そう思いっていても声が出ない為、反論ができない。でも両思いになったのは事実、そういった意図を込めて頷いた。俺の反応から嘘ではないことは全員分かったようだ。

「おめでとうマリキン!式はいつ上げるんだ!?」

「気が早ェよ」

 ホントに気が早ぇよ。嬉しそうに俺の手をとり、質問してくるフク郎。ぐいぐいくるフク郎をシグキンが引き剥がす。まったくなんで結婚する前提で話を進めるんだコイツらは!!

「と、に、か、く!!治ってよかったじゃん!!ほらほら!二人の時間を作ってあげようよ!!他の皆は俺に付いてきて!!」

 各々が俺に色んな言葉を投げかける中、フサが無理やり話を変えて、他の全員を誘導して部屋を出ていった。アイツなりの気遣いなんだろう。フサは立ち去る前に俺に向かってウインクをして、踵を返した。

「なんアイツ???何がしたいの???」

それは分かってるだろ。

「あっそうだ、おめーにこれは言っとかないといけねーんだった。おめーのその病気は、キスから三日から三ヶ月で治るらしい。よかったな。 」

ムラがありすぎね?でもまだ研究がちゃんと進んでない奇病だから当然か。

「その調子だったら、一週間後には完治してんじゃあないですかねぇ!?鱗で覆われた全身が戻り始めて、声が出るようになって、そっから鱗が消えてくらしい。」

よくそこまで解明したな・・・フワンソーワにある本ってそんなことまで書いてあんのかよ。

「さってと、足あっか?」

 足?太陽に言われて足元をみるが、まだ全然戻ってきてはいない。え、怖いんだが?ホントに治んだよな?

「やっぱかかるんだな。」

 太陽はそう言って、俺を抱き抱えた。所詮お姫様抱っこという体制だ。まだ腰から下は無いし、感情は恐らく戻ってきていない。だからか太陽に対して恋愛感情というものは湧いてこないし、分からない。ただ、この体制がすごく恥ずかしいことは伝わる。他の持ち方無かったのかよ!ドスドスと足音をたてて太陽は歩いていった。

「おら!!!!神とその嫁のお出ましだぞ!!ゴラァ!!!!」

「うおっ!?!?ビビった!?」

 居間の襖を器用に足で開け、全員がいる居間に俺を抱えて登場した。その大声にアクシズが驚いて声を上げた。それを合図にするかのように、全員の視線が俺達に向いた。真っ先にフサがこちらに駆け寄って来て太陽に抱き抱えられている俺を見て言った。

「あ、そっか、まだ足ないのか。」

 フサの言葉に俺は頷く。見て分かんだろボケ。その言葉を聞いたあづキンが椅子を持ってきて太陽にこっちに来るように手招きした。太陽はズカズカと近づいていって俺をそっと椅子に下ろした。フサは足の早いエクレアと荒川に車椅子を取ってくるように指示をした。二人は短い返事を返して走っていった。エクレアがいるから恐らく場所は分かっているだろう。

「で、大丈夫なのかぁ!?」

「三日から三ヶ月で回復するらしいから大丈夫だろ」

「おいおい、三ヶ月って長ぇなぁ!?!?」

 ざくろが俺に質問を投げかけてくるが、俺の代わりに太陽が答えてくれた。この調子だったら少なくとも一ヶ月は掛かるんじゃないか?一週間で治るか?

「持ってきましたよ〜」

 その時、エクレアが居間の襖を開け、荒川が車椅子を押して入ってくる。流石、早いなコイツら。荒川が近くに車椅子を押してくると太陽が俺を抱えて車椅子に乗せてくれた。その間にフサが椅子を片付ける。手際いいなお前ら。

「じゃあマリちゃんとお出かけできるのはもう少し先なのかぁ・・・」

「じゃ、何日で治るか賭けしようじぇ〜」

 Jackがふざけてそんな事を口走る。お前ら病人のことをなんだと思ってやがる。俺は一ヶ月に500ゲラ。

「俺は二週間に300ゲラだな」

「我は二ヶ月に400ゲラ」

「遊ぶなお前らァ!!!」

 あづキンの喝が入ったところで賭けは終了。まあ病人を賭け事の対象にすんのはおかしいよな。うん。

「じゃあ、後どうする?解散にする?集まる理由も無くなっちゃったし。」

「そーだな、じゃ私は帰るぞ。マリキィン!!治ったら覚悟しとけよ・・・?」

 ヤバ、怖。エクレアだけでなく、他の沼達もそれぞれ安堵の息を浮かべながら去っていった。なんだかんだで仲間思いの優しい奴らだよな。今この場に残ったのは俺とフサ、そして太陽。まあ当然っちゃあ当然か。

「でさぁ、太陽?なんか注意すべきこととかあるの?」

「いや、ねぇ。」

「無いの!?」

特に注意しないといけないことは無いらしい。いやマジでないの??

「今まで通りの介護生活続けてたらそのうち治んだろ。」

「えぇ・・・」

「後はコイツの治癒能力に全部かかってんだよ。」

 それはそうだろうがよ・・・しっかし三日から三ヶ月はやっぱりムラがあり過ぎるよな。俺としても早く治ってほしいもんだけどな。太陽はそれだけ言うとフサを指さしながら言った。

「毎日様子くらいは見に来てやんよ、世話はお前らに任せる。俺が介護なんて出来る訳ないですしねぇ〜ww」

「うわ腹立つ。けどまぁ無難な判断なんじゃない?太陽に任せたら何しでかすか分かったもんじゃないし。」

それは同感だが、様子は見に来んのかよ。

「じゃあな!!早く治れよ!!!!」

 ひらひらと手を振りながら太陽は廟堂を出ていった。世話はしてくれないのかと思ったがコイツに任せたら廟堂からいつ火が出るか分からないからな。

「そーだねぇ、マリちゃんはとりあえず病気を治すことに専念しよう?ね?」

 それはそう。できるだけ早く治るように、と願いながら俺はフサのいう通り、この病を治すことに専念することにした。


四日後、早速足が見えるようになってきた。相変わらず鱗に覆われていたが、一歩進展だな。

「久しぶりにマリちゃんの足見たような気がするなぁ」

 フサがさわさわと俺の足を触りながら言った。まだ動きはしないから歩けるのはまだ先だろう。

「お邪魔しまぁす!!!!!」

「うわっ!ビビった!!」

 太陽がまたしても勢いよく俺の部屋の襖を開けた。毎回毎回こんな感じで入ってくるのに、一向に慣れる気配がない。

「足は戻ったか。じゃそろそろ声出るようになんだろ。」

「久しぶりのマリちゃんの声聞けるのか〜!楽しみだなぁ〜!!」

 フサが俺の手を握りながら話しかけてくる。俺だって楽しみなんだけどな。

「マリキン、ちょっと声出そうとしてみろ。」

「・・・・・・?」

「やっぱりな。」

 太陽に言われて声を出そうとしてみる。しかし、声は出ない。いや、出し方を忘れてる・・・と言った方が正しいのか?

「しばらく喋らずに生活してきた奴は喋り方を忘れることがあるらしい。マリキンにはそれが出ちまってるんだろうよ。」

 太陽が落ち着いて説明をする。フサは隣で焦っているように見えた。何回目だよお前。

「じゃ、じゃあどうしたら・・・? 」

「声を出さざるを得ない状況を作ればいいんだよ。」

 声を出さざるを得ない状況・・・?どういうことだ?太陽は「俺に任せろ」と言って俺と向き合った。

「おら、こっち見ろ 」

 太陽に言われ、彼と目を合わせた。何をするのだろうか。

 瞬間、太陽との顔の距離が目と鼻の先にまで近付いた。あの時と同じ感覚。あ、キスされてるんだ俺。あの時と違うことと言えば、口内に太陽の舌が入ってきてることくらい・・・て、おい!!何やってんだよ太陽!?フサも居んのにホントに何やってんだコイツは!?舌と唾液が絡み垢う卑猥な音が響く。しばらくすると頭がぼんやりとしてくる。酸欠だろう。無意識的に酸素を求めて息が漏れた。

「ん・・・・・・はぁ・・・た・・・よ・・・」

「やっぱお前もう声出んじゃねぇか。」

 太陽が銀の糸をながら顔を引いた。確かに今まで通りすらすらと喋ることは出来ないが声は出すことができる。声が出る。たったそれだけのことなのにとても嬉しいことのように感じられた。

「あ、お、れ・・・こえ・・・」

「喋る練習もしねぇとだな。」

「いやいやいやいや!!!俺は一体何を見せられたの!?」

 フサが後ろで突っ込んでいる。そりゃそうだ、俺だってまだ脳の処理が追いついてない。

「あ、お前居たんですか???」

「居たよ!!!ずっと!!!」

 太陽にはデリカシーというものが存在しないのだろうか。フサのバッテンが伸びている。今回のは怒り、感情の昂り・・・と。

「じゃ俺は仕事を終えたので帰りますね〜!!!!!!お前はおしゃべりの練習でもしてろよ〜wwwじゃあね!!!!!!」

「あ、嵐みたいだった・・・」

 太陽はそんなことを口走って去っていった。突然来て、キスして、俺達を煽って去っていく。情緒大丈夫かアイツ。脳の状況処理追いつかねぇんだけど

「まあでも、声出せるようになってよかったね!久しぶりに聞いたよ、マリちゃんの声。これからいっぱいお話しようね!」

「お、う」


 それから三日後、あの日から一週間後のことだった。足の鱗も消えかけてきて、廟堂の中を短距離だったら歩けるようになった。久しぶりに自分の足で歩けた時の感覚はまだ忘れていない。明日はフサと太陽と一緒に外に出てみようと約束している。足腰がちと弱くなっちまってるからリハビリのごとく、できるだけ自分で歩くことを意識して生活している。

 今日は夜。満月だった。俺は廟堂の縁側に一人で腰掛け、藍色の空に浮かぶ丸い月を、居間に何故かあったさきいかをつまみながら、ぼんやりと眺めていた。

「あ、マリキンさ〜ん。」

「荒川、か・・・」

 後ろから急に声をかけられ肩が跳ねる。そこに居たのは荒川だった。不法侵入か?

「なにしてるんですか?」

「月、見てた、んだ」

「あ〜、そういや今日満月でしたね。」

 荒川はゆっくり俺の隣に腰掛け、俺が持ってきていたさきいかを勝手に頬張っていた。別にいいんだけどよ、せめて聞けよ。許可取れよ。

「荒、川、お前が、俺がソーロットにいた、こと、伝えた、んだってな。」

「そういや伝えましたね。自分が屋根の上で日向ぼっこしてたら人の気配を感じまして、見たらマリキンさんで。なんかぼーっとしてるな〜と思って。」

 日向ぼっこって・・・あの時夕方だったはずなんだが?しかし、荒川の不思議な行動は今に始まったことではないのでスルーだ。

「で、も、なんで、太陽・・・に?」

「そのちょっと前から太陽から好きな人出来たって聞いてましてね。思いつきで言ってみたらなんか当たっちゃったみたいで。 」

 ゆらゆらと足を揺らしながら荒川はそう言った。お前の場合、それって野生の勘ってやつじゃね?

「もう少しで治っちゃうんですってね。あの時のマリキンさん、お魚みたいで美味しそうだったんで、ちょっと惜しいです。」

「や、めろ、怖いから・・・」

 じゅるりと涎をすすって荒川は俺をじっと見つめてくる。そんな目で見られてたのかよ俺。

「あ、病気治ったら一緒に釣り行きましょ?一回半魚人みたいになったからお魚の気持ちが分かるんじゃないですかね?」

「分、かるかよ・・・」

分かっかよマジで。俺に海に潜れってか?

「後どんくらいで治るんすかね?」

「知、らね後、一週間ぐらい、かかんで、ねぇの?」

「へー」

 興味があるのかないのか分からない空返事を返す荒川。

「んー、じゃ早く治るようにオマジナイかけてあげますよ。」

「オマジナイ?」

 荒川は縁側に正座をして、自分の膝をぽんぽんと叩いた。来い、ということだろうが膝枕・・・という認識でいいのか?

「あ、膝枕っていう認識でいいっすよ」

「心を、読むな!」

 コイツらは全員心を読む能力でも備わっているのか?とか思いつつ荒川の膝に頭を預ける。柔らかくて、冷たい肌だ。

「今からゲロリオかけるんで一回殺しますね。」

「はッ?あ、らかわ」

 ぐちゃり。生き物は死ぬ時に最後まで残っている五感は聴覚だという。

「大丈夫ですよ。起きたら全部元通りですから。」


「マリキンさ〜ん。マリキンさ〜ん。起きてくださ〜い。」

 ぺちぺちと頬を叩かれる感覚で目を覚ます。なんだか長い夢をみていたかのような気がした。

「あ、らかわ?」

「はい。」

 先程の膝枕状態で荒川が上から俺を覗き込んでいた。いつも真っ暗な目は今は水色に光っていた。

「俺・・・本当に一回殺されて・・・?」

「あ、はい。」

 切り裂かれたんだろうけど、その感覚は残っていない。だから殺されたという実感が湧いてこない。

「あ、あと明日にはもう治ってると思います。」

「な、なんで分かるんだよ・・・?」

「見ました。」

「み、見た?」

 水色の瞳はじわじわと黒色に戻っていく。ニコリと荒川は意味深な笑みを浮かべている。

「はい。オマジナイ、効いてよかったですね。じゃあ自分はこれで。」

「あ!おい!」

 よく分からないことを話して荒川は颯爽と去っていってしまった。しっかり残りのさきいかを持って、だ。

「はぁ・・・寝よ」


「マリちゃん!おはよー!」

 次の日、俺の部屋の襖を勢いよく開けてフサが入ってきた。まあこれはいつも通りだ。

「俺もいるよ!!!!!!」

「なんでお前もいるんだよ!!」

 フサの後ろから太陽がひょこりと顔を出した。珍しいな、コイツがこんな朝っぱらから俺の様子を見に来るなんて。

「マリちゃん調子は?」

「すこぶる元気」

「うんうん!よかったね・・・ってあれ、鱗無くなった?それに喋り方も・・・」

 フサに指摘されて今さら気づいた。胸元や足元に鱗が見当たらない。それに喋り方も・・・戻ってる?

「い、一夜で一気に治っちゃった・・・?マリちゃん昨日なんかした?」

「い、いや特に・・・あ、そういえば荒川と会ったわ」

「あ、荒川さん!?」

「おう、なんか一回殺されて、ゲロリオで復活させられて・・・『オマジナイ』とか言ってたような・・・?」

 ぼんやりとした夢のような記憶をそのままフサに話した。フサは「昨日の夜は誰か来た気配は無かったけどな」と首を傾げていた。

「へぇ!!!よかったね!!!!!!」

「うるせーぞ!!元凶!!!!」

「は????おめぇが勝手に片思い拗らせたのが悪いと思いますぅー!!!」

 太陽の言うことはごもっともだ。確かに俺が勝手に拗らせたのが悪いとは思うが、お前だってアピールしてこなかった癖に。

「荒川さん、謎な技いっぱい持ってるなぁ・・・」

 フサがボソリと後ろで呟いた。それはマジでそう。

「でも治ってよかったね!!これからいっぱいお出かけしよ!!ね?」

「おう 」

「おい!!!抜け駆け禁止ですよ!!!???」

「はぁ!?抜け駆けじゃないし〜!?」

「コイツは!!俺の!!嫁に!!なったんてすよ!!??譲れゴミ!!」

「ゴミじゃないですぅ〜!!マリちゃん回復するまでお世話したの誰だと思ってんの!?」

「辞めろお前らぁ!!!」

「フフ、良かったですね。マリキンさん。」


今日も廟堂は平和です。


𝑭𝒊𝒏.

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コメント

39

ユーザー

奇病いいねぇ!!

ユーザー

おぶぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!いい話っ…グスングズン…(泣)結婚しろよ早くお前らァ…

ユーザー

奇病すげぇ好きなんですけど?!?!

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