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リセットの実行が完了いたしました、修復プログラムを起動_バックアップを開始…
_▋▋▋
「…どうして」
「…どうしてこんなこと…したの?」
八幡宮は顔を歪ませながら聞いた。
いつ”違和感”を植え付けられるか分からない恐怖からきっと来ているのだろう。
今にも泣きそうであったが、かみさまには目的を聞き出さなくてはならない。
こんなおかしな空間になぜ連れてきたのか?
_どうして違和感を植え付けたのか?
_そのあたりについて、なぜ一切話そうとしないのか?
「…かみさま、どうして…?」
かみさまから靄が消えることはなく、また八幡宮の言葉に返答することもなかった。
かみさまはしばらく歩いたのち
つ「…あぁ、そうか…」
と呟いた。
「…人間は、この空間に長く耐えられない。 」
そう言ってかみさまはこちらを向くと、ニヤリと笑った。
「…どうだった?宇宙を回るのは。」
宇宙の闇にそぐわない白いモヤは、そう言っているが_彼がそもそも人間なのか、それとも別の何かなのかすら八幡宮には分からない。
かみさまは語った。
「宇宙ってのは、本来…俺たちが生きられる環境じゃない。」
「ここが…”先人の再現した場所”だから…俺たちは息ができてるんだ。」
八幡宮は聞いた。
「…なんで?なんで再現したの?」
「先人の考えてることがまるでわかんないんだけど。」
かみさまは答える。
「…推測だけれど、私たち人間の動向を知ろうとしたのではないかな。」
「…そこは答えてくれるんだ?」
八幡宮は困った顔をして聞いた。
いつも振り回す側だったと自覚しているので、される側には慣れていないのだ。
かみさまは、完全にこちらを振り回しに来ている。
「先人の文明は、行くところまで行き過ぎた。」
「…リィン・システムでタヒを消した。」
「プロクティルで自らを兵器とした。」
「…それは…」
途端、かみさまの声が極端にぼやけた。
「…あぁ、そろそろ駄目かな 」
かみさまが冷酷にそう言い放つと、白いモヤがこちらに近づいた。
そして、おでこに微かな冷たさを覚えると_
「またいつか。」
そう言うかみさまの声が聞こえ、まるで弾かれるかのように後ろに押され、倒れ込んだ。
深い深い海に沈むような感覚を覚え、つい、目を瞑ってしまう。
「…」
ただ冷たかった。
心地よさなんてなかった。
ゆっくり、ゆっくりと何かに溶かされているような_嫌な感覚を覚えた。
_しばらく目を瞑っていると、まるでカメラがズームアウトしたかのような感覚を覚え、現実に引き戻されていくのを感じた。
「…はっ!!?」
「はぁ…はぁ…っ。」
「………?」
きょろきょろと辺りを見渡すと、少し遠くの方にレイラーの姿が見えた。
八幡宮は顔_特におでこを触ると、まだ嫌な感覚が残っていた。
_あぁ、これは夢では無いのだと、八幡宮は自覚し、冷や汗が流れた。
しばらく呆然としていた。
動くことが出来なかった。
_5分ほど動けずにいたが、ようやく八幡宮は立ち上がると、ゆっくりとレイラーの居る場所へ歩いた。
「…レイラー、さん」
ふら、ふらと、まるで酔ったかのように歩いて、レイラーの元へ行く。
レイラーは八幡宮の声がしたことで思わず振り返ると、驚いたような顔をし、それと同時に安心したような顔もした。
「…よ、よかった、よかったぁ…!」
レイラーは涙を浮かべ、八幡宮の手を優しく握った。
「大丈夫でしたか…?何もされてないですか…?」
_身体を巣食う、まるで空がひっくり返ってしまうかのような、嫌な気持ち悪さは消えない。だが、この左手からは_かろうじてレイラーの体温を感じることができた。
「ご、ごめん。」
「…私は、大丈夫…」
「…でも」
八幡宮は俯き、呟く。
「…これから…絶対やばいことに、なる…」
「かみさま…は、やばい。」
八幡宮はその知識すらもかなわない存在に大きく動揺し、ふらつきも消えないまま怯えていた。
_莫大もの恐怖が、知識という機能を止めたのだ。
「…私、私は」
「…なにも…」
知るのが怖い_そう感じたのは、初めてであった。
思えば、最近は特に精神がおかしくなっていると感じることが多かった。
_きっと、何度もリィン・システムを使い、実験を繰り返したからだ
「…どうして、どうして私は…」
八幡宮は、途端に涙をボロボロと流し始めた。
これがなんなのか、彼女には到底分からない
_だが、理解してはならないと本能で感じ、震えて眠ることしか出来なかった。
だってそれは_
_恐怖に繋がってしまう。
「…やっとわかったんだ…」
「誰も彼も…未知を恐れる理由、が。」
「八幡宮さん…?」
レイラーは、驚いた顔をしたまま
「どうしたんですか…?貴方は、ずっと未知を求めて…」
そう聞いた。
八幡宮は夜空に目を向けた。
2回、瞬きをして_琥珀色の目に、遠い遠い光が宿ったような感覚に陥る。
その先には、無限とも言える_未知が広がっている。
_ただでさえ先人というものが未知だと言うのに、そのもっと向こうには…
(…あぁ)
(………楽しいのに…)
(それ以上に、怖い…)
(…)
八幡宮は嫌な顔をして額を抑える。
「…急に…怖くなったんだ。」
「…知識を得ることが…ふふ、本当に幸せなのか?って。」
知識や宇宙に打ちひしがれていたと、レイラーは思っていた。
…だが、彼女が星を見つめるその眼の奥の方では_
それでも屈することなぞ知らない_膨大な悦がまるで、炎のように揺らめいていた。
それは輝いて、八幡宮そのものを今にも焦がしてしまいそうだ。
「っはは、あはは!!」
「私、本当におかしいんだ!」
八幡宮は笑った。
草原で仰向けになって、遠くなった星を見て笑った。
_分かっていた。
自分がとうに狂っていることは。
_だが。
「こんなにも怖いのに…知りたくて、知りたくて知りたくて堪らないんだよね。」
「私…ずっとずーっと狂ってるんだ…」
「知りたい…んですか?」
「向こう側に…何があったんですか…?」
レイラーの目には、様々な感情が混じりあっていた。
だが、彼女のその目にもまた_興味に近いものが戻っていた。
知識は_
この知識という化け物は_
狂った人間すらも、歓迎してくれたのだ!