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……。
私は頭が痛かったが目を覚ましたら、またあのリビングだ。
最悪な夢。
謙太が目の前で死ぬ、それを後追いする。バッドエンディング。もうなんか最後私、投げやりすぎじゃなかった?!
一個前の鷲見さんと死ぬよりももっと最悪。
そしていつも通り……この場面。
横を見ると謙太は生きていた。
「梨花ちゃん、おはよう」
相変わらずあなたは微笑む。あの死ぬ前の動揺さといったら本当に情けなかった。
ああ、また繰り返しだ。ほっとすることもないし回を増すごとにいろんな事実を知って彼に対して冷めた目で見てしまう自分がいる……がさっきのバッドエンディングはさすがに嫌だったのでまたやり直せたことは良かったと思う。
「おはよう」
とりあえず今のところは彼の証言だけだと鷲見さんとの関係は無い、とは言えるし子種もないから鷲見さんのお腹の中の子供は謙太との子供ではない、そうしよう。
でもどうやって謙太が動揺してまた死なずに聞き出せるのか。作戦を練らなくては。
「……どうしたの?」
「う、うん」
この時も隠していたんだ。鷲見さんのことも、不妊体質も。隠し通そうとしていたのか。自分だけでなんとかしようと思っていたのか。
そう思うと本当に……。
「あなたはやり直したい過去はありますか?」
またあのドラマの予告。……何度も何度もやり直したけど……バッドエンドだし、嫌なところや嘘が露呈していく。過去だけやり直したいのに……。
しかも中途半端なこの時期にしか戻れないのってなんなの。何か意味があるの?
記憶が残ったままやり直すのって良い場合とそうじゃない場合もあるし、どうでも良い場合もある。
この情報どうでも良い、に位置付けてしまう。
「あの課長も見てるのなら僕も見ようかな。話題作りにもいいかもしれないし」
確かに一回も見ないままだったな。特に好きな俳優いるわけでもないけど。
謙太もあまり映画とかドラマは見ないタイプ。
「……好きな俳優さんとかいるの?」
ふと聞いてみた。
「ん、あ、えーっと……主人公の上司役の綾人。尊タケルが病欠で降板したみたい。綾人は取引先の上司に似てるんだよねー。背が高くて目がシュッとしてて。ちょっとオラオラした感じ?」
「ああ、なんかバツイチの人でしょ。前の奥さんとの子供も大きいらしいじゃん」
「それはびっくりだったけどね。今は年下の彼女いるみたいだし」
好きな俳優さんいるんじゃん。知らなかったよ。しかもなんか詳しいし。尊タケルなんておじさま俳優だけど男性ファンもしっかりいるのねー。
私は自分の話ばかりしてたから謙太のことも聞いてあげないと。今回は、ね。
……てかドラマ見ている場合じゃないんだよ。どうやって彼の隠している嘘を吐かせるか。
「なんか悩んでる?」
「あ、え……うーん。ちょっと」
やっぱり顔に出ちゃうか。
「リラックスして。休みの時くらい、ね」
と彼は私の肩に手を回してくる。これは……したい、という前兆。
前の前はタイミング法で断ったけど……前の時は程々にしてた。
てか謙太が子種ないのならタイミング法とかも意味ないし。
本当にセックスは嫌だ。
ここで不機嫌になったりタイミング法で交わしたらまた鷲見さんと……。
ほんとここの潔白さは証明されてないからそれがモヤモヤしている。不倫してないって信じればいいのに。できない。
あ、そういえば……お金。この時点で私が取り上げてなんだっけ。
親の治療費だなんてありえないし。でもそれ信じて謙太はお金出しても良いって言ってくれたからそのままその理由にするか。
それともわざとお金残して泳がしておくか。……いや、ダメダメ。変な薬を飲ませるような人たちにお金が流れるだけ。
どうしよう……って謙太の手が邪魔すぎて考えられない。顔も近付いてくるし。
まぁ明日、にしようか。私は彼と目を合わせて謙太のトロンと垂れた目でため息をついた。
そして彼にそのまま押し倒された。
「シャワー浴びてくる?」
「うん……」
ソファーに仰向けに倒れた謙太。いわゆる賢者タイムの彼は大抵の男たちは相手のことを考えないのに彼はいつも最中からでもだが私のことを気遣ってくれる。
そこなのよ、優しすぎるのよ謙太は。
私はシャワーを浴びながら考える。とにかく明日は会社で再び人員招集でショートカット。これは外せないイベント。
もう今はハッピーエンド……いやまだ終わりたくないけどそうでありたいから。
朝活はやはり私だけにするのか、でも謙太のことを知るには……一緒に朝活をする。
あとはお金……これは今の彼には判断は無理だけどやはりこれも外せないイベントなのだろうか。叫びたいけどシャワーを頭からかぶってそのまま流しに流れていけばいいのに。
落ち着け、一つずつ消化しなきゃ。