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「あーそういえば、クエストを見ておこうかな……」
受託可能なクエスト
*王城からの脱出!
楽勝ですね、頑張ってください。
*初めての異世界お泊まり。
お勧め宿マップを参照のこと。
*奴隷を買おう!
女性か両性じゃないと駄目ですよ?
*拠点を作ろう。
お勧め拠点マップを参照のこと。
*料理を作ろう。
新しいレシピで無双をしてもいいですよ。
現時点では、ここまでです。
クリアすると、新しいクエストが出ることが多いので、確認は頻繁にしましょうね。
「うーん。これじゃあ、まだわからないかなぁ」
「お待たせいたしました」
「あ。お帰りなさい」
思考に沈み込む前にリゼットが戻ってくる。
「こちらでございます」
引き寄せられたワゴンの上へ宝石箱が置かれた。
まずは、小さい指輪の箱を開ける。
「ターコイズとスモーキークォーツかぁ……」
ターコイズには開放、スモーキークォーツには不屈の精神力という意味合いがあったはずだ。
「クリソプレーズの『心の平和』辺りを追加しておこう」
指輪を握り締めて、デザインを偽装する。
ちなみに偽装でも、私が意図した宝石の効果はきちんと発揮できるらしい。
ターコイズの周辺を囲っていたスモーキークォーツの一部を、クリソプレーズに偽装して交互に配置した。
「ネックレスはっと。うぉお! ピンク!」
ハートの形をした大粒のモルガナイトが一つ。
周囲にはダイヤが散りばめられている。
王妃にはシンプルすぎるだろう。
が、あの手のタイプはきっとハート型は好みだと想像できた。
しかし、魅了を封じるのに、自由を象徴する宝石を使うってどういう意味?
魅了の能力から自由になるってこと?
って、悩んでいても仕方ないか。
「……レッドファントムクォーツの粒揃いなネックレスに、モルガナイトを通す感じで?」
プラチナのチェーン部分を、新しい価値観を見いだす意味合いを持つレッドファントムクォーツに偽装し終える。
「こちらの宝石は、初めて見る宝石ですね」
「私がいた世界でも珍しいみたいですね。新しい価値観を見いだすって意味合いがあるんですよ。変な価値観じゃないといいんですけど」
所詮は偽装でしかないが、称号持ちの偽装だ。
数値以上の効果があると信じて期待しておく。
「その点は御安心を。王家を揺らがせた罪はきちんと贖わせますので」
凄惨な微笑を浮かべたリゼットの覚悟が知れる。
恐らく王を排除しなければならない段階まで来ていたのだろう。
あの王妃は正しく傾国だ。
王を捕らえて離さず、国を衰退に導き、崩壊寸前まで追いやっている。
「まだ、誓書の準備はできないのかしら?」
「……連絡が来る手はずになっております。来ないということは……」
「時間をかけても無駄なんだけど。まぁ、せいぜい気がすむまで無駄なあがきをすればいいかな。あ。そうだ! 聖女の扱いってそもそもどうなっているんですか?」
「……国の大都市を見回っていただき、祝福を授け、その後は孕み女になっていただくお役目です」
案の定なかなかえげつなかった。
「今回の聖女はそこまで凄いスキルを持っていなかったけれど、それでも大丈夫なの?」
「十人も孕めば一人ぐらいは、聖女を超える能力の者が生まれるようですね」
十人かぁ……うん。
頑張れ聖女様たち。
一人は淫乱仕様だし、一人は食べ物さえ与えておけば、喜んで肉奴隷になるはずだ。
ただ、もう一人はどうだろう。
まぁ、嫌だと声を上げたとしても、それを覆すほどの力もないからどうしようもないに決まってるか……。
「ああ、誓書が仕上がったようですね」
ノックの音がして扉が開かれる。
メイドが一人恭しく頭を下げていた。
「あー、またあの人たちに会うのか……」
「申し訳ありません。次にお会いする機会がございましたときには、決して不愉快な思いをさせないと王家の名に誓います」
今の王家の名なら無駄な気もするが、リゼットの思う王家の名なら、期待しても問題はないだろう。
音もなく歩く、リゼットの先導のまま、先ほどの大広間へと向かう。
「大変お待たせして申し訳ありませんでした。誓書が揃いましてございます」
広々とした大広間の中央に置かれたテーブルの上へ、美しく装飾された紙が一枚置かれている。
「ありがとうございます。確かにいただきました」
さっと目を通す。
鑑定結果は、王家の誓書、だった。
さすがに偽装工作はしなかったらしい。
王家の紋章が描かれた封筒に誓書を入れて脇に挟み込む。
「……聖女様方は?」
「……別の間で、説明をさせていただいております」
まぁ、私と違ってラノベなんか読まないだろうしねぇ。
一応名家に嫁いだんだから、マヨイガを例にした説明なら、わかるのかな?
フォローする気はないけどさ。
「それは上々。誓書のお礼に、私の手持ちの守護法具を贈ろうと思うのですが……」
王には私と連絡ができる通信手段のアイテムとして、王妃にはサファイアのネックレスを差し上げられないお詫びとして……と続ける間もなく、王妃に食いつかれた。
「まことか!」
「王妃っ!」
王は周囲に諭されたのか、称号が絶対なのか、きちんと王妃を咎めた。
王妃は拗ねた子供のように唇を尖らせるので、あえて満面の微笑を浮かべて、恭しく取り出した箱をぱかりと開いて見せた。
「ふむ。なかなかに大きな宝石……む? このネックレスの宝石は何じゃ?」
「私の世界にございます、選ばれた者しか身につけられぬ希少宝石でございます。子宝に恵まれるという強い効果がございます」
「そうか! つけるが良い!」
「……畏れ多いことでございます。是非とも王にお付けいただきますよう」
「うむ」
不敬にも取られかねない子宝に恵まれるという効果に、どうやらかなりの期待をしているらしい。
自分の立場をより盤石なものとする以外に、子供を欲しがる理由もなさそうだが。
「良かったな、王妃。すばらしく似合うぞ」
王にネックレスをつけられて、王妃は御機嫌だ。
「王にはこちらを……」
箱を開いた状態で差し出す。
何の疑いもなく指輪を手にした王は、中指の根元まで指輪をしっかりとはめた。
王妃の目が一瞬恨めしそうな色を乗せたが、自分には似合わない地味な宝石だと思い直したのか、ネックレスを爪先で弄び始める。
「それでは、私はこれにて失礼いたします」
「どちらへ行かれるのでしょうか!」
「そう、ですね。少し城下を見て回りたいと思います」
「それでしたら、是非警護を!」
「……加護がありますので、不用です。警護も監視も」
本気で警護を申し出たらしい騎士団長は、美しい顔を驚愕に歪めていた。
残念だが今の所この場で信用に値するのはリゼットだけだ。
「では、私が門外までお見送りを……」
「ええ、よろしくお願いします。それでは、王国の繁栄を心より祈念申し上げます」
周囲からどよめきがあがる。
もしかしたら、称号持ちの言葉には言霊が宿ったりするのかもしれない。
「……よろしかったのですか?」
「王家はさて置き、国が繁栄するのはありでしょう?」
「お心遣い、痛み入ります」
王の乳母の権力はかなり高いようだ。
すれ違う相手が百%首を垂れて、立ち止まる。
「それでは、リゼットさん。定期的に情報をよろしくお願いしますね」
「居場所を特定するために、何か持ち物を一つお貸しいただけないでしょうか?」
「えーと……これで大丈夫ですか?」
指輪からハンカチを一枚取り出す。
百合の刺繍入りだ。
指輪からアイテムを取り出すのに、大きく目を見開いたリゼットだが追及はしてこない。
さすがに聡明だった。
「有り難くお借りします。定期連絡時にのみ、場所特定をいたしますので、御安心ください」
「こちらから連絡したくなったら、どうしたらいいですか?」
「ギルドに依頼を出してください。リゼット・バローへ手紙を送りたい、依頼主・最愛として御依頼いただければ、即時届くようにギルドへ通達しておきます」
「ギルドかぁ……私でも登録できますか?」
「……こちらをお持ちになって、城下のギルド本部でリゼット・バローの推薦だとおっしゃっていただければ、スムーズにいくと思われます」
手渡された銀色に輝く掌サイズのプレートは、どうやらギルドカードのようだ。
リゼットの名前が浮き彫りになっている。
現在乳母として働くリゼットには不要の物かもしれないが、二つとない大切な物には違いない。
「それでは、私も有り難くお借りしますね」
大切な物を貸せば、必ず返す約束がなされる。
逆もまたしかり。
リゼットにはそれが通じたのだろう。
穏やかな微笑を浮かべた。
「では、道中お気をつけて」
「ありがとうございます。リゼットさんも心身ともに健常でありますように」
「っ! ありがとうございます」
真摯な言葉は祝福になるらしい。
リゼットの体から無駄な力が抜けたように見えたのは、一仕事終えた気がして嬉しかった。