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#ファンタジー
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#ファンタジー
――3年後、オルトゥスは1000人規模の街になっていた。
引き続き森に囲まれた場所ではあるが、木材として樹を切り倒してきたため、居住できる土地は増えている。北、南、東には大きな道が作られ、他の街との交易も活発化してきた。街の中央には大きな広場が作られ、露店や商店が並び、経済活動の中心になっている。住人たちの家も、ある程度のスペースを空けながら、あちこちに建っている。
「あ、リディア様だ! こんにちはーっ!」
「キングも元気ね! 一緒に遊ぼうよ~っ」
オルトゥスに移住してきた者の中には子供もおり、また、ここで生まれた子供も少しずつ増えてきた。様々な種族で溢れる場所。最初はリディアとシオンしかいなかった土地は、今となっては誰がどう見ても街という形になっていた。
「キングは、遊んできても大丈夫よ?」
「ぼよんぼよん」
リディアの言葉に、キングは子供たちの近くに跳ねていった。キングは身体に凹凸を作り、滑り台のような形になっている。……こうなると、子供たちはなかなかキングを離してくれない。
「ふふっ。私はあちこちまわっていくから、キングは家に戻っててね」
「ぼよぼよんっ」
子供たちとも言葉を交わすと、リディアは診療所に向かった。
「レンザンさん、いらっしゃる?」
「あ、リディア様。先生なら、診療中ですわ」
「それじゃ、少し待とうかしら。シャロンは、ここでの仕事はもう慣れた?」
「はい。みなさん、親切にして頂けますので……」
シャロンは開発計画を担当していたが、その役目もほぼ終え、診療所の手伝いをするようになっていた。治癒魔法を使うことができ、レンザンとも話がよく合うのだ。
「薬の追加が必要なら、発注書を出してね。……それにしても、診察室からの悲鳴が凄くない?」
「開放骨折もあって、大変なようですわ。先生なら大丈夫だと思いますが……」
「……ゆっくりお喋りしている場合でもないわね。シャロン、手伝いに行ってくれる? 私も――」
「いえ、リディア様のお手を煩わせるわけには。わたくしだけで、何とかなると思いますので」
「そう? それならお願いね」
診療所の外に出て、改めて辺りを見まわす。かつては畑があったが、今では立派な街の景色になっている。畑は全て、森の外に移されたのだ。それに伴い、デュランもそちらに引っ越しをしている。
……ひとつ問題があるとすれば、森の外であるため、リディアが畑に行くことができないことだ。ただ、農作業は猫獣人たちが中心に行っている。この3年の間に、かなりの人数がオルトゥスにやって来ることができたのだ。
「デュランは真面目だからね。たくさん仕事を与えないと、余計なことを考えてしまうから――……でもそろそろ、少しは仕事を減らしてあげようかしら」
リディアはひとり、そっと口を緩ませた。今のデュランは、完全に仕事に集中している。仮に仕事を減らしたとしても、自分で勝手に仕事を作って来てしまうかもしれない。
しばらく歩いていると、リディアはドワーフの家が並ぶ場所に辿り着いた。この付近はドワーフが陣取っており、酒場すらできていた。ここにあったベロニカの工房も、今では森の中に引っ越している。
「おや、リディア姐さん。こんにちは!」
「あら、ズズさん。こんにちは」
いつも通り、ズズが最初に挨拶をしてくる。他のドワーフも仕事をしながら、続けて挨拶をする。
「先日引っ越してきたゾゾさんは、もう馴染んでいますか?」
「ああ、おかげさまで。最近は鉱石や素材が潤沢だから、生き生きと何かを作ってますよ。……くそぅ、良いときに来やがったなぁ、アイツ……」
「そうは言っても、これまでの積み重ねで、今のオルトゥスがあるんです。ズズさんも、それは誇ってくださいね?」
「まぁ……うん。そうなんですけどね……」
ズズは腹落ちしていないが、自分を納得させるように返事をする。
「そうだ。ゼゼも何か作っていましたので、追って連絡があるかもしれません。あと、ジジ兄さんがシオンの武器を完成させてましたよ」
「あら、本当に? シオンも喜ぶわ。ところでズズさんは、最近どう?」
「ワシは防具作りが得意なんですが、パッとしませんからねぇ」
「それなら、いろいろお世話になっているお礼です。何か特別な素材を提供しますわ」
「本当ですか!? がっはっはっ、それは腕が鳴りますなぁ!」
その後、他のドワーフたちとも言葉を交わし、希望や不満を吸い上げていく。酒場に寄って、マスターのドワーフからも売れ筋の情報を入手する。リディアは発注書を受け取ってから、酒場を後にした。
「――さて。ついでに、森にも寄って行こうかしら」
森に入ると、巡回していたエルフが声を掛けてきた。エルフもかなり人数が増えてきたが、リディアが新人を教育する機会は徐々に減っていた。エルフ内で、教育する体制が整えられてきたのだ。
「こんにちは。何かおかしなことはあった?」
「いえ、問題ありません! ……ただ、ヘルミナさんのお喋りが多くて」
「相変わらずねぇ……。あとで締めておくわ」
「はい、よろしくお願いします!」
そのまま森に入っていくと、フェルネの姿を見つけた。よくよく見ると、ヘルミナが一方的に話し掛けているようだ。
「あら、ヘルミナ。お口がたくさん働いているようね」
「リディアさん!? ち、違いますよ、今は休憩時間でして……」
「それなら良いけど、お喋りは相手の時間も奪うわよ? そうよね、フェルネ?」
「はい……。主様、助けて頂いてありがとうございます……」
その言葉に、ヘルミナの顔が青くなっていく。
「あたし、向こうの方を巡回してきますから! あ、そうそう。あとは向こうの山側の調査もしないとナー!?」
ヘルミナは樹の枝を飛び移りながら、森の彼方に消えていった。彼女は森の巡回に加えて、各種素材の採取ポイントの探索も行っているのだ。実際に良い仕事はしているものの、ひとりで過ごす時間が多いため、サボりの疑惑は未だに掛けられ続けている。
「はわわ……。ヘルミナちゃんも、頑張ってるということで……。あ、そうだ、主様。果物の栽培計画について、他の子から相談が来てまして……」
「本当に、あなたたちは働き者ね。もっと増員した方が良いと思うんだけど……」
ドリアードは今、フェルネを含めて4人が森に暮らしている。森の東西南北で担当が分かれていて、どれだけ美味しいものを実らせるか、どれだけ大量に実らせるか――そんなことを競い合うのが、最近のブームなのだとか。
しばらくフェルネと話をして、その後は森の奥に進んでいく。すると、かなり大きな家が見えてきた。
「ベロニカ、いる?」
「あら、リディアじゃない。アタシは休憩中よ~」
そうは言いつつも、まわりでは妖精や獣人たちが一生懸命に働いている。彼女は今、職人を雇いながら工房を拡大中なのだ。
「外は静かなのに、やっぱり中は賑やかねぇ」
「そんなの、鍛冶だって錬金術だって同じでしょう。それで、今日は何?」
「ブラガとラーナから納品があったの。それを届けに来たのと、あとは様子見ね」
「手間を掛けるわね。前の場所なら近いけど、今は森の中だからねぇ」
自然に囲まれた場所が良い……ということもあったが、ベロニカは自身の足を見られるのが得意ではない。そのため、人口が増えるに従って暮らしづらくなったのだ。
「ううん、大丈夫よ。私の家にも、気軽に遊びに来てくれると嬉しいわ」
「はぁ、以前が懐かしいわぁ……。フェルネちゃんと一緒に、デュラン君を追い掛けまわしたり……」
「今でもたまに、夢にうなされるらしいわよ?」
「思い出にしてもらって、嬉しいわぁ」
「……そういうものかしら?」
ベロニカの休憩時間が終わると、リディアは彼女の工房を後にした。街の様子を見ながら家に戻る途中、剣術の訓練をする住人の姿を見かけた。街が大きくなるにつれて、問題が起こることもあるし、自衛の手段も持たなければいけない。最近ではこの認識が住人たちにも広がり、何かしらの訓練を行う者が増えてきた。
基盤となる場所が強くなれば、きっと自分の目的も果たしやすくなるはず――そんな思いで作り始めた、オルトゥスという街。しかし今は、単純にこの存在が愛おしくなっていた。
「――さて。そろそろ戻ろうかしら、愛しの我が家に」
かつて彼女が、シオンと共に暮らしていた丸太小屋。その横には立派な屋敷が建ち、今ではそこで、シオンが待ってくれている。使用人も何人か増え、アルマが統率している。リディアは口元を緩ませながら、彼女たちの家に戻っていった。
コメント
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わあ、3年後…! オルトゥスがしっかり街になってて、感慨深いですね。リディアがみんなと交流しながら街を回ってる姿が、ほんとに「街の母」って感じで好きです。キングが滑り台になってるシーン、可愛すぎました🥺 ベロニカの「デュラン君を追い掛けまわした」思い出話も、ほっこりしつつ笑った。愛しの我が家に帰るリディア、幸せそうで良かったです🌙