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桃色のインクが付着した部分に、グレンが触れるとポワッと暖かい光が空気中にとけていった。

その光が無くなると、私の制服についていた桃色のインクが消えた。

洗濯をしても落ちなかったのに、グレンが触れただけで落ちるななんて。


「……このインクには魔力が込められているんだ」

「ま……、りょく?」


聞き慣れない単語に私は首を傾げた。

まりょく、ああ、魔力だ。

メヘロディ王国では楽器の製造技術と演奏技術と芸術面では優れているが、マジル王国やカルスーン王国のような”魔法”、不思議な力を扱うことは出来ない。混血であれば可能らしいが、力を強く持った子がいたり、弱い子がいたりと不安定になってしまうそうな。

グレンは留学生で私やリリアンはメヘロディ国民。

だからグレンには肉眼で見えても、魔力を感じることが出来ない私には透明にしか見えないんだ。


「えっ、じゃあロッカーの中もインクまみれですの!?」

「いいや。このインクが付着するのは生き物だけ。だからロッカーは汚れない」

「そう……」

「汚れてたとしても、お前には見えないだろ?」

「ま、まあそうなのですが……」


私はグレンの話を聞いて、あることに気づく。

インクを塗った教科書をしまっていたロッカーは、桃色のインクまみれになっているのではないだろかと。魔力を目視出来ないから、透明になっているだろうけど、気になってしまう。

私の懸念にグレンは桃色のインクが付着するのは生き物だけだと言った。

後でシュっと吹きかけて確認してみよう。


「さっきの授業は”自習”になったけれど、次の授業はどうしたらいいのかしら……」

「あいつの逆鱗が五十分で収まるとは思えねえな」


制服の汚れについては解決したけど、激昂したリリアンについては解決していない。

クラスメイトの皆がリリアンを取り押さえて、なだめているだろうけど自習の間に収まるわけがない。

次の授業で私が顔を出したら、また争いが始めるに決まってる。


「あいつの気分を納めるには……、チャールズ先輩がいないと」

「僕がどうかしたかい?」

「わっ」


私とグレンが考えていることは同じだった。

リリアンの気分を良くも悪くも収めるには婚約者であるチャールズしかいない。

グレンがチャールズの名を口にすると、彼が私たちの前に現れる。


「やあ! マリアンヌ、昨日渡した教科書は役に立ったかい?」

「は、はい! 役に立ちましたわ」


私はチャールズに先ほどの出来事を説明する。

すべて計画通りにいったことを伝えると、チャールズは喜んでくれた。


「それで、君は授業をサボっているんだね」

「いつ教室に戻ろうかと話していたところでしたの」

「こいつと、ねえ……」


チャールズは私の隣に座っているグレンを見つめる。

二人が鉢合うのは初めてみる。

昨日の放課後、グレンはチャールズを避けているようだった。

だからチャールズが冷たい対応をすると思っていたのに、彼はグレンと普通に接している。


「俺は邪魔ですよね。だからここで失礼します」


グレンがチャールズを一方的に避けているように見える。

チャールズはグレンがいた場所に座る。


「えっと、あの人は私のクラスメイトで、あのインクを下さった―ー」

「グレン、だろ?」


私が他の男性といて、チャールズの気分を損ねなかったか不安だったが、彼はいつもと同じ調子だった。


「彼をご存じですの?」

「音楽科、一年生の特待生だろう」

「ええ、その通りですが、顔見知りのようでしたから」

「ああ、そうだね。母国で会ったことがあるんだ」


どうやら、チャールズとグレンはマジル王国で会ったことがあるらしい。

でも、どうしてグレンはチャールズを避けるんだろう。


(たしか、グレンはチャールズのことが苦手で、チャールズも自分のことが嫌いなんじゃないかって言ってた……)


私は放課後グレンが言っていたことを思い出す。

もしかしたら、マジル王国で出会った際に何かあったのかもしれない。


「トルメン大学校で再会するとは思わなかったよ」


チャールズの態度は変わっていない。彼が大嫌いな人物であれば、リリアンのように冷たい態度を取る。


「マジル王国で出会ってたら……、この手で殺していたのに」

「えっ」


こ、殺す!?

チャールズの口から物騒な言葉を聞き、私は狼狽えた。






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