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ぐっへへへへへへ 尊ッ
‥タクシーを降り、一ヶ月ぶりの祐希さんの家へとやってきた‥
休むようにと言われたが‥どう してもシャワーを浴びたかった俺は、真っ先に浴室へと向かった。
色んなモノを洗い流したかった‥‥
勇斗の痕跡も‥何もかも‥‥‥。
あまりにも長く入りすぎていたのか‥途中、祐希さんが心配そうにやってきた‥
そして‥浴室から出ると、タオル、洋服が畳まれて用意されていた‥以前と同じように‥
「‥‥‥‥あの‥」
「ん?あっ、藍上がったね、遅いから心配した‥大丈夫だった?」
風呂から上がり、リビングに向かうと俺に気付いた祐希さんが素早く近づいてきて、体調を気遣ってくれる。
話したいこと、聞きたいことがたくさんあった‥
でも、なんて言えばいいのか‥‥
躊躇っていると、先に寝てていいよと言われ‥聞くタイミングを逃してしまう‥
その後、祐希さんは浴室へ。
俺は一足早く寝室へと向かった。
祐希さんの寝室‥‥。
一ヶ月前、暫く会わないようにしようと言われた日の事を思いだす。
‥‥距離をおいて‥‥
何か変われたんだろうか‥
俺は変わらず祐希さんが好きだ‥でも、祐希さんは‥‥あの時エリカさんとキスをしていた‥‥
何故?
勇斗の家に来てくれたとき、俺を嫌になる事なんて一度もないと言ってくれたのに‥
なら何故、彼女とキスをしていたんだろうか‥
祐希さんの心が分からない‥
やっぱり、祐希さんはエリカさんが好きになってしまったんだろうか‥
もし‥‥‥‥‥
そうなら‥‥‥‥‥
俺は‥‥‥‥どうするのか‥‥‥‥
ゆっくりと自分の気持ちと向き合ってみる‥
祐希さんと付き合ってからのこと、一度別れた日のこと‥
色々あった‥
でも‥‥‥‥‥
結局最後に辿り着くのは、祐希さんが好きだということだけだった‥‥‥。
俺にはそれしかない。
でも‥‥‥‥それがあればいいのかもしれへんな‥
答えはずっと俺の心の中にあったんだ‥‥‥。
「藍?まだ起きてたの?」
休んでてもよかったのに‥そう言う祐希さんに話がしたい‥と彼の目を真っ直ぐに捉え伝える‥
わかった‥と、ベッドの端に腰掛けて祐希さんがゆっくりと俺を見つめる‥。
「‥祐希さん‥‥」
「ん?」
「この前‥‥距離を置こうって言われた日、酷いこと言ってごめん‥」
ううん‥俺の言葉に頭を振って いいよ。と言ってくれる‥。
「‥本当は祐希さんのCMを見てからずっとモヤモヤしてたんよ‥祐希さんを好きだって素直に言える彼女を見てから‥俺とは違うんだって‥」
「‥‥‥‥‥」
「祐希さんと一緒におるとお似合いやし、これが普通なんだろうって‥分かってるけど、それが嫌やった‥でも、言えんかった‥」
「‥‥うん」
「あの日‥祐希さんから匂いがしたんよ‥彼女、エリカさんの香水‥珍しい匂いだったからすぐに気づいて‥なんで、この匂いが祐希さんからするんだろうって思ったら‥めっちゃ不安になって自分の気持ちを止められなかった‥」
‥話してる途中、祐希さんが俺の横に来て、そっと頬を拭う‥泣くまいと思っていたのに涙が止まらなくなってしまったから‥。
「俺にはないんよ‥祐希さんが俺を好きでいてくれる自信なんて‥。だから、怖かった‥いつか、離れていくんじゃないかって‥祐希さんはいつか俺を捨てていくんじゃないかって‥‥」
みっともないぐらいに涙が溢れる‥。
我慢しようと思うのに‥。
「藍‥‥」
祐希さんはそんな俺を隣から優しく抱きしめてくれる。
「話してくれてありがと‥不安だったよね‥ごめん」
背中をトントンと叩かれる‥。
「‥あの日、エリカさんの香水がしたのは‥きっと廊下で気分が悪くなった彼女を抱えて移動したからだと思う。困ってたみたいだから、次の撮影場所まで連れて行ったし‥あの時ちゃんと説明しなかった俺が悪かった‥ごめんな」
「グスッ‥そうなん?」
知らなかった‥。いや‥あの日、祐希さんは何か伝えようとしたのに‥それを俺が、さえぎったんだった‥聞くのが怖かったから‥
「藍‥俺はエリカさんは好きじゃないよ。いつだって俺が愛してるのは藍だけなんだ、藍以外は考えられない‥だから不安になることはない。俺の心は藍がもっているんだから‥出会った時から俺は藍しか見てないよ‥」
優しい声で囁くと俺の唇にそっと唇を合わせてくれた‥。
「‥でも、ならなんでキスしてたん?」
確かめなければならない‥あのとき見た光景を‥
「キス?何のこと?」
「‥二軒目のお店の廊下の隅で‥キス‥してたやん‥エリカさんと。俺、見たし‥」
思い出すとまた泣けてきた‥
「エリカさんと?俺が?いや!してないよ!」
「ううん、俺からは祐希さんの背中しか見えんかったけど、エリカさんの方に屈んでて、2人の顔が近づいてたから‥」
そこまで言うと、祐希さんは少し考え、ああ‥と何か思い出したようだった‥
「もしかして、エリカさんが気分が悪くなったって言ったから廊下まで出て落ち着くまで待ってたんだけど。彼女に寄りかかって来られたとき、コンタクトがズレてそれを気にしてたら、見せて欲しいって言われて屈んだと思うんだけど‥」
「‥‥そうなん?」
「俺は藍に嘘はつかないよ。誓って、キスはしていない」
「‥キスしたんやと思った。あの時エリカさんと目が合って‥俺を見て笑ってたから‥」
良かった‥キス‥してないんや‥
ずっと苦しかった胸の痛みが少しずつ薄らいでいくのを感じながら、祐希さんをみあげる。
そんな俺の顔を優しく撫でながら、口元の傷をそっと指で押さえられ‥
「痛くない?」
「少しピリッとするだけで、全然平気」
「勇斗が‥やったんだよね?」
祐希さんの顔には今までに見たことがないぐらいの激しい怒りを感じた‥。
「‥うん、でも、勇斗はずっと俺の事を気にかけてくれてて‥あの行為は許せないけど、憎む気持ちはないよ‥それに‥」
言っていいのか躊躇う事実‥。
でも、言うしかない‥‥‥。
「祐希さん、ごめん!俺‥祐希さんから貰った指輪‥‥無くして‥ずっと探してたけど見つからなくて‥ほんま、ごめん!」
大事な指輪を無くした事を告げる‥
「それを勇斗がずっと探しててくれたんよ‥一緒に‥でも、見つからなかった‥祐希さん、ごめん‥」
祐希さんの顔を見つめることが出来ず、思わず俯き、涙がポロポロと伝い落ちる‥。
そんな俺にちょっと待っててと祐希さんは呟くと、寝室から出て、すぐに戻ってきてくれた‥
同じ俯いた姿勢でいる俺の右手をそっと握る‥
「藍‥見て‥」
そう祐希さんに言われ、自分の薬指を見てみると‥
無くしたと思っていた指輪がはめられていた‥!
「えっ!?な‥なんでこの‥指輪が!?」
信じられなくて自分の薬指を凝視する。でも、確かにあの指輪だった‥。
無くしたと思っていた指輪‥。
「良かった‥よかっ‥たグスッ」
安堵すると共に、また泣けてきて‥
でも、何で祐希さんが持っているのか‥不思議に思い祐希さんの顔を見上げる‥
「指輪‥‥エリカさんが拾ったって言ってたよ。それを勇斗が持ってたから、返してもらった‥藍のものだからね‥」
そう言うと、指輪をはめた薬指にそっと唇を捧げる‥
「俺は勇斗を許さないよ、藍を傷付けたことはね‥」
祐希さんの手が‥俺の口元の傷を撫でる、そして‥
「藍‥‥‥嫌だったらハッキリ言ってもらっても構わない。無理強いはしないつもりだから‥」
「‥‥‥?」
「藍‥‥‥誰よりも愛してる。今までもこれからも‥ずっとお前だけを想っているから、忘れないで。辛いときや不安になった時はいつでも話して?2人で乗り越えていこう‥。‥そしてごめん、俺‥‥どうしてもお前を抱きたい‥こんな時なのに‥感情が抑えきれない‥ダメかな?」
真っ直ぐな祐希さんの瞳には、俺だけが映っていた‥‥。
返事の変わりに、形の良い綺麗な唇に自ら唇を重ねる‥。
祐希さんの鼓動を聞かせて‥‥。
そう伝えると、ゆっくりとベッドに押し倒される‥‥。
俺の上に覆いかぶさる祐希さんの重さがたまらなく愛しく思えて、その背中に‥手をまわす。
決して離れないようにと‥‥‥‥‥。