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羽良野先生も、木枠から鉈のような形状の刃物を振り回しながら、躍り出た。村田先生の後に続き。四部木さんと三部木さんを追い回す。
あばら家は、突然猟奇的な空間へと変貌した。
当然、四部木さんも三部木さんも死なない。
バン!
村田先生の散弾銃を浴びても、二人は逃げおおせ。腐臭漂う。濁った空気のあばら家から、やっとのことで外へ停めてある車に二人して体をねじ込んでいた。
でも、村の人は別だった。
「ほれほれ。ほれほれ」
三部木さんたちが車で逃げ出しても、村の人は羽良野先生と村田先生へと近づいて鍬を振り下ろした。
酷い形相の羽良野先生が狂気に任せて刃物を振り回している。
村田先生の散弾銃が何度目かの火を吹いても村の人は死ななかった。
それを、ぼくはじっと、見守っていた。
また、縛られたままで悲しい歌を歌っていた。
鉈と散弾銃で村の人がバラバラにされ、ぼくは羽良野先生に縄をほどいてもらった。
「歩君。村の人や田中一家が大勢来てしまうわ。もうすぐに燃やすしかないの。だから、燃やしてしまう前に、この村の秘密を話すわね。……この子にすべて話すわ。村田先生は外を見張っててください」
羽良野先生は学校の先生とは、程遠い醜く恐ろしい形相の中に仏さまのような慈愛がこもった目で、ぼくを見つめていた。
ぼくは学校の授業を思い出していた。
「1883年の飢饉で、その時はもともと貧困のお百姓さんたちが餓死していたの。徳川幕府は市中にたくさん御救小屋を設置したのだけど、救いを求めている人たちは70万人もいた。百姓一揆や打ちこわしとかまだ歩君は知らないことを、その当時の人たちはしていたの。でも、毎日100人から200人の餓死者がでたわ」
いつもの学校の先生だ。
羽良野先生?