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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
好きな女───?
その言葉の持つあまりにも巨大な質量に、頭の芯がジーンと痺れる。
ベッドに押し倒され、完全に身動きが取れないこの異常な状況。
私の混乱を見透かすように、叶人くんの切れ長な瞳が、いたずらに細められた。
「その反応だと……きっとセックスも未経験だろうし、キスも初めてだよね」
「っ、き、気づいてたの……っ!?」
心臓が跳ね上がる。
必死で隠し通してきたはずの防壁が、あまりにもあっけなく崩れ去った瞬間だった。
「社内の噂なんて、最初から全部嘘だって分かってたよ」
叶人くんは私の耳元にゆっくりと顔を寄せ、熱い吐息とともに
低く、鼓膜を心地よく震わせる声で囁いた。
「すぐ顔に出るさっちゃんの『経験豊富』なんて大嘘、俺が見抜けないとでも思った?」
(うそ、最初からお見通しだったなんて……)
あまりの恥ずかしさに、消えてしまいたくなる。
だけど、ここで「はい、そうです」と認めてしまったら、これまでの見栄がすべて水の泡だ。
もし会社の人たちにバラされたら、私の居場所はなくなってしまうかもしれない。
恐怖と羞恥心が綯い交ぜになり、私は思わずムキになって言い返した。
「…う、嘘じゃないもん……っ!私だって、ちゃんと経験あるんだから!」
浅はかな抵抗だった。
「───なら、俺のちんこも咥えられる?」
「え……」
世界が静止したかと思った。叶人くんの口から飛び出した、あまりにも生々しく卑猥な単語。
彼の声音は低く、そしてどこか冷徹な響きを帯びていた。
「…そんなに経験豊富だって言い張るならさ。さっちゃんの自慢のテクニック、今ここで俺に見せてよ」
背中に走るベッドの柔らかい衝撃。
そして、目の前を完全に覆い尽くす叶人くんの大きな体躯。
その圧倒的な雄としての質量に気圧され、呼吸の仕方を忘れてしまう。
「え、えっと……」
逃げようと突き出した私の両手首は、彼の手によってあっけなく捕らえられた。
そのまま、シーツに縫い付けられるようにして頭の上へと押し上げられ、彼の片手だけで強固にホールドされる。
「本当に嫌なら、抵抗して」
みしり、と手首に加わる力強い圧迫感。
男の人特有の、骨張った大きな手の熱が皮膚を通して直に伝わってきて
心臓とは別の、体の奥の深いところがじんわりと熱くなっていく。
両腕を奪われたことで、私の胸元は完全に無防備な状態に晒されてしまった。
見下ろす彼の瞳は、いつもの優しい幼馴染のそれではない。
完全に獲物を追い詰めた肉食動物の、昏くディープな色を帯びている。
私は呆然とした。
明らかにヤバい状況だ。
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