TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

そして、花蓮と入れ違うように礼さんに連れられて、真美が俺の元へやって来た。


「……芹、久しぶり」

「ああ、久しぶりだな」

「……ここ、いい?」

「ああ」


真美は向かいの席を指差して座っていいかを尋ねるから、俺は『ああ』と返事をする。


真美はいつも隣に座っていたから、こうして向かいあわせで座るのは何だか少し違和感がある。


「……あの時は、ごめんなさい。私、馬鹿だった」

「いや、俺の方こそ……ごめん」

「ううん、芹は悪くない。私が全て悪いのよ」


なんて言うか、真美は少し変わった気がする。


「……私ね、芹のこと、本当に好きだった」

「…………」

「好きで、好きで、堪らなく好きで、ここに来て、一番お金を使って芹の傍に居られたら、いつか私を見てくれるって思ってた、そう、信じてた」

「…………」

「だけど、違ってた。芹の瞳に、私は映って無かったね」

「――ごめん」

「…………だから、悔しかったの。芹が、キャバ嬢なんかに惚れてるなんてって……」

「……うん、そうだよな」

「でも、芹は、あの子がキャバ嬢だから好きになった訳じゃ、ないんだよね?」

「……そうだな、たまたま、出逢った場所がキャバクラだった……それだけだ」

「そうだよね。それに、ホストが客に本気になんか、ならないよね。お金があっても手に入らない物があるって、改めて分かったよ。もう現実見る。いつか、芹よりも格好良い男、捕まえてみせるわ」

「……真美」

「迷惑をかけて、本当にごめんなさい。最後に芹に会って、話が出来て良かった。芹との時間は、私にとって、大切な思い出だよ。ありがとう、芹……さようなら」

「……ああ、俺の方こそ、ありがとう。元気でな、真美」


真美は、強い女だった。


花蓮とは違い、笑顔を浮かべながら俺の元を去って行った。


「…………ふぅ……」


離れた場所からは相変わらず楽しそうな声が聞こえてくる。


一人になった俺は大きく息を吐くと、何気なしに店を見渡した。


まさか俺が、ここを辞める日が来るなんて、思いもしなかった。


当たり前にあった風景は、今日で見納め。


これからは、新たな場所でオーナーとして、キャストたちを育てていく事になる。


俺みたいな馬鹿な事はさせない。


金の為とか、そういう考えは捨てさせて、真摯な態度で接するよう、教育していこう。


なんて思いながら、慣れ親しんだ景色を目に焼き付けていく。


そして、パーティー開始から約三時間程でお開きとなり、『芹さん、今までお疲れ様でした!!』そんな言葉と共に花束を渡された俺は、「ありがとう」という言葉を残し、笑顔で店を後にした。

お前の全てを奪いたい【完】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

43

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚