テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
魑魅魍魎
2,380
魑魅魍魎
1,296
137
コメント
1件
うわあ、2話目もすごくいいですね…!キヨくんとレトルトさんの、無意識に手を繋いだまま走るシーン、それがキヨくん視点で「あれ、今手繋いでね?」って後から気付く流れ、すごくドキドキしました。お互い「好きなわけない」って思ってるのに絶対好きだよね、っていう傍から見たわかりやすさが愛おしいです。ガッチマンさんの「青春だねぇ」に牛沢さんの「めんどくせぇ青春な」の返しも、すごくしっくりきました🤍続きが気になります…!
2話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「こらーー!!キヨーー!!レトルトーー!!」
校舎中に響き渡る怒鳴り声。
「待てーー!!止まれーー!!」
今日も今日とて、二人は生活指導の先生に追いかけられていた。
昼休みの廊下。
周りの生徒たちは慣れた様子で道を開ける。
もはや学校の日常風景である。
『やっば!!』
キヨは後ろを振り返った瞬間、顔色を変えた。
『レトさん!!逃げるぞ!』
そう言った次の瞬間、 何の迷いもなくレトルトの手を掴んで走り出した。
「は?!えっ!?うわっ!?」
突然引っ張られて、レトルトは慌てて足を動かした。
「ちょっ、キヨくん速いって!」
『レトさん遅い!!捕まるぞ!』
「いや、俺関係ないやん!!」
『俺とレトさんはニコイチだから関係あんの!』
「し、知らねーよ!!」
巻き込まれたレトルトはキヨの意味の分からない言い訳に困惑しながら廊下を全力疾走する。
窓から差し込む昼の光がキヨの髪をキラキラと透かせていた。
そして――繋がれたままの手。
(……あ)
レトルトの視線が、一瞬だけ下へ落ちる。
キヨの手が 自分の手を 当たり前のように
握っていた。
二人は追っ手からなんとか逃げ切り
体育倉庫の裏に身を潜めていた。
昼下がりの倉庫裏。
少し影まった暗がりの中で 二人は壁にもたれて、はぁはぁと肩で息をしていた。
『ははははっ!』
キヨは楽しそうに笑いながら、その場にしゃがみこんだ。
対してレトルトは、乱れた呼吸を整えながらジトッと睨む。
「……てかさ、 なんで俺まで追いかけられてんの?」
完全に不意打ちの巻き込まれ事故だった。
突然「逃げるぞ!」と腕を引っ張られ、気づけば全力疾走。
全く意味が分からない。
するとキヨは悪びれもせず笑う。
『いやー、先生がいちいちうるさくてさぁ。「 誰がやった!」って聞かれたから、 レトさんにやれって言われました、って言っちゃった』
「はぁ???」
レトルトの声が裏返る。
「おまっ……最低や!!」
『ごめん、ごめん』
キヨは腹を抱えてケラケラ笑っていた。
怒っているはずなのに キヨがあまりにも楽しそうに笑うから、レトルトも途中から笑ってしまう。
「お前といると、ほんまろくなことないわ」
レトルトは呆れたように言いながら空を見上げた。
キヨはそんなレトルトを見ながら、ニヤッと口角を上げる。
『でもさぁ、そんな俺のこと、好きでしょ〜?』
わざとらしくレトルトの顔を覗き込む。
いつものキヨの軽口。
――の、はずなのに。
レトルトの心臓がどくりと跳ねた。
「べ、別に好きちゃうし!」
慌てて言い返し 顔を逸らす。
そんな反応を見て、キヨはさらに笑った。
『冗談だって!怒んなよ〜』
「怒ってないわ!」
『はいはい、ごめんごめん』
キヨはいつもの様に、ただふざけてるだけ。
でもレトルトは分かっていた。
“好き”の意味が、キヨとは違うことを。
“キヨくんは俺の事なんて好きじゃないよなぁ”
《キヨ視点》
先生の怒鳴り声が後ろから追いかけてくる。
いつものこと、いつものこと。
廊下にいたレトさんを道連れに逃げてたんだ
けど、途中で妙な違和感に気付いた。
――あれ…. 俺、今。
レトさんと手繋いでね!?!?
そこでようやく、自分がずっとレトルトの手を握ったまま走っていたことに気付く。
心臓がドキッと跳ねた。
(いやいやいや。 今さら離すのも不自然だろ。)
(え、キモがられてない?)
(いや、レトさん逃げるのに必死で気付いてないか)
そんなことを考えているうちに、余計に意識してしまう。
手、ちっちゃいなとか…。
結構しっかり握ってくれてるなぁ、とか….。
息を切らしながら笑っていたレトさんに、いつものノリで聞いた。
『でもさぁ、俺のこと好きでしょ〜?』
半分冗談。
半分本気。
ほんの少しだけ期待してた。
そしたら、
「べ、別に好きちゃうし!」
即答。
しかもめちゃくちゃ焦った顔で。
『…………』
あ、うん。 知ってた。
いや、知ってたけど。
分かってたけど。
でも、ちょっとくらい期待するじゃん。
毎日一緒にいるし。
距離近いし。
勘違いくらいするじゃん。
キヨは笑って誤魔化した。
『冗談だって!怒んなよ〜』
なんて、いつもの調子で。
でも内心は普通にダメージを受けていた。
(……まぁ、そりゃそうか。)
“レトさんが俺のこと好きなわけないもんな。”
一3年教室の窓際一
ガッチマンは窓からは、校舎裏を全力で走るキヨとレトルトの姿を見ていた。
「こら待てーー!!全身組!!とまれー!!」
生活指導の先生が大声を上げて2人を追いかけていた。
今日も見慣れた光景である。
窓にもたれながら、その様子を眺めていたガッチマンは、楽しそうに笑った。
「ねーねー、 ほんとあの二人仲良いよなぁ」
まるで小学生みたいに騒ぎながら走るキヨとレトルト。
ガッチマンはニコニコしながらその姿を目で追っていた。
隣では牛沢が頬杖をつきながら窓の外を見ていた。
「……そうだな」
興味なさそうな声。
でも視線だけは、しっかり二人を追っていた。
「見てよ、うっしー!またあの2人手繋いでる。 無意識なのかな、あれ」
牛沢は呆れたように答える。
「……知らねぇよ。」
そう言いながらも、口元は少しだけ笑っていた。
「あんなことしてんのに、なんで付き合わないんだろうな」
ガッチマンは不思議そうに首を傾げながら、隣の牛沢を見る。
窓の外では、相変わらずキヨとレトルトが騒いでいた。
牛沢はそんな二人を眺めながら、興味なさそうに返した。
「お互いに気付いてないんじゃねーの?」
呆れ半分。
でも、その言葉は、妙に核心を突いていた。
――そう。
この二人。
実は絶賛、両片想い中なのである。
お互い好きなのに、
“俺のことなんか好きなわけない”
と本気で思っている様で、随分 拗らせていた。
傍から見れば、付き合っていると言われても誰も疑わない距離感の2人。
それなのに本人たちだけは、“友達”という枠からどうしても抜け出せずにいた。
そんな二人を見ながら、ガッチマンはぽつりと呟く。
「青春だねぇ」
すると牛沢は小さく鼻で笑った。
「めんどくせぇ青春だな」
続く