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みく「あ、はてな」はてな「元気そうだね。」

みく「まぁ、熱はあるけどね」

はてな「お大事に〜」

みく「そっか、放送か〜」

はてな「うん、またね」

みく「ばいばーい」


ほんの数秒だったけど、親友と話せるだけで気が楽になる。体調不良になると、この世界に自分しかいない感覚に襲われることがある。誰の声も聞こえなくて、物音すら耳に入ってこない。だからこうやって少しだけでも話せるって言うのは凄くありがたいことだと思う。

はてなは私と違って、いつも笑顔でふわふわしてて、The・女の子って感じ。だから一緒にいるのをおかしいと思われることもあるかもしれない。体調不良になりがちで、一人でいる時間の方が長い私と一緒にいてくれるはてなは大事にするべき友達だ。

はてなが放送室へ向かった少しあとに、また扉が開かれて吉野先生が帰ってきた。


吉野「もうそろそろお母さん着くと思うから、ゆっくりしててね」

みく「はぁい」

吉野「テストどう?」

みく「苦手な範囲ばっかりで……」

吉野「じゃあ頑張んないとね〜」


吉野先生は話しやすい。全先生の中で1番と言っていいほど。私は元々人と話すのが得意じゃないから、こうやって話を振ってくれて、しかも仕事しながらだから目を合わせなくていいのがすごく楽。話しかけてくれる先生は沢山いるし、こっちがあんまり喋らなくても話が進む先生もいる。でもやっぱり男の先生だと眼力というか圧がすごいから話しづらい。


頭上のスピーカーからはてなの声がして、昼の放送が始まった。放送委員はよくやるな、と常々思う。ご飯を早く食べないといけないのに、音楽の合間に次の音楽の曲名と歌手名を言う。この時間に色々な音楽に出会うことが出来るのは放送委員が曲名を毎回丁寧に言ってくれるおかげだろう。それを言ってくれなきゃ、いい曲だと思っても何の曲か分からないし。


昼の放送をBGMに、教科書をペラペラめくっていれば、保健室の電話が鳴る。お母さんが着いたらしい。


吉野「それじゃあ、お大事にね」

みく「はい、ありがとうございました。さようなら」

吉野「はーいさようなら〜」


帰りの車に揺られながら、お母さんと他愛もない雑談をして家に帰る。その後すぐお母さんは仕事に戻って、家には私一人だけ。カップうどんにお湯を注いで5分待つ。蓋を開ければ温かい湯気と美味しそうな香りが立ちのぼる。同時にぐる…と腹の音がなり、手を合わせてひと口すする。


みく「ん…おいひ…」


久々に食べるうどんはなぜこんなに美味しいんだろうか。何日も続くと飽きるものだけど、こういう時は心が温まるからやっぱりうどんが1番いい。

空のカップと箸を片付け、自分の部屋で布団にくるまる。スマホで睡眠導入プレイリストを開き、タイマーをセットして流す。ゆったりと流れる音楽に身を委ねながら目を瞑るも、さっきまで保健室で寝てたこともあってかなかなか寝付くことは出来なかった。



気づけば窓の外は日が傾いてオレンジ色に染まっていた。ぐっすり寝たこともあって体もかなり楽になったし、手元の体温計は36.4の数字を示している。リビングの方へ入ると、お母さんが笑顔で出迎えてくれた。


母「美紅、具合は大丈夫?」

みく「うん、もう熱下がってたし体も特に何も無い」

母「そう。食欲は?」

みく「ある!お腹空いた〜」

母「今作ってるからね〜」


椅子に座ってスマホを開けば数件通知が来ていた。相手は瀬戸くんとはてな。


せと『体調大丈夫?』『時間割送っとくわ。お大事に〜』

みく『寝たら熱も下がったし、もう大丈夫!』『保健室まで送ってくれてありがとう!』


はてな『大丈夫〜?』『明日学年合同授業あるからちゃんと寝て体調治してよ〜!』

みく『うそ、合同授業?!』『もう熱下がったから明日は行けるよ〜!』『心配ありがとね!』


とりあえずサッと返信を済ませて、瀬戸くんから送られてきた時間割を見る。確かに5時間目と6時間目は総合で学年合同となっている。2学期に入って文化祭も近づいてきたからそれの話かな……。ふと保健室まで荷物を届けてくれたのが藍ちゃんだったのを思い出し、お礼の連絡を送るとすぐに既読が付いて返信が来た。


みく『荷物保健室に届けてくれてありがとう!』

らん『全然!ちゃんと寝てね!お大事にしてね!』


直接話さなくても元気さが伝わってくる文面に、少し笑ってしまった。そのままタプタプとスマホをいじっていれば、キッチンの方からいい匂いが漂ってきた。


みく「お母さん、今日のご飯なぁに?」

母「今日はししゃもと炊き込みごはん。ちゃんと食べてよく寝ること!」

みく「はーい」


先にお風呂が沸いたのでお風呂に入り、出てきたらお父さんが帰ってきていた。おかえり、と挨拶をして席に着く。何気ない一家団欒。今日あったこと、次の休みにやりたいこと、テレビを見ながらそれにツッコミ。


13年の間同じように感じてきたこの幸せな空間が今日で終わることを、私は全く想像もしていなかった。

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