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ゆゆゆゆ
#Paycheck
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夜のピザ屋。
閉店後。
店の灯りはカウンターだけ。
エリオットはピザ箱を片付けている。
チャンスは椅子に座っている。
いつものように。
コインを指で転がしながら。
カラン
エリオットが言う。
「チャンス」
「ん」
「そろそろ帰る?」
チャンスはコインを弾く。
カラン
空中で回る。
パシッ
手で受ける。
「コイントス」
エリオットが笑う。
「また?」
チャンスは手を閉じたまま言う。
「表なら」
少し間。
「帰る」
エリオットの動きが止まる。
「裏は?」
チャンスが肩をすくめる。
「もう少し居る」
エリオットは少し黙る。
それから近づく。
そして――
ネクタイ。
ぐい
チャンスが前に引かれる。
「……」
チャンスが言う。
「癖」
エリオットはにこにこしていない。
少しだけ真顔。
「まだ見ないで」
チャンス。
「?」
エリオットが言う。
「そのコイン」
チャンスは笑う。
「怖いのか?」
エリオットは首を振る。
「違う」
少し沈黙。
夜の店。
外で車の音。
エリオットがゆっくり言う。
「チャンス」
「ん」
エリオットの手がネクタイを少し強く引く。
ぐい
顔が近い。
いつもの笑顔じゃない。
少しだけ困った顔。
そして小さく言う。
「……帰るな」
チャンス。
一瞬止まる。
コインを持ったまま。
「……」
エリオットは目を逸らす。
「コイントスじゃなくていい」
静かな声。
「今日は」
少し間。
「帰るな」
チャンスは数秒黙る。
それからゆっくり言う。
「お前」
エリオット。
「?」
チャンスが笑う。
「ずるいな」
エリオット。
「?」
チャンスはコインを見る。
それから。
カウンターに置く。
カラン
「今日は」
椅子にもたれる。
「コイントス無し」
エリオットが少し驚く。
「いいの?」
チャンスは笑う。
「ギャンブラーにも」
少し間。
「気分ってもんがある」
エリオット。
少しだけ笑う。
そして。
ネクタイ。
ぐい
チャンスが言う。
「やめろ」
エリオット。
少し嬉しそう。
「帰らない?」
チャンスは答える。
「帰らない」