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「それでッ? あたしの船はどうなったのよ? 」


大きく豪華な迎賓室のベッドで目覚めたミューは、平伏す狼人達に凄んでいた。どうやらあのバケモノを討伐した直後にバルザは力尽き倒れ込むと、ドロドロと身体が溶け出し、液体の中から裸の少女が気を失った状態で現れたとの事だった。


―――メタモルフォーゼにも色々なパターンがあるらしい。


「月狼神《つきのおおかみ》様が気を失われた直後に砂地が巨大な渦を巻き、超獣の屍と共に月狼神様の船諸共砂の中へ飲み込まれてしまいまして」


「月狼神《つきのおおかみ》? あぁバルザの事か。じゃあアタシ達の船は砂の中って事? 何で砂になんか飲み込まれたの? それと此処は何処でアンタらは誰よッ? 」


「もっ申し遅れました。おっ畏《おそ》れ多くも私共は…… 」


「あぁうぜぇ、そういうのアタシには要らないからッ。簡単にアンタらは誰で、どうして船が飲み込まれ、そんで此処は何処だっつう話よ」


ミューのただならぬ威圧感に、ダラダラと汗を拭き取る事しか出来ない男達に苛立ちを見せる。ベッドの上で相も変わらず素っ裸で牙を剥き仁王立ちをする少女を前に、目のやり場に困る男達は冷静を装い、恐怖に震える声で続けた。


「わっ我々は太陽系惑星列の端に御座います、惑星レグリウスの北半球に位置するザルディア大陸に居を構えるアルス連合王国の者達で御座います。此処は我々の戦艦内で御座います。月狼神様の船は突然現れた砂の渦に飲み込まれたとの事でして、どうやら砂の下に砂游長蟲《ピュークアンドラ》を捕食しようとしていた何かが潜んで居たのではとの報告です…… 」


「ふぅ~ん。あんなデカいバケモノを捕食しようとなると、そいつも相当って事よねッ? 厄介だな。それで? 気を失ったアタシを惑星レグなんちゃらの戦艦がわざわざ保護してくれたって事? 」


「さっ、然様《さよう》で御座います」


「何でよ? 因みに勘違いしてるみたいだから言っておくけど、アタシはアンタらが言うところの月狼神《つきのおおかみ》じゃないからねッ? てか何で、そもそも月狼神《つきのおおかみ》を知ってるのよ? 」


すると立派な仕立て物を身に纏った取分け白い肌をした人物が顔を上げて申し出た。


「それに関しましては我々の知見と互いの認識を擦り合わせる必要が有るかと」


「こらっ! 貴様失礼ではないか、畏《おそ》れ多くもこちらに御座《おわ》すは…… 」


咄嗟に白い肌の人物が言葉を遮り続けた。


「降臨なさった神であると? しかし少しばかり早計過ぎるのではないでしょうか? 更に慎重な判断と、詳細な確認が必要であるかと思われます。他国との兼ね合いもありますし、結果を急ぐのは分かりますが」


「きっ貴様、貴様もドローンからの映像を確認したではないか、あのお姿は正《まさ》しく我が国の神。月狼神《つきのおおかみ》様のお姿に相違あるまい。何処に疑いの余地が有るというのじゃ? 」


「私が懸念しているのは、こちらに御座《おわ》す神様ご自身に自覚が無いと言う点です」


恐れを知らずに自らの考えを述べるこの人物に、少し興味を惹かれたミューはベッドの上でボスンと胡坐《あぐら》を掻くと、フフンと鼻を鳴らし、その自信に満ちた源《みなもと》を探り尋ねる


「ねぇッ因みにアンタは? 見た所、狼人では無いようだけど? それにその義眼は…… 」


「私はアルス国の王、ラザニール・キャラハン三世の御側付きとして宰相を承っておりますガレオと申します。もう既にお気付きではあるかと思いますが私は金星人《ヴィーニス》種のサイボットロボティクス《サイボロイグ》です」


サイボロイグはアンドロイドが完全に造られた人工人型生命体に対して、生身の一部を機械化《サイボロイグ》し、擬似骸化《ぎじがいか》した者達の名称である。見た目が生身であっても、人工臓器を取り入れた肉体であれば、それはサイボロイグ化であるとされている。


「私は脳の半分と脊髄を機械化《サイボロイグ》しております。アルス国に関する歴史上のデータリンクは史実や神話に至るまで、全て私のこの脳内に記録されております。故に都合の良い宰相と云う役割を王より承っているのです」


「ふぅ~ん。中々にアンタも苦労してそうねッ それで擦り合わせってのは? 」


「そうですね、如何でしょう? ゆっくりと御食事を伴いながらでも」


「甘い物はある? 」


「御用意させて頂きます」


「アンタ話、わかってんじゃない」


「畏れ入ります」


ミューは無意識に舌嘗《したな》めずりを見せる。漸くバルザと入れ替われた貴重な時間が、懇願していた美味しい物へと導いてくれた。思えば真面《まとも》な食事を摂った記憶は無い。精々味気の無い簡易食ばかりだったのだ。


「言っておくけどアタシにも分からない事は有るしッ、言いたくない事だってあんだからさぁ、尋問みたいな感じだったらこの船…… ぶっ壊すわよ? そんでッお前等全員ぶっころだかんな? 」


平伏してる宗教的な派手な装いをした、到底狼人には見えない肥えた豚眼鏡がゴクリと静かに喉を鳴らしボソリと呟いた……


「あぁ…… 神よ…… 」


「あッ⁉ お前今なんか言ったか? 」


「いっいいえ、私《わたくし》は何も――― 」


ガレオはやれやれと平伏すだけの男を横目で遣り過ごすと、ゆっくりと立ち上がり少し頭を垂れるとミューに提案する。


「では早速ご相談なのですが、折角のお食事ですし、お召し物をご用意致したいのですが、ご希望等は御座いますでしょうか?」


「ん⁉ 全裸は正装ですがッ何か問題でも? 」


ドドンと仁王立ちを披露するミューにガレオはプククと笑いを堪え、平伏す男はまた一人呟いた……


「あぁ神よ…… 」


「うひゃひゃひゃひゃッ――― 」

アルヴァルウィンド ~月下の騎士と月の姫~

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