テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ご本人様には一切関係ありません
m!ki
24,272
情も義もあるキノコン
1,988
2,547
#そのじん
ぬま子
4,334
「…ねえ、はやちゃん…さっき来たメッセージでは、お…私の喉の調子を心配する内容を送ってきてたけど…」
スマホの画面を見つめたまま、不安そうに睫毛を伏せる。その細い肩は、仲間に嘘をつき続けている罪悪感で少しこわばっていた。
「…多分、舜太のことだから、喉の不調なんて建前で…本当は何か別の隠し事があるって、薄々気づいてんだろうな」
「…うん。あの様子だと、絶対に納得してないよ …これから、探りを入れに個人的に連絡とかしてくるかな?」
「来るかもな…いや、アイツの性格なら、遠回しじゃなくてストレートに突っ込んできそうだけどさ」
「どうしよう、はやちゃん…隠し通したほうがいいのかな、それとも…」
「…どうするかな。事務所のこともあるし、簡単に『全部話そうぜ』とは言えねぇけど…」
少しだけ考え込むように視線を落とす。隠し事のせいで、仲間との間に見えない亀裂が入るのは一番避けたかった。だが、今のこの信じられない状況 を…果たしてどこまで信じてもらえるだろうか。
「…とりあえず、もし舜太から直接連絡が来たら、変にごまかしてボロ出すより、俺からうまくかわすか…あるいは、仁人と一度相談して、どこまでなら話していいか作戦を立てるかだな」
「うん…迷惑かけて、本当にごめんね、はやちゃ…」
「だから謝るなって。じゅうは今、俺の世界で一番大事な可愛い子なんだから、そんな心配で顔を曇らせるなっての」
少しでも緊張を和らげようと意地悪く微笑んで見せると、照れくさそうに頬を赤らめ、小さくため息をついた。
「…ねえ、はやちゃん…」
「ん?」
名前を呼ばれて振り返った瞬間、俺の唇に自分のそれをそっと重ねた。
「っ…不意打ちは、ズルいだろ…」
心臓が跳ね上がるのを感じながら、思わず息を呑む。そんな俺の反応を見て、じゅうは悪戯っぽく、でもどこかとろけそうな笑みを浮かべた。
「…ふふ、そうやって驚く顔…凄く好きだな…」
どこか小悪魔的な、けれど愛おしさが全開の笑みを浮かべたまま、今度は逃げ場を塞ぐようにしっかりと首元に手を回す。
そして、先ほどとは打って変わって、熱の篭った深いキスを落とした。
「…っ…ん…」
「…っ…」
柔らかい感触と、じゅうから香るほのかな甘い匂いに、理性が音を立てて崩れていく。 不安や隠し事の焦燥感なんて、この熱のなかではすべて溶けて消えてしまいそうだ。
「…っ…お前、男の時からそうだったけど…ホンットに調子を狂わせるようなことばっかしてくるよな…」
耳まで真っ赤にしながら照れ隠しのようにぼやく俺を上目遣いで見上げると、楽しそうに笑う。
「…ふふ、だって、そうやって真っ赤になって驚く顔…凄く可愛いんだもん」
悪戯っぽく微笑みながら、ふわりと俺の肩に頭を預けた。華奢な体温と甘い香りが全身を包み込み、さっきまでの張り詰めた緊張や不安なんて、とうにどこかへ吹き飛んでいる。
男だった頃の面影を残しつつも、仕草や表情の端々に滲む女性としての柔らかさに、また締め付けられるように熱を帯びる。
こんな危機的な状況なのに…と頭を過ぎるが、どうしようもない気持ちに襲われてしまう。
「…っ…分かってんのかよ。」
「…分かってる。だからこそ、はやちゃんに甘えたいの。多分…舜ちゃんの事だから…仕事が終わればきっと…何かしらのアクションは起こしてくるかもしれないし…」
そう言いながら、腰に手を回すとギュッと抱きしめられる。これだけ理性を削られては、最早ある事を頭を過ぎってしまうのは必然なのでは…と錯覚してしまう。
「…しないの?」
「…してる途中で来たらどうすんだよ…」
「…あの2人は今頃収録中なんだよ?だから暫くは来ないと思うんだけどな…それに俺とはやちゃんは恋人同士だし、それなりの事はしてきてたでしょ?だから今更遠慮することなんて…」
「…っ…」
「…やっぱり女になった俺を抱くのが怖いの?」
艶やかな声で『俺』という一人称を迷うこともなく発する。先程の会話で言い直してたのにも関わらず…だ。
「…ああ、確かに怖いよ…この先をしてしまったら…お前が元の姿に戻れなくなってしまうかもしれない…って思うとな。」
「…っ…!」
「…だから、我慢してるのに…っ…そんなに誘惑されたら…っ…」
「…っ…ごめん、はやちゃん…俺…」
「…大丈夫、謝らなくてもいいから…だから…今はこうして抱き合ってよう…な?」
「…うん…」
普段の自分なら、ああやって誘惑されたら間違いなく押し倒していただろうし、じゅうもそれを望んでいたはずだ。けれど、もしものリスク…と頭を過ぎると、どうしても行動に移せない。その申し訳なさに、ただただ強く抱きしめるしか無かった。
【……To be continued】
コメント
3件
更新、ありがとうございます!今回は、優しさあふれる展開でしたね! 山中くんの一人称の使い方や感情の些細な変化が際立っていました。物語になっていない部分も想像させるような話になっていて、あくまで主観ですが、手がかかっているのがわかります。 少ない口調で、それぞれの雰囲気が出ていて感情移入してしまいました。 次回の更新も心待ちにしています。
はうさん、第10話の感想を聞かせてくださってありがとうございます。 じゅうの“しないの?”には心臓が跳ねました。はやちゃんが「この先をしてしまったら…戻れなくなるかも」と自制する切なさ、すごく響きました。あの理性と欲望の綱引き、すごく好きです。 そして、別の二人の関係性も気になる…! 続きが待ち遠しいです。