テラーノベル
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薄暗い地下室。
カビと鉄錆の匂いが混じり合うその場所で、銀時は椅子に深く腰掛け、手元で弄んでいる真選組の隊服を見つめていた。
「……旦那、いい加減にしてくだせェ。土方さんに殺されやすぜィ?」
部屋の隅、手首を頑丈な鎖で繋がれた沖田総悟が、低く掠れた声でそう吐き捨てた。
かつての鋭い光を放っていた瞳は、数日間の暗闇と銀時の執拗な視線によって、僅かに濁っている。
「土方、土方って……。お前、あんなマヨラーのどこがいいんだよ。あいつは今頃、お前が書き残した『探さないでください、死にます』って置き手紙信じて、葬式の準備でもしてんじゃねーの?」
銀時はヘラヘラと笑いながら、沖田の元へ歩み寄る。その足音一つに、沖田の肩が微かに跳ねた。
(……狂ってやがらァ、)
沖田は奥歯をギュッと噛み締めた。
あの日、路地裏で背後から襲われた時、一瞬見えた銀時の目は「白夜叉」そのものだった。
甘えも、怠惰も、万事屋としての優しさも一切ない。ただ、獲物を捕らえ、誰にも渡さないと決めた獣の目。
「俺はよォ、総悟。お前が真選組で笑ってるのが、ずっと気に入らなかったんだわ。近藤に甘えて、土方に噛み付いて……。お前の視界に、俺が入る隙間なんて一ミリもねーんだもんな。」
銀時が沖田の顎を強引に持ち上げる。
その指先に込められた力は、骨が軋むほどに強く、
「旦那、それはただの逆恨みでさァ……。離せ、気持ち悪ィ」
「ああ、気持ち悪くていいよ。お前が俺を嫌えば嫌うほど、俺以外の奴の記憶が消えていくんだろ? 憎しみでもなんでもいい。お前の全部を俺だけで埋め尽くしてやる」
銀時の瞳にあるのは、剥き出しの独占欲だ。
片思いなんて、そんな可愛らしい言葉では到底片付けられない、ドロドロとした執着。
「……アンタ、本気で言ってんですかィ、んなことしたって、俺がアンタを愛するとでも思ってんですかィ?」
「愛? そんなもん、いらねーよ。お前がここで、俺が来る足音だけを待つようになれば、それでゴールだ」
銀時は懐から、沖田がいつも愛用していたアイマスクを取り出した。
それを、抵抗する沖田の目に乱暴に被せ、
「視界を塞げば、音に敏感になるだろ? 俺の声、俺の体温、俺の匂い……。それだけを覚えてりゃいいんだよ」
視界を奪われた沖田は、暗闇の中で激しく呼吸を乱した。
(嫌でさァ、死んでも屈しねェ……。土方さん、近藤さん、ザキ、姉さ、……)
必死に大切な名前を反芻するが、耳元で聞こえる銀時の
「お前は俺のモンだろ?」
という低く甘い囁きが、じわじわと脳内を侵食してくる。
「ほら、震えてんじゃねーよ。……可愛いぜ、総悟」
銀時が沖田の耳朶を甘噛みし、鎖をジャラリと鳴らした。
沖田は、自分の内側で「侍」としての誇りが、銀時の歪んだ熱に溶かされていくのを感じていた。
逃げ場のない、銀時だけが知るこの「檻」で、彼が完全に壊れるまでの秒読みが始まっていた。
コメント
1件
うわ……重い、重すぎる……でも、すごく引き込まれた🥀 銀時の執着が「愛」じゃなくて「独占」ってところがもう、本当に狂っててゾクゾクした。沖田が必死に名前を思い出そうとしてるのに、銀時の声で侵食されていく描写が切なくて、でも美しかった。 この檻から出られる日は来るのかな……続きが気になるよ。
NAGI