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「なぁ、カグヤってなんかコンプレックスでもあるの?」
同じく超がつくほど真面目な世話係メイドのムイ・アロエリア。この子なら何かわかるかもしれない。
「カグヤ先輩が、どうかしましたか?」
「カグヤが、俺が楽しそうにリリア(新人)と儀式したと思ってる。」
「カグヤ先輩が、そうおっしゃったのですか。」
「んーーー…わからん。俺が汲み取れたのはそういう感じなんだが…怒られている。」
「正直…申し上げにくいですリユージ様。」
「だよなーー。」
「俺が前に一回暴走起こした後から、結構キツく当たってくるようになったな。悪かったと思ってるんだ。ただ俺だって、あぁはもうなりたくないから今みたいに定期的に…」
「カグヤ先輩、今も全てお聴きになられているというのに。そういうデリカシーとかも含めてではないですか?」
「結構グサッと言うね!?カグヤの後輩!」
「女性の気持ちに立って、また真剣に悩んでいるリユージ様のお力添えもしたく、真摯にお答えしております。」
あぁ。
カグヤの初めての儀式も俺がやったんだ。
カグヤ・ヒノモトは遠い東の国から流れてきた孤児の純血ドラグナーだ。一族は裏切り者や戦争で亡くし、両親は毛皮を狩られ、命からがらメルティニアの外周へ逃げ込んできた。
毒矢が刺さり人型すら維持できないほど魔力を消耗し、ピカピカと反射して光る美しい白龍が、ハァハァと息を荒げ鱗の肌からドス黒い血を流し倒れていたのだ。
それが幼少期の俺と、カグヤのはじめての出会いだった。
純血ドラグナーは交雑ドラグナーと違い〝アビリティ〟という代々伝わる特殊能力を継承していて一つ持っているだけでもかなり位の高い龍神という扱いになる。
彼女の場合、地獄耳【ケルベロス】がそれで、純血種の醒乳を飲むと俺は一時的にアビリティの恩恵も授かれる。
ただ俺はあの時が純血種の醒乳が初めてだったので、久しぶりだったこともあって甘い匂いにさそわれるがままカグヤを襲い、突然色々な意識が入り込んできた事でほとんど記憶に残ってない。
目が覚めたら森の中で、2人とも裸で抱き合ってた。どこまでどうなったかも、覚えていない…。カグヤからも聞いていないし、向こうも何も言ってこない。
記憶がある所からは、カグヤは汗だくで足腰たたなくなるほど魔力を消耗していた。それでいて満足そうにしていたように思っていた。
断片的にだが、その後の半日はケルベロスの恩恵で頭の中に色々な声が残っていた。彼女も毎日こんなふうに色々な音が聞こえる環境で心も疲れていたのだろうと思う。
その数日後からカグヤは俺に対して次第に風当たりがキツくなっていった。
俺たちが交わることはそれ以降も全く無い。
どうしてああなったのかすら覚えていない。
「リユージ様は乙女心が…」
ガコッ…
「なんかそこで物音しなかった?」
「?ネズミでしょうか。ムイが見に行きます。」
「いや、待って。」「カグヤは?」と続けた。
たまに城に侵入者が入ってることはあるっちゃあるし、念のため護衛にも確認を取りたい。
「あちらに…」
指先に目をやると、窓の外から巨木の幹に掴み、こちらを見ているカグヤ。
「護衛、遠っ!(あからさまだなおい!)」
まぁ自分の身くらい、自分で守るけどなぁ!