テラーノベル
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ドアが閉まったあとも、しばらく沈黙が続いた。
「……」
空気が重い。
さっきまで外にいたはずなのに、ここはまるで別の世界みたいだった。
「……で、」
最初に口を開いたのは、らんだった。
「なんで連れてきたの、いるま」
冷たい声。
責めているわけじゃない。
でも、歓迎もしていない。
いるまは少しだけ視線を落とした。
「……行く場所、なかったから」
「それだけ?」
「……」
答えない。
その沈黙が、答えだった。
「……はぁ」
らんはため息をついた。
「……好きにすれば」
それだけ言って、ソファに座り直した。
許したわけじゃない。
ただ、追い出さなかっただけ。
それだけ。
「……」
こさめは、立ったまま動けなかった。
みんなの視線が刺さる。
知らない人たち。
知らない場所。
怖い。
逃げたい。
「……こさめ」
小さく、名前を呼ばれる。
いるまだった。
「……こっち」
手を軽く引かれる。
強くない。
無理やりじゃない。
ただ、離さないように。
その手の温度だけが、唯一の安心だった。
「へぇ」
今度は、なつが近づいてきた。
じっと、こさめを見る。
「……ずいぶんボロボロだね」
「……っ」
こさめの肩が揺れる。
無意識に、いるまの後ろに隠れた。
その瞬間、
なつの目が少しだけ変わった。
「……」
何かを察したような顔。
でも、何も言わなかった。
「部屋、空いてるの?」
誰かが聞く。
「ああ」
いるまが答える。
「奥」
「……そ」
それだけで会話は終わった。
廊下を歩く。
古い床が、ぎし、と鳴る。
こさめは、ずっと俯いていた。
「……ここ」
いるまがドアを開ける。
小さな部屋。
ベッドと、机だけ。
何もない。
「……今日から、ここ」
「……」
こさめは、動かない。
「……嫌?」
いるまが聞く。
こさめは慌てて首を振った。
「ち、ちが……」
声が震える。
「……だいじょうぶ」
それだけ言うのが精一杯だった。
「……」
沈黙。
そして、
「……無理、しなくていい」
いるまが、ぽつりと言った。
「……」
「ここ、誰も無理に話しかけない」
「……」
「……俺も」
「……」
「……必要なときだけでいい」
その言葉は、
優しすぎなかった。
でも、
冷たくもなかった。
ちょうどいい距離。
それが、今のこさめには救いだった。
「……」
こさめは、ベッドに座る。
少しだけ沈む。
柔らかい。
それだけで、
涙が出そうになった。
「……」
なんで、
優しくするの。
なんで、
ここにいさせてくれるの。
わからない。
わからないけど、
ドアの前で、
いるまが立ち止まる。
「……」
振り返らないまま、
「……おやすみ」
それだけ言って、
ドアを閉めた。
一人になった部屋。
静か。
でも、
前みたいな「一人」とは違った。
完全な孤独じゃない。
ドアの向こうに、
誰かがいる。
それだけで、
少しだけ、
怖くなかった。
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