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将軍が消え去った後、大広間に静寂が訪れる。しかしその静寂を破るように、奥の間の障子が音もなく開いた。
そこに現れたのは、幼い少年と少女。二人とも整った顔立ちに、将軍の気高さを思わせる威厳があった。
少年が一歩前に出て雅也たちを睨む。
「父上を殺したのは、お前たちだな。」
加藤が肩をすくめながら答える。
「まさかこんなガキが出てくるとは思わんかったな。おい雅也、これどうする?」
雅也は冷静な目で少年を見つめる。
「話を聞くつもりやけど、何をする気かによる。」
少年は手に握られた小刀を持ち上げた。
「父上は我々に異能を受け継がせた。俺たちが新しい幕府を築く。そしてお前たちはその邪魔をする敵だ。」
少女が震える声で少年を引き止める。
「兄様、やめて……私たちだけじゃ、無理よ。」
少年は振り返らずに言い放つ。
「黙れ!父上が残したこの“力”で、俺たちは幕府を復活させるんだ!」
その瞬間、少年の目が光り始めた。彼の異能が発動し、部屋の空間が歪む。雅也が剣を構えると、少年の体から巨大な武具が現れた。それは、将軍が隠し持っていた最後の異能の象徴――「世界の槌」だった。
加藤が驚愕した顔で呟く。
「これは、十魂以上の力やと……?」
少年は雅也に向けて槌を振り下ろす。その一撃が地面を砕き、周囲に強烈な衝撃波を生む。雅也が空間を切り裂いて回避すると、加藤が前に出た。
「ガキの癖にやるやんけ。でも、俺らを甘く見たら痛い目見るで!」
加藤が六魂の一つ、風狼刀を構え、少年に突進する。一方、雅也は冷静に少年の動きを観察しながら、次の一手を考える。
一方で、少女は震えながらその様子を見守っていた。彼女の手の中にも異能が宿る小さな装飾品が握られていたが、戦うことを拒んでいた。
雅也が一瞬だけ少女に目を向け、静かに語りかける。
「お嬢ちゃん、そっちの手に握ってるもん、それも異能か?」
少女はハッとしてうなずく。
「でも、使いたくない……これで戦えば、またみんな傷つくから……。」
雅也が微笑む。
「それでええ。戦うんは、俺らで十分や。お前はお前のままでおればええ。」
少年の猛攻を耐えながら、加藤と雅也は隙を作り出すことに成功する。雅也の剣が少年の槌を弾き、加藤の天雷剣が異能を封じ込める決定打を放つ。
少年は槌を失い、地面に倒れ込む。雅也は剣を下ろし、静かに告げる。
「これ以上続ける必要はあらへん。お前らには違う道があるはずや。」
少年は涙を浮かべながら、震える声で答える。
「父上の遺志を……守れなかった……。」
雅也は膝をつき、少年の肩に手を置く。
「遺志を守るんやなくて、自分の生き方を探すんや。それがほんまの強さや。」