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「……あかんよ。家族と約束してん。一緒に寝正月して過ごそうって。いうてもおかん動き回るから、俺が全部家事してあげたいし」「……それは絶対的理由やな。あかんわ。今年も負けた」
「これで九連敗や」なんてぼやきながら、くうちゃんが道端の石を蹴る。
え、俺、そんなに断ったことある? 全然記憶にないねんけど。
「俺、はんちゃんの妹と結婚しよかな。そしたら合法的に家泊まりにいけるやん?」
ははっ、と笑いながら放たれた言葉。
それに、俺は「意外とええかも」なんて思ってしまった。
親友より上の、家族。くうちゃんと家族になるなんて、俺には一生叶えられへん願いやから。
「……ええかも。それやったら今日うち来てええよ。妹、今彼氏いてへん言うてたから、いけるかも!」
「は?! 冗談やではんちゃん?俺の恋愛対象、女の子じゃないの忘れたん?それに妹ちゃんの気持ちだってあるし」
「あ……そっか」
ほんまや。今の冗談には、きちんと大阪人らしく返すべきやった。
「間違えた。『なんでやねん!!』やな?」
「そう。それが正解」
やっと笑ってくれたくうちゃんと、残りの距離をゆっくり歩く。
自分で断ったものの、ほんまはずっとくうちゃんとおりたい。
やけど、こんな迷惑な気持ちをくうちゃんに押し付けるのも、親友として恥ずかしい。
「じゃあ、」
「ん、じゃあまた来年」
「俺らはそんな仲じゃないやろ?」
くうちゃんに頭をグシグシと撫でられて、俺は今、完全に犬状態。
くうちゃんには見えへんしっぽを、一生懸命振ってる自覚がある。
くうちゃんと別れた後、妹に今日の話を冗談ぽく振ってみたら、「一生心が休まらんから私には無理」と即答で断られた。
もし今日連れてこられてたら、緊張して部屋の隅っこでハムスターみたいになってたって。
神々しくて近寄れへんけど、一応影からは見ておきたいらしい。……なんか、ちょっとわかる気はするけど。
♢♢♢
翌日。
「あれ? みんなまだ来てへんの?」
「ん。俺、はんちゃんしか呼んでないから」
「え、そうなん? 気づかんかった……」
早朝に新から連絡があったと思えば、『四時にガスト集合』とだけシンプルに書かれていた。
朝早かったし、てっきりグループLINEやと思い込んでたけど……個人LINEやったんか。
早朝に送ってきたのは、そういう罠やったんやな。
「俺だけで良かったん?」
「はんちゃん以外、まともに連絡返してくれへんかったやん。やから、優しいはんちゃんだけ誘った」
意外と、くうちゃんからの返事に傷ついてたんやな、新。
みんな当たり前に仲間内いじりしてるけど、さすがにそろそろ大人にならなあかんのかもしれん。
「疲れてへんの? 帰ってきたばっかやろ?」
「今年はやりたいこと先延ばしせんと、すぐやろうって目標立ててん。もう三十前やし、先々のことも色々考えなあかんなぁって」
「うわ、大人。さすが彼女おるだけのことはあるわ」
「ほんまそう。この歳で彼女ができたら、一人だけの人生じゃないなって考えるようになってさ。もし結婚して子供ができて……ってなれば、幸せな未来も見えてるけど、自分だけの大切な時間はなくなっていくわけやん。やから今、独身のこの自由な時間も大切にせなって」
新の言葉が胸に沁みる。
ほんまやな。昨日みたいな、一生おちゃらけてるような時間がこの先何回あるかわからへん。いつか誰かが結婚して、輪から抜けて、俺一人になる日が来るかもしれへん。
当たり前に思ってるこの瞬間も、大切にせなあかんな……。
「なんか、ありがとう。その大切な時間に、俺を選んでくれて」
ふふっ、と笑いながらメニューを開く。
昼飯が早かったから、ハンバーグとパフェでも頼もかな。そんな独り言をこぼしたら、「やっぱはんちゃんなぁ」と新にクスクス笑われた。
「あ、ごめんな。二回目の初詣なんか、神様も『何回来んねん』て怒るかな?」
「あ、それ。昨日くうちゃんも同じようなこと言うてたわ。高校の時から思てたけど、なんか新とくうちゃんって似てるよな?」
「まぁ、影で『双子』って呼ばれてたくらいやからな。背丈とか見た目も似てるけど、ものの考え方とか……好きな人も一緒やったし」
「……え?」
好きな人も、一緒?
あれ……。俺、てっきりくうちゃんと新が付き合ってたんやと思ってた。
くうちゃんが「男の人が好き」って俺らにカミングアウトしたのもその頃やったし。自分たちのことを分かってほしいんかなって、勝手に暗黙の了解みたいに思ってたのに。
「結局、俺ら似てるからライバルにもならへんねん。お互い傷つけ合うくらいなら言わんとこって。やけど、好きな人のことは語り合いたいやん? やから一緒におりすぎて、俺らが付き合ってるみたいな噂はあったけどな」
「そうやったんや……。俺もそう思てた。ごめん」
「まぁ、そっちの方が好都合やったけどな? 変なやつも寄ってこうへんし、告白断るのもしんどいやん」
「まぁ、確かに」
ふふふ、と笑い合っていると、やっとやってきた待望のパフェを受け取る。
今日もにゃんこロボは可愛いし、パフェは美味しい。やっぱガストは最高やな。
「ん、ほなそれ食べ終わったら行こか? 屋台も出てるって噂で聞いたし」
「待ってよ、俺ハンバーグも頼んでる! ほんま、そういうせっかちなとこも、くうちゃんにそっくりなんやから」
気持ち急いでパフェをかきこんでいると、新がニヤニヤ笑いながら、頬杖をついて俺を見つめてくる。
なんなん。
……子供っぽいって、馬鹿にしてる?
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