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プチ歓迎会もお開きし、今日は酔い潰れることなく、まっすぐ帰宅する晃。


どこか寂し気に道路に転がる石ころを小学生のように蹴飛ばした。


駐車場に着いて、電話で代行を頼んた。車を自宅まで送ってもらうことにした。ぼんやり窓の外を眺めてスマホをぽちぽちと触る。果歩に今から帰るとラインした。


スタッフにお金を払って、一礼した。意識ははっきりしていた。

家のガレージに着いた。

ムシムシと外は暑かった。


玄関のドアを開けると、家の中は真っ暗で暑くなっていた。

エアコンの電源は切ってあったようだ。


時刻は22時。いつもより帰宅は早かった方だった。

果歩は比奈子と寝室へいるようだ。

リビングの電気をつける。



最近の比奈子と言えば、だいぶ体も大きくなって、ベビーベッドにはもちろん寝れない大きさになっていて、

もっぱら両親のシングルベッドを2つ合わせた真ん中に寝ていた。

ベッドとの隙間ができて、背中が痛いと果歩が言っていたため、クイーンかキングのベッドマットを買うかどうかを考えていたところだった。


帰って来て1人、テレビを付けず、スーツのままネクタイを外して、ぼーっとソファに座る。

バックの中でポロンとスマホの音が鳴った。

飲み会があまりにも楽しかったらしく、また行きましょうというスタンプを智也から送られてきた。


やらないと言ってるにも関わらず、ゲームのログイン案内の情報も送ってきていた。


(ったく、智也のやつ。俺はゲームはやらないって、やるとしたら、TV用ゲーム機で鬼ごっこするようなゲームしかやらんって 言ってるのに……。今の若いのはゲーム機には手を出せないって言ってすぐ無料アプリダウンロードするんだろうな)



ブツブツと考えながら、体をソファに横にして試しに紹介されたアプリを起動してみた。ダウンロード時間がかなり要するようだった。


「マジか……時間かかるな、これ。その間、風呂入ってくるかな」



スマホをリビングのテーブルに置きっぱなしにして、晃はお風呂に入りに行く。入っている間、比奈子を寝かしつけた果歩が寝室からリビングに移動してた。残っていた洗い物を片付けようと、台所に移動しようとしたら、ポロンポロンと変な音の着信音が鳴った。


「え、誰から? もう、帰ってきてすぐ夜遅いのに。また智也さんかな?」


晃のスマホを覗くと、鈴木と表示されていた。

ずっと着信音が鳴り続ける。


「これ、誰だろ」


知らない名前が表示されて、どうしようか迷ったが、お風呂場にスマホを持っていく。



「ちょっと、電話!! 聞いてる?」


シャンプーをしていた晃は、泡だらけで後ろを振り向く。


「え?!!」


「ほら、鈴木さんからだって!!」


「なんだ、果歩、起きてたの?」


「良いから、電話出ないの?」



「あーー、まぁ、いいや。あとでかけ直すからそこに置いてて!」


「あ、そう」


反応的には何もやましいことはなさそうだなと感じた果歩はドラム洗濯機の上にスマホを着信音が鳴ったままの状態で置いていた。


(これで女の人だったら、嫌だな。こんな時間に何の用があるんだか)


果歩は、残っていた食器洗いをしに台所に戻った。

疑いたくない。別に外に出て自由にやってもいい。

最後には戻ってきてほしい。わかってる。2回目だって。自分が2番目だったことだって過去の記憶で知ってる。

奥さんがいたことも知っていて会っていた。

もしそれが、逆の立場になるかもと想像するとゾッとするが、遠くから見守って様子を伺いたい。あえて、戦場、修羅場にはしたくない。


どこかの誰かの芸能人は、相手の女性を丁寧に扱いなさいよと指示する奥様がいるとか。

浮気を公認できる強いメンタル。果歩はそんな人になりたいと思っていたが、

実際に現実化するとなると心臓が何個あっても足りないのかもしれない。


気になり出したら怖い。

自分自身が変な考えになりそうで。

冷静でいたい。

比奈子を守りたい。

大事にしたい。


最近はめっきり夫婦の営みもご無沙汰で、

仕事終わりは決まって飲み会に行く。


そんな生活に慣れてしまっている自分がいた。

果歩は、それじゃダメだと晃を無視しないように関心を極力持つようにした。

家事と育児に疲れて余裕がなかったというのもある。


そろそろ、比奈子の兄弟をと考えていなくもないが、女性としてのタイムリミットも近づきつつある。

なかなか話を切り出せなくて、毎日が終わる。

晃はそんなこと少しも考えていないのかもしれないが。


果歩はリビングのテーブルにハーブティーを入れて心落ち着かせていた。


お風呂上がりの晃は、Tシャツ・短パンにフェイスタオルを頭にかぶせてスマホを持ってリビングにやってきた。


「おかえり」


「あ、言ってなかったね。ただいま」


「最近、こうやって話すことも少ないと思って……」


「あ、まぁ、そうだね。変わりない? 俺が平日、帰ってくるの遅いからだもんね。土日は極力家族サービスしてるつもりだけども……」


「……何か、そのサービスって。恩着せてるっぽい」


「……え、だめなわけ?」


ため息をつく果歩。


「いえ、そんなサービスって言わなくてもありがたいと思ってますよ。でも、何だか腑に落ちない」


「腑に落ちないねぇ……どうしろって感じだけどな」


ドライヤーの音が響き渡る。


「夕飯くらい一緒に食べてくれても良いじゃないかと思って」


「……努力するけど。独身の智也に誘われるから仕方なく言ってるだけで。行かないでほしいなら直帰するよ? 今まで、果歩、何も言わなかったじゃん」


「そういうの言わなくても普通わからない? まだ、比奈子3歳なんだよ? 小さいんだよ。パパって言ってるんだよ。晃は3歳の頃、両親とご飯食べてこなかったの?」


「言わないとわからないよ。電話とかラインするたび、果歩は楽しんでおいでとか飲んでおいでとか言うから良いんだって思うよね? 俺の3歳の頃? そんなの覚えてないよ」


「そんなの帰って来てって言ったって帰って来た試しがないからだよ。だったら智也さんと結婚すればいいじゃない。一緒にいて楽しいんでしょう。ごめんなさい。楽しい話、持ってなくて。どーせ、テレビ見て、スーパーと児童館にしか行き来してない私の話なんか情報量少なすぎてつまらないものね」


「そ、そこまで言ってない……。智也と結婚するわけないだろ。仕事の愚痴を吐き出してるだけだよ」


「もういい。寝る。おやすみなさい」


(こんな話、するつもりじゃなかった。本当は平和に今後について話し合いたかった。毎日のストレスがたまっていたんだ。

ああ!!)


バタンとリビングの扉を閉めて、比奈子が寝るベッドの隣に果歩は寝た。


こんなに晃と言い合ったのは初めてかもしれない。横になりながら、涙が伝う。

バタンと扉が開け閉めをした音に反応した比奈子。果歩が横になってすすり泣くのが見えた。


静かに頭をなでなでしてあげた。


うまくいかないこと誰にでもあるよねと慰めた。


同じ女性として生まれている以上、わかる部分が大半で、晃の気持ちの方が理解できない。

前世の不倫相手だと知っていたけども、今は同情すら湧いてくる。


同じ仲間だ。

晃という男に振りまわされるうちの1人。

心をかき乱される。安息の地は一体どこにあるというのか。


結局のところ、どんな人にも欠点というものがかならずあって、それを受け入れられるかっていうことになる。

環境を変えても、妻を変えても根本的な女性を大事にするところは

履き違えるやつだと納得する。


比奈子は果歩の頭をギュと抱きしめて眠りについた。

自然と慰められた果歩は安心してそのまま眠っていた。

3歳という小さな体はどこか温かく、包容力があった。

わがままだって言いたくなる

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