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白山小梅
白山小梅
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◇
一度だけ。
柊と一緒に買い物をした思い出がある。もちろん、二人ではない。修学旅行っていう、大抵の人が経験する学校行事での一幕だった。
『あ、これカワイイ』
『……なにそれ』
『誕生石のブレス……って、なんで柊がいるのよ!?』
『偶然。同じ班のやつが、彼女に土産選ぶっていうから、この店入っただけ』
旅先の土産物街で、アンティークやハンドメイドのアクセサリーが置かれたお店に偶然同じタイミングで入ったらしい。
友達の付き合いなら、柊はお店に入らなくてもいいのに。……柊も、彼女にプレゼント選んでるのかな?
いや、柊は彼女作らないって言ってたし、多分いないはずだ。
……でも、あれも一年前に聞いた事だし……気が変わって、本当は彼女いたりする?
『女子ってこーゆーの好きよな』
頭の中さえも隣の男でいっぱいになっていれば、柊は対して興味も無さそうにそのひとつを摘む。ガラス細工から透かした太陽の光が柊の頬へ微かに色を落として、その横顔に目を奪われた。
『冒険譚にロマンを感じる男子の感性こそわかんないけどね』
『は?ONEPIECEは正義だろ』
『はいはい。5分だったら聞くから、5分ならどうぞ』
『柴崎は何月生まれ?』
『……はい?いま漫画の話してたよね』
『そうだっけ。で、何月』
『……10月』
『ピンクだって、似合わなー』
『1回その辺に埋めていいかな』
『ふはっ、やっぱ凶暴すぎ』
くたっとした笑顔を零した柊は、あたしが見ていたアクセサリーのひとつを手に取って、逃げるようにレジに向かった。
修学旅行先でも貶すことないのに、ちょっと損した気分である。
会計を済ませた柊は、何故かあたしの目の前に来ると「はい」と右手を差し出してくるから、反射的にそれを受け取る。
手のひらに落とされた透明の小袋には、ピンク色の石のブレスレットが入っていた。
『あげる』
『え、なんで?』
『誕プレ。ちょうどいいことに、今10月じゃん』
『は?誕生日プレゼントは、普通誕生日にあげるものでしょ』
『こんなの、あげたい時にあげるのが良くない?ほら、旬って言葉があるじゃん、』
プレゼントに旬があるなら、その日が旬だと思いますけど?
でも、プレゼントを貰えるなんて思えてなかったから、喜びに満ち満ちて。
『……ありがと』
あたしらしくないけれど、素直にお礼を告げた。同封された手書きの説明書きを読むと、トルマリンには色別で石言葉が異なると書かれていた。
ピンクトルマリンは……
『愛の石……』
柊も同じところを読んでいたらしく、呟いた声と重なった。
『似合わな』
『どういう意味よ!』
初めて貰ったのが、誕生日プレゼントっていう特別な贈り物。しかも、愛の石っていう響きが、ちょっとだけあたしのことを後押ししたのかもしれない。
その日から、高頻度でそのブレスレットを手首にまきつけていた。もちろん制服で隠れているからバレはしないけど、袖口の上から手首を触るのがあたしの癖になっていた。