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私にとって最も価値があるのは何なのか? それを知るためにまず私が大切にしているものを考えてみることにする。
家族を大切にするのは当たり前のことであり、これに関しては迷う必要などない。
次に友人であるが、これも悩むことはない。
なぜなら彼ら彼女らは私のことを嫌ってはいないからだ。
もちろん全員が全員そうだとは言い切れないけれど、少なくとも私は嫌われていないと信じている。
最後に恋人……これは少し悩んでしまう。
というのも今まで恋愛というものをしたことがないからである。
そもそも誰かを愛するということがよく分からなかったりする。
それでもいつか愛せる人が現れてくれたらいいなと思う。
さて次は自分が一番好きなものとその理由を考えようと思ったのだが、よく考えたらこれが中々難しいものだったりする。
例えば音楽とかスポーツとかゲームとか読書とか色々とあるけど、果たしてどれが一番好きかというとどれも甲乙つけ難いものがあったりする。
それに何か一つだけを選んでしまった場合、それ以外のものが疎かになっちゃいそうな気がしてならない。
他にも好きな食べ物があったりとかもするんだけどね。
でもとりあえず今はまだ考えなくていいかなとも思うんだよね。
だってまだ高校生だしこれから先の未来でまだまだやりたいこともたくさん見つかるかもしれないから。
だから今は目の前のことに集中したいと思います! ***
「ちょっと待ったー!」
放課後になり、指定された場所に向かうとそこには既に二人の女子生徒がいた。
一人は腕を組んで偉そうな態度を取っている金髪の少女で、もう一人は困った表情を浮かべている小柄な少女であった。
「お断りします!」
先に口を開いたのは小春の方であったが、相手の顔色を窺うような口調ではなかった。
むしろ拒絶の意思を示すかのように強い語調である。
「あら? まだ何も言ってないじゃない?」
それに対して余裕の笑みを見せているのが沙耶架である。
彼女はどんな状況でも堂々としており、決して動揺したりしない。
まさに学園一のお嬢様といった貫禄があり、彼女の周囲には常に人が絶えなかった。
「言いたいことくらい分かりますよ! どうせ生徒会に入って欲しいとかそういう話なんでしょう!?」
対する小春はまだ慣れていないようで、緊張しているせいか表情が固い。
この様子だとまだ学校生活には馴染めていなさそうだ。
そんな彼女に僕は優しく声をかけてあげた。
「あの……よろしくね?」
「えっと……こちらこそ、お願いします」
お互いにぎこちない挨拶を交わす。
それを見た沙耶架は苦笑を浮かべていた。
「二人とも硬いよー。もっとリラックスして話せばいいじゃん」
「いやぁ……でもこういう時って何を話したらいいんだろ? とりあえず天気の話とか?」
「それだと普通の友達同士みたいじゃないですか。もっとこう…………刺激的な話題はないんですか!?」
小春ちゃんが物凄く不服そうな顔をしているけど気にしないことにした。
だって初対面だし、相手のことをよく知らない状態で変なこと言ったりしたら失礼じゃないか。
というかこの子、さっきから何を言っているんだろうか?
「刺激的ねぇ……。うーん、じゃあちょっとした質問をしてもいいかな?」
「はい! 何でも聞いてください!」
おぉぅ、食いつきが良いね。
よっぽど退屈してたのか、あるいは他に理由があるのか。
「あのさ、君ってもしかして……」
―――キーンコーンカーンコーン♪ 授業開始5分前の予鈴が鳴ると同時に教室の扉が開かれ、そこから一人の女教師が入ってくる。
彼女は担任でもあり国語の担当でもある山根先生であり、年齢は二十代後半くらいの女性だ。
「あら、もうすぐ時間ですね。では続きは次の休み時間に聞かせてください」
それだけ言い残してから小春ちゃんは自分の席へと戻っていく。