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朝から、胸の奥が落ち着かなかった。
理由は分かってる。
ぷりっつ(……今日、来る)
リビングに全員そろってるのも、たまたまじゃない。
玄関のドアが開く音。
【あっきぃ】「……ただいま」
その声で、心臓が強く鳴った。
ぷりっつ(帰ってきた)
でも、空気が違う。
知らない人の気配がある。
【あっと】「……帰ってきたのか」
【けちゃ】「結局、戻るんだ」
【まぜ太】「は?」
【ぷりっつ】「……」
【ちぐさ】「……」
【あっきぃ】「……荷物、取りに来ただけ」
その一言で、頭が真っ白になる。
ぷりっつ(……取りに、来ただけ?)
兄たちが一斉に声を荒げる。
【あっと】「は?」
【けちゃ】「どういう意味」
【あっきぃ】「……しばらく、別のとこで暮らす」
【まぜ太】「ふざけてんの?」
【あっと】「戻れ。勝手なことすんな」
【あっきぃ】「……勝手じゃない。俺、決めたから」
俺は、何も言えなかった。
言葉が遅れた。
ぷりっつ(……違う。それ、言い方が)
あっきぃの背中が、前よりずっと小さく見える。
階段を上がろうとするのを見て、
やっと声が出た。
【ぷりっつ】「……あっきぃ」
振り向いた顔が、怖いくらい落ち着いてる。
【ぷりっつ】「……戻ってこい」
言った瞬間、
自分でも分かった。
ぷりっつ(遅い)
【あっきぃ】「……ごめん」
【ぷりっつ】「俺が、ちゃんと——」
【あっきぃ】「違う」
はっきり、遮られた。
【あっきぃ】「誰かが変わるの、待てない」
胸を、殴られたみたいだった。
ぷりっつ(……待たせてたの、俺らだ)
部屋に入っていく足音。
その間、誰も動かない。
後ろにいたちぐが、あっきぃに話しかけた。
【ちぐさ】「……あき兄」
【あっきぃ】「…なに」
【ちぐさ】「……いなくなるの?」
【あっきぃ】「……いなくならない。ただ、
ここに住まないだけ」
その言い方が、
“戻らない”って言葉より重かった。
リビングで重たい空気の中、みんなは動かなった。
いや、動けなかった。
階段を降りてきたあっきぃは、
リュック一つしか持ってなかった。
ぷりっつ(……それだけ?)
【あっと】「なあ」
【あっきぃ】「……なに」
【あっと】「戻ってこい」
また、同じ言葉。
【あっきぃ】「……今は、無理」
【あっと】「家族だろ」
【あっきぃ】「……だから」
一瞬、間が空く。
【あっきぃ】「壊れない距離、選ぶ」
その言葉で、全部分かってしまった。
ぷりっつ(……俺らと一緒にいたら、壊れるって)
玄関。
知らない人の気配の正体は、
前に校門で会った赤髪の人と青髪の人だった。
あっきぃが靴を履く。
【けちゃ】「逃げるなよ」
【あっきぃ】「……逃げじゃない。生き方だよ」
青髪の人が、一歩前に出る。
【ころん】「行こ」
【莉犬】「うん」
ぷりっつ(……守られてる)
悔しいけど、
それが、ちゃんとした守りだって分かる。
ドアの前で、あっきぃが振り返る。
【あっきぃ】「……また、話せる日が来たら」
【あっきぃ】「そのときは、ちゃんと話す」
返事、したかった。
でも、声が喉に突っかかって出なかった。
ドアが閉まる。
外が、急に静かになる。
【あっと】「……」
【けちゃ】「……」
【まぜた】「……」
【ちぐさ】「……」
【ぷりっつ】「……」
胸の奥が、遅れて痛くなる。
ぷりっつ(……俺、何もできなかった。いや、違う。
……何も、してこなかった)
あっきぃのいない玄関が、
思ったより、広かった。