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通知は、
見ている。
見ているけど、
開かない。
それだけ。
既読をつけないのは、
意地じゃない。
駆け引きでも、
復讐でもない。
——ただの、選択。
スマホを伏せて、
キッチンに立つ。
今日は、
作るのが面倒だった。
スーパーで買った
惣菜を皿に移す。
明日のお弁当用に買った
野菜を、
少しだけ添える。
栄養とか、
ちゃんと考えてるふり。
一人分。
箸を持ったまま、
編集画面を見る。
音量は、
最小。
夜は、
誰にも邪魔されない。
この部屋には、
わたししかいない。
帰っても、
誰もいない。
遅くなっても、
怒られない。
早く帰っても、
褒められない。
それが、
当たり前だった。
だから。
誰かの「気持ち」に
居場所を作らない。
寄りかからない。
依存しない。
それを、
ずっと守ってきた。
スマホが、
もう一度震える。
……ジュン。
見なくても、
分かる。
「気にしてるなら悪かった」
「話せる?」
「俺、何かした?」
全部、
“答えを欲しがる言葉”。
わたしは、
メモを開く。
今日の下書き。
配信用。
——まだ、公開しない。
言葉は、
刃物になる。
タイミングを
間違えたら、
自分も傷つく。
だから、
今は使わない。
沈黙は、
逃げじゃない。
相手に
考えさせるための、
距離。
大人の感情は、
熱を持ちすぎる。
近づいたら、
燃える。
未成年の心は、
それに
巻き込まれやすい。
わたしは、
それを
何度も見てきた。
「好き」
「君だけ」
「特別」
その言葉で、
どれだけの子が
壊れていったか。
だから。
感情を向けられた瞬間、
一歩、下がる。
それが、
わたしのルール。
スマホを、
もう一度見る。
未読のままの、
メッセージ。
——返さない。
今、返したら。
彼は、
安心する。
安心したら、
もっと踏み込む。
それが、
一番危ない。
ベッドに座る。
制服のまま。
着替えない。
この格好のまま、
考える。
——わたしは、
誰かの感情の
受け皿にならない。
——恋愛教祖は、
恋をしない。
それは、
冷たいからじゃない。
壊れないため。
沈黙は、
拒絶じゃない。
これ以上、
近づかせないための
返事。
スマホを伏せる。
部屋は、
静か。
でも。
その静けさが、
一番、
はっきりした答え。
返事がないのに、
嫌われたとは思えなかった。