こんばんわ!
今回はHappy End Verです!
ちょっと王道感がすごいけど……
まぁこの作品ボツっていうか、もうボツだからね、
誰でもいいから良かったよって褒めてくれると嬉しい……です、
それでは!
【────人間、失格。】Happy End Ver!
どうぞ〜↓↓↓
中也は、横になって眠る私の頬を優しくなぞった。
そして一呼吸おいて。
「はあああぁぁぁ〜〜〜〜」
でかでかと溜め息をついた。
「おいマジで如何すンだよコレ。成り行きでやっちまったが完全にヤバいだろ。まァ停戦中だから一応大丈夫か……?」
一応って何、一応って。
私の事助けてくれなかったのってソレが理由?後で殴ろうかな……。
「首領が知ったら何て云われるか………」
──────プルルル
「電話…?」
衣服の擦れる音が聞こえる。懐から携帯を取り出したのだろう。
ていうか中也の着信音デカ過ぎない?
「もしもし」
『あっ、素敵帽子君?』
機械音交じりに、乱歩さんの声が聞こえた。
妙に心拍数が上がり、汗が浮かび上がる。
「オイ名探偵、何で俺の電話番号知ってンだ?」
『あー、うん、色々とね』
「手前それ絶対ダメなやつじゃねェかよ……」
『僕が良ければ全ていいんだから大丈夫!』
「ヤバすぎだろ、誰に教えられたんだ其の言葉」
『え?僕の座右の銘だけど?』
江戸川乱歩・座右の銘────僕がよければすべてよし。
「………………」
中原中也・座右の銘────これで太宰さえいなければ。
太宰治・座右の銘────清く明るく元気な自殺。
「太宰も太宰だが手前等ンとこは皆そんな感じなのかよ………」
『何が?』
「いや、何でもねェ…………」
『あ、そうだ。本題に入ろう!』元気な声で云った後、乱歩さんは静かな声で云った。
『素敵帽子君さぁ………………太宰の事知らない?』
「!」
声のみ聞く私でも判った。
乱歩さんは、全てを見通している。
「…………それは、」
あーあぁ。折角あの地獄の空間から出てきたと云うのになぁ。
中也の事だ。
私の事を云う心算だろう?それなら云い給え。
もう疲れた。
結局私は、誰にも信頼されてない。
ほんと──────大嫌い。
『素敵帽子君の所に太宰が行ってないかなぁって…………如何?』
「………」
私の手に触れてあった中也の手が、強く握られた。
何?何してるの?
疾く云いなよ。何でそんな黙る必要があるの?
「…………っ」
『─────はぁ、判った』
乱歩さんが溜め息をつく。
『太宰については僕から社長に伝える』
「…………………嗚呼、済まねェ」
中也が私の髪を撫でた。
何で中也が謝るの?
如何して何も乱歩さんに云わないの?
『____…』
『昔、独りの少年が居たんだ』
「少年?」
『そう。彼の目には色の無い世界が映っていた。周りの大人達は全員怪物のように見え、その少年は怪物に囲まれながら独りで生きてきた。同じように独りの────異能力者に会うまでは……』
「……………」
『彼は少年に色と居場所を与えた。でも僕は、社長────福沢さんのようにはなれない。太宰を救えない。それでも』
「それでも?」中也が聞き返す。
乱歩さんは一呼吸置いてから云った。
『それでも─────太宰を死なせるな』
「……………おう」
そう云って、中也は携帯を閉じ懐に仕舞った。一瞬、私は少し瞼を開く。
煙草のにおいがした。
***
柔らかい何かに包み込まれる。その布の肌触りには覚えがあった。
少し瞼を上げる。琥珀色の電気スタンドが辺りを照らす。
中也が帽子を持って、私から離れようとしていた。
「____…」
その手を勢い良く掴んで引っ張る。「おわっ!?」中也が私の隣に倒れた。
ベットに振動が伝わる。
「なっ…………太宰?」
私の方を見て、目を丸くしながら中也は云った。
「やァ、中也」
笑顔を貼り付けようとした、然し顔が固まったように動かせなかった。
「手前、もう動いて大丈夫なのかよ」
「………」
中也の服の袖を、私は強く掴んだ。
「だざ」中也の声を遮る。「何故私が居る事を乱歩さんに云わなかったんだい?」
私の声が妙に一室に響く。中也に沈黙が生じた。
「それは──────」
中也の言葉が途切れる。何かが中也の口を塞いでいた。
手だ。私の手だ。
中也がこれから云う言葉に私は恐怖し、云わせないよう口を手で塞いだのだ。
「ごめん、矢っ張り何でもない……」肺腑から声を絞り出す。
そっと私は中也の口から手を放した。
恐怖。
君に関してこの言葉を使う事なんて今まで無かった。
何を云うのか判らないから怖い。
その恐怖を、私は嫌った。
それでも────
「中也」
静かにその名を呼ぶ。
「何だ?」
中也と目を合わせる。
一呼吸おいて云った。
「私を殺して」
「─────は?」
中也が目を丸くした。
「何云って「なんてね、冗談だよ」態と重なるように云う。
笑おうと思った。然し笑えなかった。
表情が固まって動かせなくなった訳ではない。
只単に、私は、笑えなかったのである。
「ほら、夜はマフィアの時間だよ。仕事にでも行っ────「冗談なンかじゃねェだろ。今の」話を逸らそうとした私の言葉を、中也が遮る。
中也のその台詞は、酷く私の耳奥に響いた。
「今のは、手前の本音だろ」
あぁ……本当にこう云うところキライ。
私は話を戻した。
──────全部、吐き出せ。
その言葉通り、私は全てを吐き出した。
後に起こる事に対しての恐怖と震えを堪えながら。
「“耳鳴り”が云ったんだ。私は皆を信頼していない。皆から信頼されていないって。其の通りだ。だって私は、皆と違って人間じゃないから」
襯衣の胸元を握り締める。
「だから私は彼処に入れられた!狂人だから!廃人だから!人間失格だから!!」
チカチカと点滅しているようだった。自分でも“オカシイ”と判った。
中也の服の裾を、縋り付くように私は掴む。
「もう私は自死すらできない!自分を傷付ける事でしかこの感情を抑え込む事ができない!最低だよ……正に恥知らずの極みだっ!!」
私は中也の顔を見なかった。見る事ができなかった。
視界がぼやけていたからだ。
何かが頬を濡らす。
「生きる事に何の価値も見出だせない。辛いよ苦しいよ、開放させてよ!この何も無い世界からさぁ…!!」
──────ギュウゥゥッ!!
中也の服を握り締める。私は声を絞り出した。
「ソレができるのは……………君しか居ないんだ」
声は弱々しく、かすれていた。
私は願った。
うずくまって中也の名を呼んだ。
「……………」
中也は何も云わなかった。何もしなかった。
只、私の傍に居てくれた。
私を囲む薄暗い空間。一言で表せば「孤独」。
中也は、ソレの外界から靴を脱いで入ってきた。
「────太宰」
優しく私の名を呼んだ。
私を「孤独」が囲み続ける事には変わりない。
けれど、私の傍に中也が来てくれたと云う事実があった。
“泣き続ける子供”の髪を、中也は優しく撫でた。
***
「ほら、食え」
そう云って、中也は目の前の机に料理を並べた。
対面するように、中也が椅子に座る。
手を合わせて云った後、私は匙(サジ)を持って料理を口に運んだ。
卵の柔らかい食感に、味が良く染み込んだ白米。出来たてのお粥は温かく、飲み込むと口の中から体の芯まで温めてくれた。
また食べたい。
好きな味。
「如何だ?」中也が聞いてくる。
「んー、うん……ほっこりする、もっと食べたい……かな…………」
「はぁ…?美味しいなら美味しいって云えよ」
その言葉に思わず目を丸くする。
「………美味しい、ってこう云う事なの…?」
「あ?なら他に何て表すンだよ」
「────そうだね、中也の料理は美味しい」
「止めろ。手前に褒められるのに吐き気催すわ……」
そう云って中也は自分の口を手で覆う。
「私も云ってて吐き気しかしない☆」
匙で粥を口に運ぶ。
うん────美味しい。
「中也おかわり」
中也に空になった茶碗を渡す。
「結構食うな」
茶碗を受け取って、キッチンの方へ向かいながら中也は云った。
「だって病棟の食事、全部不味かったんだよ」
「おぉ、そうか……」
さらりと云った言葉に、中也は軽く引く。
「これで味の素と蟹缶があったらなぁ〜」
「自分で買って来いや」
「私財布無いから、中也のお金で買っても佳いなら行くよ?」
「巫山戯ンな」
中也が新しく粥を入れてきた茶碗を、コトっと私の目の前に置く。
再び私は口の中に粥を運んだ。
***
「ねぇ中也」
ベットの上から横になっている中也に話しかける。
(因みにじゃんけんでベットで寝るか決まった。勿論太宰の勝ち)
「何だよ」
「先刻の話なんだけどさ」
「あ?話?」
中也が布団の上を寝転がって、私の方を向いた。
「うん」
「私を殺してって話」
中也は黙り込んだ。
先程のように目は丸くしていない。
「今は殺さねェ」
「何故?何時もみたいに死なす死なすって云って来てよ」
「俺が殺してェと思った時に手前を殺すンだよ。手前の云う通りにすると思ったか。それに……」
「それに?」
中也がにやりと笑みを浮かべる。
「手前に“好い嫌がらせ”ができるからな」
思わず目を見開いた。
そして私は苦り切った顔をする。
「何さ、中也のくせに生意気………」中也から視線を外し、ベットに仰向けになりながら呟く。
「ん?何か云ったか?」
「別に?嫌いだなぁって云っただけ」
「そりゃあ有難ェ。俺も手前が嫌いだ」
「わぁ〜嬉しいなぁ」
そんな会話をしながら、私達は夜を過ごしていく。
気が付くと、先刻まで感じていた恐怖も不安も全て無くなっていた。
それどころか、胸にぽっかり空いていた穴───私にしか存在しない虚無感が消えていた。
自分でも判るのだ。
何時も通りだと。
「________…」
本当にナマイキ。
でも、温かい。
***
二ヶ月後。
「いやぁ〜矢っ張り素敵帽子君に任せて良かったよ!はいこれラムネ」
「お、おう……ありがとな」
ぎこちない笑みを浮かべて、中也は乱歩さんからラムネを受け取る。
私は影から其れを見ていた。
乱歩さんの後ろには、探偵社の皆がいる。
妙に心拍数が上がった。
大丈夫。
大丈夫。
そう自分に云い聴かせる。
「ぁ……あの、太宰さんは…?」
不安じみた声で、敦君が云った。
「大丈夫だ、莫迦みたいに元気だぞ。オイ太宰、出て来てやれ」
中也の声に、私はひょこっと顔を出した。
「やっほ〜みん────な!?」敦君が飛び乗ってきた。
「太宰さんっ…佳か、たっ……うっ………う、ぅ」
私の襯衣を握りしめ、堪えるように敦君は涙を零した。
「____…敦君」
「……ったく」靴音が響く。
国木田君が安堵しながら云った。
「皆心配しているとあれ程云ったのに………何処まで我が社に心労をかける心算なんだ貴様は……」
そして国木田君は凛々しい笑みを浮かべて「この唐変木め…」と云った。その言葉は、罵倒として使われた言葉ではなかった。
私は周りを見渡した。皆凛々しく、そして嬉しそうな笑みを浮かべている。
壊れ、失ったナニかが蘇る。
「信頼」。その感覚を、私は再び感じた。
「ふふっ…んふふ、あははっ」
自然と零れた笑顔だった。涙が溢れ、幸せを感じた。
それを見た皆も幸せそうに微笑み、優しい空間が包み込んだ。
***
武装探偵事務所の扉を開ける。
「グットモ〜ニ────ガシッ!!
「また遅刻か貴様はぁ!!」
国木田君が胸ぐらを掴んで、朝一番の怒鳴り声を上げる。
「お前と云う奴は何度云ったらわか」国木田君の言葉を遮って、真剣な表情で私は云った。「落ち着き給え国木田君」
「あぁ!?」
「時計を佳く見給えよ。今日は一時間しか遅刻していない。今までで最短記録じゃあないか」
「たっ……確かに!────じゃないだろう!遅刻には変わらん!!」
国木田君が私の首を掴んで、わしわしと揺する。
「うへへあはははは」
(何時も通りだ……。国木田・太宰以外)
***
執務椅子に腰を下ろし、懐から携帯を取り出す。
ぽちぽちと釦を押した。
『今日、中也の家行って佳い?
中也の“美味しい美味しいご飯”が食べたいなぁ。』
文を送信し、微笑した後、私は携帯を閉じる。
──────ピロンッ
着信音が響いた。携帯を開く。
『来ても佳い。
来ても佳いが二度とその云い方すンな。
冗談でもすンじゃねェ。』
「ひどい事云うなぁ……」携帯の画面を見て微笑みながら私は云った。「全部本当の事なのに…」
携帯を閉じ、懐に仕舞う。
「太宰さん嬉しそうですね、何かあったんですか?」
横から敦君が聞いてきた。
「ふふっ、何だと思う?」
満面の笑みを浮かべて、私は云った。
その笑みは恐らく、誰が如何見ても「幸せそうな笑み」に見えるだろう。
――唯一私が自然に零せる本当の微笑み。
夢も不安も恐怖も苦しみも、凡てが終わった。
私を蝕むもとは何もナイ。
─────ゆっくりと瞼を開ける。
目の前には書類の山。
その奥には懸命に仕事をする国木田君。
横に視線を移すと、真面目に仕事をする敦君と鏡花ちゃん。
奥の方の机には依頼について電話をする谷崎君。それをサポートするナオミちゃん。
資料室で資料を整理する賢治君。
手術室にて本日の得物を何にするか考える与謝野女医。
中央の執務席で、駄菓子を食べながら携帯電子盤をする乱歩さん。
社長室にて茶を啜っているであろう社長。
柔らかく、優しい空間が其処にはあった。
然しコレは“幸せの延長線”のようなものだ。
何時かは“破滅”に辿り着く。
若しかしたら今回のように私が何かをし、この幸せな空間を自らの手で壊してしまうかもしれない。
でも、きっと大丈夫だ。
――赫色の髪と特徴の帽子が脳裏を過ぎる。
一人の青年の後ろ姿が映し出された。
自然と笑みがこぼれる。
そう大丈夫。
私の傍に──────君が居る限りは。
コメント
6件
めちゃくちゃ感動して、今画面にポタポタ涙が・・・(本当) バットエンド・・・プルプル震えてます・・・笑
めっちゃ感動してて今画面滲んでるんですけど、これからBad Endみるのにまじでプルプルしてます、、勇気を出せー、、!
いやぁ、最高 本当に最高です!マジで最高! happy end好きなのでめっちゃ良かったです!bat endもあるのかな? 連載お疲れ様でした!