テラーノベル
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昼頃、扉をノックして母さんが入ってきた。「友和。お昼ご飯できたわよ。降りていらっしゃい」
失敗した。
いらないって言っておけばよかった。
でも、母さんがせっかく用意してくれたんだ。
それを無駄にするわけにはいかない。
「ありがとう」
俺は部屋から出て、階段を降りた。
ミートソースのスパゲッティだ。
前は好きだったが、最近は食べてない。
割と量が多い……。
1.5人分はあるんじゃないか?
昔から母さんはたくさん食べて大きくなりなさいが口癖だったから、量が多くする癖がある。
「いただきます……」
スパゲッティをお茶で無理矢理流し込む。
これは食べるというより、胃の中に押し込んでいるようだ。
「夜ご飯はどうする?」
「大丈夫……多分学とどっかで食べてくるから」
「そう……。学君によろしく伝えておいてね」
母は何か言いたそうだった。
おそらく綾葉のことだ。
今の交際相手と殺されたことをニュースで知ったんだろう。
なんて言葉をかけていいかわからないようだ。
「ただいま~」
沙和子が帰ってきた。
「お帰りなさい沙和子。お昼ご飯は?」
「大丈夫だよ。済ましてきたから」
そして俺の方に目線が行き
「あ……友和じゃん! ニュース見たよ!」
開口一番そう言い放った。
最悪だ。
「大沢さんが殺されたんだって? 交際相手と一緒に殺されたって聞いたけど、捨てられて頭きちゃったんだー。こわ」
違う俺は何もしてない。
あいつらがどうなったって俺は。
ぐっと堪える。
何を言っても信じてもらえそうにない。
「やめなさい!沙和子!」
母さんが怒鳴る。
「友和が……そんなことするわけないでしょ……」
母さん嘘をつかないでくれ。
母さんも俺のこと疑ってるくせに……。
「えー。でもいちばん怪しいのはこいつじゃん。マジで困るんだけど……。家族に人殺しがいるとか」
「沙和子!」
母さんが再び怒鳴った。
あまり怒鳴らない母が二度も怒鳴ったことで、沙和子は黙った。
数秒の沈黙のあと、沙和子が口を開いた。
「はいはい。ちょっとした冗談じゃん。私、部屋にいるから」
沙和子はそう言い残して去っていった。
「友和。あなたじゃないんでしょう? 私は信じてるからね……。」
嘘はやめてくれ。
俺を見る目と言っている言葉がまったく違うじゃないか……。
「俺、学との待ち合わせ時間まで部屋にいるよ。ご馳走様」
「友和……」
俺は部屋に戻ってベッドに横たわった。
目の前にベースが置いてある。
すっかり弦が錆び付いてしまっている。
学生時代に弾いてたけど、俺はセンス無かったなぁ…。
ギターボーカルの学、リードギターの武、ドラムは綾葉だった。
学は歌が上手いだけでなく、ギターもしっかりこなしてたし、綾葉はかなり細身なのにパワフルなドラムだった。
武はギターがとても上手かった。
それだけ音楽への情熱が俺らよりも強かった。それで高校卒業後に1人で音楽やっていくって、音信不通になったんだ。
アイツは今どこで何をしてるんだろう?
もうあの頃には戻れないな。
そう思い目を閉じた。
るしゅ
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コメント
3件
ああ、このエピソード、胸がぎゅっとなりました……。母が作ってくれたミートソースを無理やり飲み込む友和くんの描写が、もう痛いほど伝わってきて。沙和子の軽い口調と、母の「信じてる」と言いながら目が違うっていう気づきも切なくて。ベースの弦が錆びてる場面も、もう戻れない時間を感じさせて、じんわりきました。Augusteさんの心理描写、とても繊細で好きです。