ここは…家の中でもリビングに当たるところといったところか…。彼らしい部屋の雰囲気も無く、何処か沈黙が漂っている。なんというか…ぽっかりと穴が空いた…物足りなさ?っていうのだろうか。
部屋は綺麗で整っているのに不気味な程に違和感がある。
「…なにこれ…猫の餌??」
最初に目に付いたのは猫のエサだった。
しゃがんで1つ餌を手に取り観察する。
まだそんなに出してから時間は経っていないであろう餌、湿った雰囲気もない、カピついてる雰囲気もない。
アッキーナが取りつかれたのは……今日の朝…か…?エサから色々推測ができるのはありがたい。いつ取り憑かれたとかで除霊のしやすさは変わる。
完全にアッキーナの身体に馴染む前に祓わなければ、にじさんじ的にも、世間的にも色々マズイことになるだろう。
どっちにしろ急がなければならない。最終的には祓うのだ、どうせなら祓う時楽な方がいい。
「…あれ。…おかしいな。」
猫のエサはあるのに、肝心のネコがいない。…何故?
軽く辺りを見渡してみた。キャットタワーや、ソファ、ちょっと質のいい猫の家みたいなのと、猫の為の部屋といえるような構造。
多分…猫の家とかにいるんだろうな。
「ま、収穫はぼちぼちかな、僕の方は。椎名と合流するか…」
部屋を背後にしようと思ったが…。
「や、まぁでもせっかく猫いるならちょっとだけ…」
アッキーナん家のお猫様だが多分許してくれるだろう…ちょっとだけ…そうちょっとだけ!!!
「…猫ちゃ〜ん、ほら、エサですよ〜…?」
さっきの餌をキャットホームの前に置き、そっと覗く。
案の定そこに猫はいた。すごい怯えている様子で、こちらをじっと見ていた。
警戒心高いなこの猫ちゃん達…。まぁ会ったことのない人間が急に顔出しても最初はこうだよな…
「どうしたら猫は心を開いてくれるんだ…?」
そんなことを考えては猫に釘付けになっていた。
『…おい、剣持…』
ふとそんな声が聞こえて反射的にばっと後ろを振り向く。
「っ!?!!?!?し、椎名これはちが…」
『なぁ〜に捜査サボってんねん〜!!』
ぺし、と椎名に叩かれ喝を入れられる。
『猫ちゃんが可愛いのは分かるけどなぁ~!!構ってる暇があてぃしらには無いんよ!?分かるか~!?』
「わ、分かってますって…」
『はぁ~…まさか剣持が媚びてるなんてなぁ~…ガっくんに伝えたらもうビックリするんちゃう?』
「は、は!?媚びてねぇから!!!!?!」
『はいはい、w』
ちょっと不服な気持ちにはなったが、猫に釘付けになっていたのは事実…、この僕が猫に…
…ごほん、まぁまぁ人類興味惹かれるものは多々あるはずですし、これは仕方ないこと…
と自分に言い聞かせる。自分に言い聞かせないとやっていけない…。
「…椎名、ところで上に何かあった?」
『ぁ、あぁ~、忘れとった忘れとった、!!そ、この紙切れが机の上に置いてあったんよ~!』
椎名がポケットから1枚の紙を開く。
“マンゲツノヨル ツキガハンシャスル ミズウミノホトリ デ マッテイル”
字は明らかにアッキーナのではない。まるで別人のようだ。筆記体は柔らかく、昔の草書に似た雰囲気の文字だ。
アッキーナに憑いてる霊はかなり昔の霊なのだろう。
「ここら辺で月が反射する湖って言ったら…あそこしかないんだけど…」
駅近くにとっても広くて壮大な公園の施設がある。僕も度々ここに来ては遊んだりしている。その公園の1つのエリアに、広く展開された湖が広がっている。昼間はボートやスワンで湖の上を楽しみにしてくる人で溢れかえっている。
『ウチもそう思うわ。…な、満月の夜っていつやったっけ… 』
「確かもうすぐだった気がする…3日後とかそんくらいじゃない?」
『てことは…』
『結構すぐやん!?』
「そうだよ!?!ちんたらしてたらもう明那ヤバいから!!!そうと決まれば早速準備しないと!!!!」
『剣持もっと早く言ってや~!!!』
「この紙切れ見つかったの今日だから!!」
____ギャーギャーそう騒ぎ立てては、急いでアッキーナの家を背にして飛び出す。
この3日間はきっと忙しくなる。かならず祓わなければならないのだ。
念入りに準備して、明那に憑いている霊の正体も調べる。今までとは珍しいタイプの霊だ…準備していかないと返り討ちにあうだろう。
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